江戸崎町と神栖町の2カ所に放置される焼却灰加工物の撤去に関する合意が、3月末までに成立する見込みになりました。
 平成7年から10年にかけて、東京都内や埼玉県の自治体(三鷹市、二枚橋衛生組合、武蔵野市、桶川市、柳泉園組合、上尾市)は、焼却施設から出た焼却灰、約18,000トンを焼却灰処理業者に委託し処理を行いました。委託を受けた業者は、実証試験と称して茨城県桜川村内のプラントで、焼却灰を400〜600度の高熱で処理し、セメントを添加し、加工品として土壌固化剤として試験的に使用しました。しかし、その加工物はダイオキシンの含有量が1グラムあたり2100ピコグラムに達し、環境基準の2倍以上となり、実用化に至りませんでした。
 こうした状況の中、加工業者は経営的に行き詰まり、江戸崎町の倉庫に4,800トン(平成7年から保管)、神栖町町内の空き地に2,000トンが放置(平成9年から野積み)されました。
 平成12年10月に、江戸崎町の倉庫業者が焼却灰の排出者である6自治体に対し、撤去を求める訴訟を起こしました。平成14年9月には、原告敗訴の判決が出ましたが、その後、16年8月には環境省より自治体の排出者責任を明確にした通達等もあり、東京高裁において和解協議が続けられていました。
 このほど、倉庫会社、地元江戸崎町、関係6自治体との和解協議が大筋で合意し、各自治体の3月議会で和解案の承認を受けた後、3月30日に和解が成立する運びとなりました。
 同様に、神栖町に放置された加工物に関しても、神栖町と6自治体の合意が成立し、4月1日に撤去協定書を締結することになりました。
 具体的には、4月以降順次撤去が始まることになります。撤去された加工物は、2箇所の溶融処理施設で無害化処理されることになります。
江戸崎町の倉庫に放置された焼却灰加工物の撤去について
●三鷹市など6自治体、地元江戸崎町及び倉庫業者が、東京高裁において和解協議を進め、撤去に合意しました。
●費用負担
総額2億2050万円のうち倉庫業者が6,000万円を負担し、残りを三鷹市など6自治体が焼却灰の排出量に応じて負担する。地元、江戸崎町は焼却灰排出者不明分(全体の4.5%)726万円を負担します。なお、江戸崎町の負担分の1/2(363万円)を茨城県が補助する。

神栖町に放置された焼却灰加工物の撤去について
●江戸崎分と同時期の解決をめざし、本県が中心となって三鷹市など6自治体及び神栖町と協議を進め、撤去に合意いました。
●費用負担
総額8400万円を、地元神栖町、茨城県、関係6自治体が、均等に撤去費用を負担することで合意。神栖町1/4に当たる2100万円(茨城県がその1/2・1050万円を補助する)、三鷹市など6自治体が3/4に当たる6300万円を負担する。

東京新聞(2005/3/5付)
<解説>■行政の怠慢を認める
 焼却灰処理をめぐる和解協議の合意は、「排出元自治体に処理責任はない」とする一審判決とは異なり、地元自治体の負担を大幅に減らすものだ。結果として、処分先の状況を確認していなかった行政の怠慢を認めたともいえ、各自治体は廃棄物処理のチェック体制の確立が求められる。
 廃棄物処理法は、産廃を処理する民間業者には排出元から最終処分場までの処分の過程を示すマニフェスト(管理伝票)を義務づけるなど、きめ細かく規定。一般廃棄物の排出元の市町村にも「適正な処理」を求めているが、自治体は「信頼度が高い」とされ、細かな規定はない。
 しかし、今回の江戸崎町や福井県敦賀市などで、他の自治体が排出した廃棄物をめぐる問題が浮上。裁判で争うケースも出たことを受けて、環境省は昨年八月、全国に「廃棄物の処理は、排出元自治体が責任を負うことをあらためて徹底してもらいたい」と通知し、同法の原則をあらためて確認する事態になった。
 廃棄物の不適正処理や不法投棄が多い本県を含む北関東は、「首都圏のごみ捨て場」ともやゆされる。今回の合意は、不適正な処理で困っている各自治体には朗報と言えよう。(布施谷 航)