薬害肝炎訴訟、和解協議決裂へ 原告側、政府案拒否
朝日新聞(2007/12/20)
 薬害C型肝炎訴訟の和解協議で、政府は12月20日、一定期間に血液製剤を投与された原告には直接和解金を支払い、その他の原告らを間接的に救済する「基金」を30億円に積み増す案を大阪高裁に提出した。原告側は「一律救済の理念に反する案だ」として政府案を拒否し、同高裁での和解協議を打ち切る考えを表明した。1カ月半に及んだ協議は決裂の可能性が高まった。
 修正案では、血液製剤フィブリノゲンは85年8月〜88年6月、クリスマシンは84年1月以降について国・製薬会社の責任を認めた東京地裁判決を基準に、期間内の原告に対し、症状に応じて1320万〜4400万円の和解金を直接支払うとした。
 一方、国・製薬会社は「訴訟活動支援のための和解金」として、原告弁護団がつくる「基金」に計30億円を支払う。配分方法は原告側にゆだね、今後提訴する患者も含め、「期間外」に製剤を投与された原告を間接的に救済する内容だ。
 13日に大阪高裁が示した和解骨子案では、財団への支払額を8億円としたが、修正案では30億円に積み増した。今後提訴する患者を約800人と見込み、現在の原告と合わせて計千人を救済対象と想定。直接救済の対象外となる人は3割とみて、1人1千万円で基金総額を出したという。
 舛添氏は会見の冒頭、立ち上がって「再び薬害を発生させたことを反省し、被害者に心からおわびしたい」と頭を下げたうえで、修正案について「事実上、全員救済するもの」との認識を示した。一方で「大阪高裁の骨子案と矛盾する内容にはできない」と強調した。
 原告側は、血液製剤の投与時期や種類、提訴時期にかかわらない「一律救済」の政治決断を福田首相に求めてきた。だが舛添氏はこの日、「今日の案が政治決断です」と答えた。
 国の修正案について、全国弁護団の鈴木利広代表は「要はお金の問題だという矮小(わいしょう)化した理解しかしていない。かえって原告の感情を逆なでする案だ」と一蹴(いっしゅう)した。全国原告団の山口美智子代表は「舛添大臣は私たちと握っていた手を離してしまった」と話した。 原告団は17日、「一律救済」の修正案を大阪高裁に提出している。大阪高裁は双方の修正案を踏まえて和解の可能性を探るとみられるが、鈴木代表は「しかるべき時期に、一律救済の理念に反する和解協議には応じられないと正式に申し上げる」と述べ、和解協議は決裂するとの見通しを示した。原告団はこれを受け、「当面の活動を終結する」と表明した。
 原告団の訴えは、患者を一律に救済することでした。この願いに対して、司法当局も政府も責任ある回答を示す勇気を持ち合わせていませんでした。
 テレビ報道によると、全国原告団代表の山口美智子さんは「薬害被害者は線引きされ、切り捨てられた」と声を詰まらせ、「福田総理は、全面解決という最後の山を登ろうとしている私たちを突き落とした」とも吐き捨てました。舛添厚労相に対しては「早くから全面解決というアドバルーンを揚げたのに、握っていた手を解き放った」と怒りを込めて語りました。「札束で頬をはたくようなもの」とまで、言い切った原告団の断腸の思いはテレビからも伝わって来ました。
 公明党は、与党にあっても早くから一律救済にこだわってきました。12月17日、坂口力副代表、斉藤鉄夫政務調査会長は、衆院第1議員会館で薬害C型肝炎原告団と面会し、薬害肝炎の被害者全員を一律で救済するよう要請を受けました。その際、斉藤政調会長は、「線引きのない救済をしていくべきだと考えている。(福田康夫)総理にそのような決断をするよう、公明党としても働き掛けをしていきたい」と語り、全員救済への決意を示していました。
 年内の解決は絶望的になった薬害肝炎患者の一律救済ですが、ねばり強い取り組みで、患者の皆さんを支援してまいりたいと決意を新たにしています。
 なお、「薬害肝炎訴訟を支援する会・茨城」のミーティングが12月22日(午後1時)から、土浦一中地区公民館第一会議室で開催されます。現在の状況や今後の活動について話し合われる予定です。