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 がんの治療法として粒子線治療が注目を浴びています。この治療法は、一般の放射線治療に比べてがん病巣にその効果を集中させることができ、がん病巣周囲の組織に強い副作用を引きおこすことなく、十分な線量を照射することができます。手術による人体への負担も少なく、高齢者への治療にも適しています。反面、設備の建設費が高い難点があります。井手よしひろ県議は、JCO事故に際して国から交付された95億円の交付金を活用して、県北地域に粒子線治療施設を建設することを提案しています。
国の交付金(原子力等安全推進基金)を活用し粒子線治療設備を整備
参考写真 1999年、東海村の核燃料加工会社JCOで、ずさんな作業管理のため発生した臨界事故は、被曝した作業員2名が死亡するなど人的、経済的に深刻な影響を地域社会にもたらしました。国は、このJCO臨界事故を受けて、茨城県に対して原子力安全等推進交付金を5年間に亘り交付しました。県は、その全額95億円あまりを「原子力安全等推進基金」として蓄え、JCO事故後の周辺住民の健康診断などの事業や放射線を利用した医療施設の整備に活用する方針です。
 がん治療には外科治療(外科手術によるがん細胞の除去)、放射線治療(放射線によるがん細胞の破壊)、化学治療(抗がん剤投与によるがん細胞の破壊)の3種類があります。
 このうち放射線治療は、他の正常な器官を傷付けず、がん細胞だけを破壊できるという特徴があり、がんの部位によっては外科手術以上の治療効果が上がることが知られています。従来のX線やγ線による治療に比べ、粒子線(陽子線・炭素線)は、正常細胞への影響が少なく、がん病巣だけに集中的に照射できるという特性があります。
 反面、施設の整備に巨額の予算が必要で、施設も巨大化する欠点もあります。
 粒子線治療を行うためには、陽子や炭素など粒子に運動エネルギーを与えて、がん細胞にぶつけることが必要です。そのために、必要な機器が「加速器」と呼ばれる装置で、現在ではシンクロトロンとサイクロトロンの2種類の加速器が実用化されています。しかし、いずれも長所・短所があり、その特長を兼ね備えた新たな加速器の開発が進められています。それが、現在つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)で研究が進められている「FFAG加速器」です。FFAG加速器は、一秒に何千回という連続照射ができ、操作の調整も簡単で、構造的に小型の加速器も作ることができるようになります。
 県では、KEKとの連携の上で、FFAG加速器を使った粒子線治療施設を東海地域を念頭に整備する計画を進めています。
 しかし、このFFAG型加速器の開発には相当の時間と費用がかかる見込みで、実用化までの具体的なタイムテーブルが明らかになっていません。
 井手県議は、FFAG型加速器の導入にこだわらず、95億円の基金を活用して、すでに実用化されている陽子線や炭素線治療装置の早期の設置を提案してまいります。
(写真は筑波大学の陽子線治療装置を視察する公明党県議団)