自民・公明が議員提案で月内に特例法案提出
 自民、公明両党は4月10日、カネミ油症事件をめぐり、国が患者側に返還を求めてきた損害賠償の仮払金計約17億円について、一定の年収などを下回る世帯は全額免除する救済策を決定しました。今月中に議員立法で特例法案を国会に提出し、今国会中の成立を目指します。生存患者約1300人を対象に、来年実施する健康実態調査への協力金名目で、1人当たり20万円の一時金も給付することも盛り込まれています。
 これは、公明党の強い働きかけで実現したもの。カミネ油症事件は1968年、米ぬか油に含まれたダイオキシン類で健康被害が出た国内最大の食品公害事件です。カネミ倉庫が製造した米ぬか油を食べた西日本一帯の1万4000人以上が手足のしびれや肝機能障害など健康被害を訴えたました。油に混入したポリ塩化ビフェニール(PCB)が原因とされ、87年に「治療費を誠実に支払う」などの条件で、被害者と和解しました。しかし、企業はその和解金の支払いがままならず、国が治療費などを企業に代わって仮払いしていました。今回の特例措置は、この仮払金について条件付きながら全額免除することが骨子となっています。
 また、原因企業のカネミ倉庫(北九州市)に対し、患者の医療費を誠実に支払うよう確約することなどを勧告するも決めています。国は、カネミ倉庫が収益を治療費に充てられるよう、約2万トンの政府米の保管を委託し、毎年約2億円を支払っています。救済策では、被害者への対応が改善されなければ、委託を取り消すことも検討するとしています。
(写真はカネミ倉庫に押しかける被害者、東京都教育委員会「暮らしと環境」よりリンク、共同通信社提供)
 公明党では民主党などにも呼びかけ、円滑な国会成立を図っていく方針です。

(2007/6/4更新)
カネミ油症特例法が成立
 1968年に西日本で発生したカネミ油症事件で、国が患者側に支払った損害賠償仮払金の返還を免除するカネミ油症特例法は6月1日、参院本会議で全会一致で可決、成立しました。
 カネミ油症事件の損害賠償請求訴訟では、国がいったん敗訴したが、その後、患者らが企業側と和解して国を相手取った訴訟を取り下げたため、患者らに損害賠償の仮払金の返還義務が生じていました。このため同法では、4人世帯で税引き後の年収が1000万円未満の患者らに対し、全額免除することを定めています。これにより、返還が必要な約500人のうち、9割程度が救済されます。
研究協力金20万円を支給
 さらに、特例法とは別に、与党は、油症研究調査協力金として、生存する約1300人の認定患者全員に対し、1人当たり20万円の一時金を支払うため、2008年度予算案に経費を盛り込むとした救済策をまとめています。
 また、従来の油症研究班の研究内容や実施体制を見直し、ダイオキシン類の体外への排出を目的とした根治療法の開発などに重点を置き、08年度から新たな体制を構築する。そのほか、与党カネミ油症問題対策PTがカネミ倉庫に対する責任追及として、(1)患者への医療費の支払いを改めて確約する(2)医療費の支払いに関する患者との定期的な協議――などを勧告することを決めています。
 公明党は、カネミ油症患者救済策の確立を一貫して推進してきた。カネミ油症の主原因に関し、01年12月の参院決算委員会で、公明党の山下栄一参院議員の質問に対し、当時の坂口力厚生労働相(公明党)が「ダイオキシンが主要原因である以上、(診断基準などを)即刻見直したい」と確約。その後、診断基準が見直され、長年苦しんできた被害者に油症認定の門戸が広がった。その後も公明党は、党カネミ油症問題対策PT(田端正広座長=衆院議員)を中心に、患者団体やカネミ倉庫との意見交換などを重ね、患者団体とともに人道的救済へ向けて取り組んできました。
参考:カミネ倉庫株式会社のHP