政府は最重要法案の一つである「行政改革推進法案」を今国会に提出し、3月23日に国会論戦がスタートしました。行政改革推進法は、基本理念として「行政に要する経費を抑制して国民負担の上昇を抑える」ことを明記。その上で、(1)公務員の総人件費削減(2)政府系金融機関の統廃合(3)特別会計改革(4)国の資産・債務改革(5)独立行政法人の見直し――の5項目を重点分野として掲げています。
 公的債務の高水準や少子高齢化の進展、人口減少といった状況に直面している現在、さらに行政改革を徹底し、将来の国民負担を少しでも抑え込むことが必要です。消費税の引き上げなどが話題として上がっている中で、その大前提として、徹底的な行政改革が必要であることは論を待ちません。
 ここでは、行政改革推進法のポイントを整理してみたいと思います。
参考図表
総人件費の削減
 公務員の総人件費削減は、同法案の大きな柱です。自衛官や独立行政法人の職員を含む国家公務員約68万7000人を、2010年度末までに5%以上純減させることが目標として定められています。また、官庁など国の行政機関で働く国家公務員約33万2000人についても、同様に5%以上純減させるとして、農林水産省の統計・食糧管理や国土交通省北海道開発局などの業務が、削減対象の例として示されています。
 同時に給与制度の見直しも行い、長期的な目安として、国家公務員の人件費総額の対GDP(国内総生産)比を10年間で半減させるとしています。
 地方公務員については5年間で4・6%以上純減するよう自治体に要請しているほか、独立行政法人についても人件費総額を5年間で5%以上減少させることを基本としています。

政府系金融の統廃合
 現在、8つある政府系金融機関については、統廃合や民営化により一つに集約し、08年度から新機関に移行するとしています。
 新機関に統合されるのは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫(12年度以降に統合)、国際協力銀行(海外経済協力業務は国際協力機構=JICA=が担う)。公営企業金融公庫は廃止されます。
 新機関の機能は(1)国民、中小企業、農林水産業の資金調達の支援(2)海外資源の開発、取得の促進(3)産業の国際競争力の維持・向上――に限定。新機関の経営責任者の選任については、特定の省庁における幹部の天下りを固定化させないよう求めています。
 一方、商工組合中央金庫と日本政策投資銀行は、08年度に経営の自主性を確保し、5〜7年の移行期間を経て完全民営化します。

特別会計の改革
 現在、31ある特別会計を他の特別会計や一般会計と統合するか、もしくは廃止します。これにより、特別会計はほぼ半減することが見込まれています。
 道路特定財源については、一般財源化を前提とした具体案を07年度以降に作成するという方向性を示しました。厳しい財政状況と環境への影響も踏まえ、05年12月の税率を維持し、道路整備は計画的に進めることも定められています。
 特別会計改革は、06年度からの5年間をめどに実施され、財政の健全化に総額で20兆円程度寄与させることを目標としています。
 また、5年ごとに特別会計の存続の必要性を検討することも規定されています。

資産・債務の改革
 国の資産額のGDP比を10年間で半減に近づけることを長期的な目安として、国有財産の売却や余剰金の見直しを行い、国の資産を圧縮します。同時に、民間のノウハウ(手法)を参考にして、国の資産・債務の在り方も見直すとしました。
 こうした改革を進めるための財政運営の原則として、(1)将来の国民負担の抑制(2)金利変動などの影響の抑制(3)国の債務残高の抑制(4)余剰金の適正化――を掲げています。
 財務省は、06年度中に改革の具体的内容や手順、実施時期を公表します。

独立行政法人の見直し
 06年度以降に業務目標の設定や実績の評価を行う中期目標期間が初めて終了する独立行政法人については、国の歳出縮減を図る見地から、組織や業務、国の施策の在り方を検討し、必要な措置が講じられます。