差し止め提訴へ 桜川市議会解散住民投票
朝日新聞(asahi.com 2006年7月7日)
 桜川市議有志は7月6日、市議会解散の是非を問う住民投票の差し止めを求めて近く市選管を提訴することを明らかにした。在任特例を認める合併特例法と議会解散請求を認めている地方自治法のどちらの法律が優位なのか、司法の判断を仰ぎたいとしている。
 提訴を予定しているのは稲葉安次郎議員(無所属)や今井房之助議員(同)ら8人。いずれも議会解散決議案には反対していた。
 稲葉議員らによると、合併協議会では、合併特例法の在任特例を適用して同市の議員の任期は来年9月30日までと決めている。それなのに住民団体「桜川市民の声」が地方自治法に基づき議会解散を請求し、任期途中で辞めさせられるのは納得できないとしている。
 原告代表になる予定の稲葉議員は「このような立場に立たされたのでは今後合併はなりたたなくなる。今後の捨て石になればと、あえて提訴に踏み切る」。また、今井議員は「在任特例がなかったら、桜川市は生まれることはなかったろう」と話した。
 同市では6月30日、「桜川市民の声」が「議員が多すぎる」として有権者の3分の1を超える署名を添え、議会解散を本請求した。来月下旬には住民投票が行われる見通しだ。

 桜川市の市議会リコールを巡って、一部市議が住民投票の差し止めを求める訴訟を提起すると伝えられています。「在任特例を認める合併特例法と議会解散請求を認めている地方自治法のどちらの法律が優位なのか、司法の判断を仰ぎたいとしている」との主旨の発言を行っているようですが、果たして法的に認められるのか注目されます。
 同様の訴えは、東かがわ市(平成15年4月1日に合併)で提起され、高松高裁は訴えを棄却しています。
主な争点高松高裁の判決
議員の任期を合併から2年間としたことを理由として、議会の解散請求(地方自治法76条)できるか。合併協議により任期を2年と定められた議員について、議会解散投票により、住民の意思を問うことは、地方自治法76条に反しない。(地方自治法76条: 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一(その総数が四十万を超える場合にあつては、その超える数に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができる)
新設合併により在任特例が適用された場合、合併の日から1年以内に、議会の解散投票を請求することができるか。新たに任期を付けられた議会については、その地位が、直接選挙に基づいて確定されたものでない以上、その議会の解散請求については地方自治法79条の適用はない。(地方自治法79条: 第76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は、その議会の議員の一般選挙のあつた日から一年間及び同条第3項の規定による解散の投票のあつた日から一年間は、これをすることができない)
 この高裁判決からしても、一部議員の訴えは非常に難しいのではないかと考えられます。「このような立場に立たされたのでは今後合併はなりたたなくなる。今後の捨て石になればと、あえて提訴に踏み切る」との議員の弁ですが、在任特例の適用と、その後の解散請求とは直接リンクしたことがらではありません。在任特例での議員数がいくら多くても、期間が長くても、リコールが起こらない市町村もあります。
 要は、その住民が在任特例を「可」とするか、「非」とするかという意思が最重要なのです。反対に、合併特例法が地方自治法の解散権をも制約するとすると、こちらの方がより深刻な問題となります。
 議員にとって、住民(有権者)の声は、神の声であることを忘れてはいけません。その声に納得がいかないのなら、しっかりと議会の場で、有権者との対話の場で、説得することが重要だと思います。
参考:裁決取消等請求事件(香川県東かがわ市)の判例詳細