12月13日、ファイル交換ソフト「ウィニー」を開発した元東京大大学院助手・金子勇氏に対し、京都地裁は罰金150万円の有罪判決を言い渡しました。
 ウィニーは、インターネットにつながったパソコン同士でデータを簡単にやり取りできるようにするソフトです。匿名性が高く、大容量にサーバーも必要しないことから、著作権に抵触する映画や音楽の違法コピーの交換にも利用されています。さらに、このウィニーを狙い打ちしたウィルスソフトが開発され、このウィルス感染すると、パソコン内のデータが勝手にネット上に流出されてしまい、問題を一層深刻にさせています。
 金子勇氏はウィニーの開発で、著作権の侵害を助長したとして、著作権法違反幇助罪に問われていました。
 14日付の読売新聞は、この判決を社説取り上げ、「技術には必ず「明と暗」がある。包丁を例に取ると、料理の道具なら「明」だが、凶器に使われれば「暗」になる。判決はウィニーの「暗」の面を問い、使い方次第で社会に害をもたらすことを元助手は十分に理解していた、と認定した。にもかかわらず、開発と改良を続けネット上で不特定多数に無償提供し、著作権侵害を引き起こしたと断じた。技術開発に当たって技術者は「暗」の側面を自覚する必要がある、というメッセージだろう。ウィニーに限らない。科学技術の研究開発に携わる者にとって共通に求められるモラルだ」と論評しました。
 私は、この読売の主張に共感を覚えます。開発にあたる者は、技術が悪用された際の社会的責任を事前に充分に自覚すべきだと思います。ウィニーの場合、極端に匿名性を高めることに、どのような意味があるのでしょうか。むしろ、しっかりとした個人認証を行い、不正なコピーが流通しない仕組みを盛り込む必要がありました。
 今回の判決を一つの教訓として、ソフト開発者はネット上モラルの体現者であってほしいと思います。
「新技術の開発、どうして罪に」ウィニー判決受け被告
朝日新聞(2006/12/13)
 「新しい技術を開発することが、どうして罪になるんだ」。判決を受け、京都市中京区内で記者会見を開いた金子勇被告と弁護団は不満をあらわにし、大阪高裁に控訴して争うことを明らかにした。
 会見には金子被告と弁護士約10人が出席。ある弁護士は「開発者は、あらかじめ起こる影響をすべて予想してから公開しろというのか。理解できない」「技術の価値は中立だと言いながら有罪というのはおかしい」などと話した。
 金子被告は、情報流出を止めるため今後、ウィニーの改良版を公開するつもりがあるのかについて報道陣から問われると、「何をすれば罪に問われるのかがあいまいな現状では、リスクは負えない」として、すぐには公開しないことを表明した。また、違法なファイルがウィニーを介してやり取りされている実情について、「悲しいと思っている。やめてもらいたい」と話した。