産婦人科学会は「産科診療圏」構想を推進
 少子化対策を進める上で、大きな問題となりつつあるのが、産婦人科医の減少です。安心して出産できる環境がなければ女性たちは妊娠するのをためらいます。産婦人科医の確保は先送りが許されない課題になってきました。
 日立市内でも出産が可能な産婦人科病院は、日立製作所日立総合病院と瀬尾産婦人科病院の2カ所に限られてしまいました。
 減り続ける産婦人科医の実態は、2006年4月、横浜市で開かれた日本産科婦人科学会総会でも明らかにされました。「産婦人科医療提供体制検討委員会」の報告で、1994年からの10年間に産婦人科医が8.6%減少、そのうちの半数に当たる4.3%が直近2年間で減っていることが分かりました。また産婦人科医の中に占める女性医師の割合が若い世代で急激に増大し、全体の3分の2が女性医師であることも明らかになりました。
 こうした変化を反映し、全国の大学病院と関連病院でも常勤の産婦人科医が2年間で8%減少、医師の引き上げで「お産」の扱い中止に追い込まれた関連病院も相次いでいることが明らかになりました。
 産婦人科医が減る原因はさまざまに指摘されています。小児科勤務医と同じように、当直や深夜の緊急呼び出しなど勤務が過酷であることに加え、他科に比べ訴訟が多く敬遠されるといわれています。何より女性医師の多くが自らの結婚・出産を機にやめてしまう。ここでも働く女性の支援が大きな課題になっています。
 産婦人科医の育成へ即効策が見つからない中、産科婦人科学会は具体的な対応として、人口30万〜100万人ごとに24時間態勢で対応できる中核病院を中心に「産科診療圏」を設置、ハイリスクの妊娠・出産を扱う医療機関は原則、専任の医師を3人以上置く構想を提言しています。医師を集約化することで医療の質を高めるという考え方です。
 国も、2005年策定した「医師確保総合対策」で医師の集約化を打ち出しています。自治体が主導、大学や医療機関と連携し地域の体制を構想していくことが重要になります。
 反面、地域での正常な出産環境を守るために、私は助産師の活用をもっと図る必要があると提案します。日立市十王町では、助産院が地域の妊産婦の大きな拠り所となっています。病院・診療所と助産院との連携を一層強める必要があると思います。