2006年4月から茨城県では、県立病院に対して地方公営事業法を全部適用して、病院事業管理者のもと病院局を設置し、病院改革に主体的に取り組むことになりました。
古田直樹病院事業管理者(左)と井手よしひろ県議 4月27日、井手よしひろ県議は、新たに病院事業管理者に就任した医学博士の古田直樹氏と懇談し、意見交換を行いました。
 冒頭、吉田管理者からは、「現場である3病院の医師、看護・技術職員、事務職員の意見を良く聞きながら、県民にとって最もふさわしい県立病院の姿を目指していきたい」との決意が披瀝されました。
 その後、病院の効率的な経営について、がん治療の拠点病院としての機能強化、友部病院(精神科病院)のあり方、人件費削減の考え方など4点について、古田管理者と意見を交わしました。
 病院の効率的な経営については、どこまでが政策医療として県立病院が担う医療なのか、その見極めを明確にしていきたいとの発言がありました。
 また、がん治療に関しては、緩和ケア(ホスピスケア)の充実や他の医療機関との連携のもとにデータベースの構築の必要性などで意見が一致しました。
 友部病院のあり方については、井手県議は精神科救急の充実を強く求めました。古田管理者は、「住民から要望が強いことは理解している。しかし、精神科の救急の場合は、その間口があまりに広く、本来、精神科で扱うものかどうか議論を必要とする場合も多い」と語り、慎重に検討していく方向性を示しました。
 職員の人件費については、「大変な労働条件のもと働いている職員(特に看護職)の現状は憂慮するが、民間病院との給与格差は顕著であり、早急な見直しが必要ではないか」との井手県議の問いに対して、古田管理者は、「このままでは、給与を支払う病院自体が無くなってしまう、との危機意識を持って、組合との話し合いに臨みたい」と答えました。
 限られた時間でしたが、古田管理者の病院改革に対する、強い熱意と的確な見識を垣間見た懇談となりました。古田管理者の名刺に書かれた英語表記の役職名は「Chief Executive Officer(CEO) Ibaraki Prefectual Hospital Corporation」となっていました。この表記に、県立病院との甘えから脱皮しようとする意志を感ずることができました。
(写真は、古田直樹病院事業管理者(左)と井手よしひろ県議)
県立3病院の経営改革指揮 「管理者」に古田氏内定 幅広い経験に期待
茨城新聞(2005/12/09付け)
 県立三病院(中央、友部、こども各病院)の経営改革で、来年四月からの地方公営企業法適用に伴って改革を指揮する新設ポストの「病院事業管理者」に、自治医科大客員教授で民間病院の最高顧問を務める古田直樹氏(65)の起用が、12月8日までに内定した。巨額の累積赤字を抱える県立病院の経営改善や病院機能の再検討も迫られる状況下、医師や教育者、行政官としての経歴に加え、病院経営にも携わる古田氏の経験、手腕に期待がかかる。
 古田氏は現在、東京都在住で自治医科大客員教授、竹田綜合病院(福島県会津若松市)最高顧問を務める。東京大医学部卒業後、心臓外科医として米国などに留学。その後、旧厚生省行政官として国立医療施設の運営に携わり、国際医療協力の分野でも活躍。早稲田大客員教授や米国ハーバード大研究員も務め、病院長の経験もある。
 関係者によると、県は「医療にも精通し、経営も進められる人材」(橋本昌知事)の方針で人選を進め、医療関係機関や医学部などに働きかけた結果、古田氏が浮上。先月下旬、知事らが古田氏と面会し、内諾を得た。年明け早々に県参与職の辞令を発令する。
 県立三病院は例年、県の一般会計から五十億円程度が補てんされているが、それでも計五十億円の累積赤字を抱えている。改善策として県は医療関係者らで「県立病院の経営形態に関する検討委員会」を立ち上げ、同委は地方公営企業法の適用や病院の在り方そのものの見直しを提言した。
 提言は地方公営企業法に基づき設置される病院管理者には職員給与の決定権や人事権を与えるよう求め、知事は「提言に沿って改革に当たる」との考えを表明。県は病院管理者の下に置く「病院局」設置へ向け、準備室を発足させて関係条例の改正などに備えている。
 県立病院職員の給与体系は現在、県職員と同じだが、同法適用後は独自に設定できる。しかし、自治体病院経営に同法を適用した全国十八県(〇四年度)とも、給与削減には着手できていない。 検討委の提言は「四年で成果が表れない場合は民営化も検討すべき」としており、古田氏が指揮する改革には実効性が問われる。