旧日本軍の毒ガス兵器が由来とされる有機ヒ素化合物(ジフェニルアルシン酸)により健康被害を受けた神栖市の住民が、7月24日、公害等調整委員会(公調委)に責任裁定を申請しました。申請したのは高濃度の有機ヒ素化合物が検出されたA地点住民6人と、その西方約1キロで比較的高濃度の有機ヒ素化合物が検出されたB地点周辺住民28人の合計34人。、国と県の損害賠償責任と汚染実態など明らかにすることが目的です。
 住民代理人の弁護士が、東京・霞が関の公調委を訪問し申請書を提出しました。申請書によると、旧日本軍が有機ヒ素化合物のジフェニルアルシン酸を製造したが、国は適切な管理を怠ったために健康被害を発生させたとしています。また、県は1999年に社員寮の井戸からヒ素が検出されたときに十分な調査をしなかったため、被害を拡大させた責任があると主張しています。
 国と県に対し、不法行為に基づき損害賠償の一部として1人300万円を支払うよう求めています。
 公害等調整委員会は、公害紛争を取り扱う総務省内の行政委員会です。公害紛争を民事訴訟で争った場合、その解決に多くの時間と費用がかかるなど被害者の救済の面で問題があったことから生まれた委員会です。このため、この制度には民事訴訟に比べて、1)迅速な解決が図られる、2)費用が安い、3)専門的知識が活用できるといった特色があります。公害等調整委員会は、1)あっせん、2)仲裁、3)調停 、4)裁定の4種類の方法で公害紛争を解決します。今回、提起された「責任裁定」は、損害賠償責任の有無・賠償額に関する法律的判断を求めるものです。
参考:公害等調整委員会