茨城県のプライマリーバランスの推移
 国や地方自治体の財政の健全化を示す指標の一つに「プライマリーバランス」(PB)があります。PBは県債(借金)収入を除いた歳入と、公債費(過去の県債の元利償還支出)を除いた歳出の収支で計算されます。言い換えれば、公共事業や社会保障など政策に使う支出が、税収など本来の収入でどの程度まかなえているかを指し、これらの支出より収入の方が多く、新たに借金を増やさなくてもいい状態になることを、「プライマリーバランスの黒字化」といいます。国は、2010年初頭のPBの黒字化を目標に、歳出の削減を図っています。
 茨城県のPBは、バブルの崩壊後マイナスに転じ、平成10年には1094億円という大きな赤字を記録しまました。景気浮揚のために、公共事業を県債でまかなった結果です。当然、県債残高は増高を続け、平成18年度末には過去最多の1兆6961億円に膨れ上がる見込みです。
 しかし、近年は公共事業の縮減や人件費などの縮減を図り、県債の発行を最高時の半分近くに押さえ込んでいます。そのため、公債費も減少に転じ、県債残高もここ2、3年でピークを越える見通しになってきました。平成17年の決算では、BPの黒字化が期待されています。
(財政健全化の指標としては、国や自治体の預貯金にあたる基金の取り崩しなしにPBを黒字化させるということが重要視されます。一般財政基金の取り崩しの状況とPBの推移は別途分析したいと思います)

三位一体改革の結果、県は516億円の減収
 しかし、こうした県の財政健全化の努力は、国の三位一体改革の大波に泡と消えそうになっています。
 一連の三位一体改革に伴い、平成15年には2807億円あった地方交付税は平成18年度予算では1869億円にまで減少しています。この間の県税の増収額は、そもそもの増収分と国税からの振り替え分を合わせても422億円にとどまり、差し引き516億円の減収となっています。
 橋本昌知事は2月21日の記者会見(記者会見の概要はこちらで)で、三位一体改革について「3年間で地方交付税と臨時財政対策債は938億円減っておりますが、税収のほうでは422億円の増収見込みしか成り立たないところでございまして、差引516億円の減となっております。三位一体改革ということで大変すばらしいことが行われたように聞こえるかもしれませんが、我々、実務的に見た場合には、極めて地方にとって厳しい結末になったと考えております。三位一体改革は近く第二期がスタートするが、これに併せ、政府部内には交付税の一層の削減を目指す動きもある。仮に、そうなれば、県は「さまざまな行財政改革をやっても、とても追いつかない」と政府を批判しました。
 ただ、国の全体から地方交付税のあり方を眺めてみると、地方交付税特別会計は、すでにその財源(所得税と酒税の32%、法人税の35.8%、消費税の29.5%、タバコ税の25%の合計)では賄いきれず、地方交付税会計それ自体の借入金がどんどん増えています。平成16年度には50兆円を超したといわれ、後生の負担として残されています。地方交付税を削減することは、一人の国民として考えると、必要不可欠な課題でもあるわけです。