中央官庁や地方自治体でのIT調達をめぐる不透明な支出や随意契約が問題となっています。
 3月4日に開かれた県議会総務企画委員会で、井手よしひろ県議は、CIO制度(情報化統括責任者制度)の導入を末宗県総務部長に強く求めました。
 CIOは、英語の「Chief Information Officer」の略で、日本語では「情報(化)統括責任者」、「最高情報(化)責任者」、「情報(化)統括役員」などと訳されて使用されています。
 CIOは、組織体の情報システムや情報の流通、そのセキュリティー管理を統括する責任者として任命されます。しかし、情報システムの構築や運営だけではなく、運営の効率化、経費の削減という視点でIT技術をどのように活かして行くかという戦略を立てる役割を担っています。
 国内の自治体でも、CIOを任命する団体が増加していますが、都道府県レベルでは平成16年4月現在では、47都道府県中24、3123市町村中1369が導入しています。
 井手県議は、いばらきブロードバンドネットワークをはじめ、県には大規模なIT基盤やシステムが導入されており、その効率的で公平な運営を行う上で、早急なCIO制度の導入を求めました。
 末宗総務部長は、「平成17年度改定が予定されている県の行財政改革大綱などの見直しの中で、具体的に検討して行きたい」と、設置に前向きな意向を示しました。
読売新聞(2004.12.07)
[公費の行方・IT調達の闇]情報化担当「お目付け役」、導入まだ半数
中央省庁のIT調達をめぐる不透明な支出や随意契約が問題となる中、年間6000億円規模の予算が投入されている地方自治体でも、「ITゼネコン」の不当な請求をいかにチェックするかが喫緊の課題になっている。中央省庁と同様、ITの専門家らが調達の監視役になるCIO(情報化統括責任者)制度を導入する自治体は増えてきているが、約半数の都道府県や市町村は対応が追いついていないのが実情だ。
佐賀県のCIOを務める井坂明さん(51)は昨年十一月、IT調達のお目付け役として、東京のコンサルタント会社から同県に招かれた。早速、二〇〇四年度の情報システム関係の予算要求の妥当性を査定したところ、資料の中に明細のない見積書が多数見つかった。「○○システム一式、×千万円」としか書かれていない。大半が大手IT業者が作成したものだった。
井坂さんは、業者に明細を出させるよう担当職員に指示。提出書類を再度チェックしたところ、パソコンなどの代金を市場価格とはかけ離れた定価で算出していたり、ソフトの組み込み費用を高く設定していたりするなどの問題点が、いくつも見つかった。中には、県が要求していない機能を勝手に組み込んでいたケースもあったという。
こうした業者側の不当な請求を一つひとつチェックしたうえ、各課で行われていた無駄な重複投資も見直した結果、今年度、要求の出ていた約52億円の予算のうち8億9000万円の削減に成功した。井坂さんは「これまでチェックできていなかった行政の責任もあるが、詳しい資料を出さず、説明しようとしない業者にも問題がある。『役所はどうせ分からないだろう』という発想があるに違いない」と指摘する。


「開発に関連する会社が多くなると、調整作業に膨大な労力が必要となります。もし県殿のミスで開発途中に仕様変更がされた場合も、費用負担は県殿がすることになります――」
一昨年春、民間の政策研究機関から長崎県のCIOに就任した島村秀世さん(41)のもとに、こんな手紙を持ったITゼネコンの担当者が訪れた。文面は丁重な言葉遣いだったが、「今さら自分たちを外すのは許せない」との脅しともとれる怒りが感じられたという。
前年の四月に着任した島村さんは、中小企業も入札に参加できるよう、システムを分割して発注する方法を導入。多くの場合、業者に作成してもらっていたシステム開発の「仕様書」も、職員が作るように改めた。大手に有利だった従来の調達方法を見直すためのこんな取り組みが、一部のITゼネコンの反発を招いていたらしい。
長崎県では今年度、地元中小企業の落札が六割に上り、年平均で10億円ほどのコスト削減につながった。「公正なシステム開発を進めた結果で、専門家がいなければ、削減はなかなか難しい」。島村さんはそう話している。