水戸議会、議長選べず流会 多数派工作難航
朝日新聞(2007/5/19)
 5月16日開会した改選後初の水戸市議会臨時会は、新議長を選出できないまま、最終日の18日流会した。臨時会は21日に再び開かれる予定だが、新議長を選ぶことができるかどうかは不透明だ。
 臨時会の初日は、加藤浩一市長のあいさつと会期の日程を決めただけで空転状態となった。2日目、3日目ともに午前10時に開会したが、すぐに休憩に入り、議長選への綱引きが続いた。
 関係者によると、議長選出がうまくいかなかったのは、議長選で名前が挙がっている公明党の市議に対して、一部の保守系会派が難色を示しているため。市議会では、この会派を中心に別な市議を議長に選出しようと連日、多数派工作が行われたが、うまくまとまらなかったという。
 地方自治法は、臨時議長はそのときの議場での一番の年長者が担うとしている。臨時議長を務めた須能昭一市議は、別な議長の選出を目指す会派に所属。流会について「遺憾に思っている」と述べたものの、「保守系会派から議長を出すべきだと考えている。七つの保守系会派を集めて協議しようと努力したが、4会派しか集まらず、候補者を一本化することができなかった」と、議長選を行わなかった理由を話した。
 臨時会では、常任委員会の委員を決めたり、執行部から議案の提案を受けたりする予定になっており、多くの会派が臨時議長に、早期に議長選を行うよう申し入れをしていた。ある市議は「市民に理解を得られる状態ではない。異常事態だ」とし、別の市議は「議長が決まらなければ、何もできない。議会として恥ずかしい」と話した。
 市議会事務局によると、議員の日当に当たる費用弁償は支払われる。費用弁償は、距離に応じて1人当たり5400〜5700円。

参考写真 今回の水戸市議会の混迷の原因は、地方議会の置かれている法的な不備が一つの原因となっています。
 地方自治体の議会では、初招集日で正副議長が決まっていない場合、出席者の中で年長議員を臨時議長にして、議長選出選挙を行うことになっています。すなわち稟議議長は、議長選出選挙を行うためだけに置かれる議長です。水戸市議会の場合は、最年長者が所属する会派が、その会派に属する議員を議長として推しているために、多数派工作が完了するまで議会を開かないという暴挙に打って出ました。通常の議会であれば、議長がその職務を全うしない場合、副議長がそれを代行することができます。しかし、臨時議長しかいない任期最初の議会では、臨時議長が議長選を行わない限り議会は全く機能しないと言うことになります。まさに地方自治法の想定外の辞退です。地方自治法に、臨時議長は最初の議会が招集されたその日に、議長選を行うことを明文化する必要があります。
 いずれにせよ、臨時議長が恣意的に議会の運営を行うことは厳に慎まなくてはなりません。21日には、議長選が速やかに行われることを期待します。