記者ノート:'06ワイド 合併5議会解散 住民の怒り噴出/茨城
毎日新聞(2006/12/18)
 城里町、常陸太田市、常陸大宮市、桜川市に笠間市−−。今年、県内では市町村合併で「在任特例」を適用した4市1町の議会が、住民からの直接請求で次々に解散に追い込まれた。「平成の大合併」自体は一息ついたが、新たな問題が一気に噴出した1年だった。
 地方自治法の原則では、対等合併する際は議員全員が失職し、人口に見合った定数で新たに選挙を行う。編入合併の場合は編入される自治体の議員のみが失職する。一方、合併特例法には、合併後も旧自治体の議員は一定期間、無条件で議員の身分を保障される在任特例の制度がある。
 県内では「平成の大合併」で01年以降、25件の合併が成立し、うち24件に在任特例が適用された。議会は定数を大幅に上回る状態となり、城里町の住民が初めに解散を請求。今年2月の住民投票で町議会は解散された。その後も3市議会が立て続けに住民投票で解散。投票の結果は4市町とも、解散賛成票が圧倒的多数を占めた。これを受けて先月には笠間市議会が住民投票を待たずに自主解散した。
 こうした状況に橋本昌知事は「(在任特例を適用しても)長い目で見れば議員も職員も大幅に減らされる。複雑な思いだ」と今後の合併の進展具合に懸念を示した。確かに水戸市と茨城町の合併協議は、議員の身分などを巡って半年以上中断したままだ。国や県にとって在任特例は合併を円滑に進める上で、欠かせない制度なのだろう。
 笠間市議の1人も議会解散後、「合併した地域間の垣根をなくすためには在任特例は今でも必要だ」と意地を張った。しかし住民投票の結果を見れば、市議の言い分は単なる建前にしか聞こえない。一方、水戸市や古河市などでは議会が自発的に定数自体を削減する動きが出ている。各地域の住民運動が、地方議会全体に緊張感を与えた結果と言える。
 国や県、議員らの言い分だけでは通用しないほど地方財政は悪化し、行政に向けられる住民の目が厳しくなっていることが5市町の解散で明確に示された。合併に伴う矛盾や問題点は今後も出てくるだろう。在任特例を巡る議会解散劇はその象徴のように思える。

 議会の定数を削減する流れは、地方財政が逼迫する中で、あたり前といえばあたり前の流れです。特に、合併を成功させるために、地方自治法の限度ー杯に定数を定めた議会への批判は当然です。
 しかし、今回の議会解散の流れが、純粋に財政問題からスタートしたものかは大いに疑問です。実際、議会が解散された市町の大部分が、首長選のしこりが解散運動の発端となっています。こうした現体制への批判勢力が、議会解散運動のコアになっている事実は否定できません。
 こうした動きが導火線となり、一度決めた地方自治法の上限定数を見直す動きも出ています。スタートはどうあれ、結果オーライということでしょうか。
 議会は、住民の声に耳をそばだて、有権者の常識が議会の常識と遊離しないよう常に自身を律する必要があります。