薬害肝炎原告・弁護団、「問題解決へ大きな一歩」と評価
 12月23日、福田康夫首相は、公明党が求めていた薬害C型肝炎の被害者を「一律救済」することを決断しました。(当ブログ「薬害肝炎全面解決へ議員立法、福田首相が会見」で既報)
 自民・公明の与党はそのための法案を今国会に議員立法の形で提出し、成立をめざします。民主党など野党にも、法案の提出段階から協力を呼び掛ける方針です。
 首相の発言を受けて、自民、公明両党は12月25日、幹事長ら党幹部が法案の内容を協議する予定です。今後は、原告側も受け入れ可能な法案が取りまとめられるかが焦点となります。
参考写真 首相は23日午前、記者団に「薬害患者の全員一律救済ということで、議員立法することを党との相談の結果、決めた」と表明。「野党の協力も得なければいけない。可及的速やかに法案は通してほしい」と述べました。また、国の「責任」を法案に明記するか検討する考えを示しています。舛添要一厚生労働相も「国の責任問題など具体的なことは今後詰める」と語りました。さらに政府高官は記者団に、血液製剤の投与時期に関係なく、「症状に応じて救済していくことになる」との見通しを示しています。
 また、全国原告、弁護団は「大きな一歩であると評価し、薬害肝炎問題の解決につながることを期待する。C型肝炎は進行性の病気であり、できる限り早期に法律が制定されるよう、党派を超えた真の解決・救済のための立法となることを望む」との声明を発表しました。
 政府は12月20日、大阪高裁の和解骨子案に対し、一定期間外に血液製剤を投与された被害者を基金で間接的に救済するとの修正案を提出しました。しかし、原告側はこれを拒否した上で、和解協議の打ち切りを表明していました。
 公明党は薬害C型肝炎訴訟について、12月19日に太田昭宏代表が首相官邸で福田首相に対し、患者の一律救済を決断するよう求めたほか、18日にも坂口力副代表、斉藤鉄夫政務調査会長、赤松正雄衆院議員(公明党肝炎対策プロジェクトチーム座長)が町村信孝官房長官に、原告団が主張している一律救済を強く要請していました。
公明党斉藤政調会長:年内に骨子案まとめ 野党にも呼び掛けへ
 12月23日、公明党の斉藤鉄夫政務調査会長は、福田康夫首相が薬害C型肝炎被害者全員への一律救済を議員立法で行う考えを示したことについて、記者団に対し、大要、次のように述べました。
●(首相の方針について)公明党は首相に直接、線引きのない一律救済を訴えてきた。それを受けて決断をされたということで、大変に評価している。
●(救済法案の中身について)細かい中身についてはまだこれからの作業になる。できるだけ早く作業を進めていきたい。原告が求める、時間・時期において扱いに差別のない一律救済を明確にする内容でなくてはならない。(原告に)受け入れてもらえるような案を作らなければならない。
 線引きのない一律救済を法的にしっかり明確にし担保することで、(国としての責任を認める)国の姿勢を示すことができると思う。
●(自民の谷垣禎一政調会長との話は)今国会でぜひ成立させたいということは確認した。民主党にも納得してもらう内容でなくてはならないので、与党で年内には骨子案をまとめ、野党側にも協議を呼び掛けたい。
 今回の議員提案による一律救済特例法は、薬害肝炎問題のうち約1000人を救済するものです。その内訳は、すでに原告として訴訟に関与している被害者が207名、訴訟には加わってはいないがフェブリノーゲンなどの投与がカルテなどから証明できる被害者が約800名となっています。
 そかし、その背後には、フェブリノーゲンの投与の事実は明らかになっているが、病院などの証明が得られない被害者1万人。原因が分からずC型肝炎を発症している被害者が200万人。B型肝炎発症者まで含めると350万人の肝炎患者が存在します。
 一律救済特例法によって、国や製薬会社の責任を明確にすることや、それに対する補償を充分に行うことが、肝炎問題全体の解決の第一歩となります。
20年度からインターフェロン治療に対する公費助成
 また、この一律救済法とは別に、肝炎のインターフェロン治療に対する助成制度が来年度より実施されます。公費助成は、治療費の自己負担分を、所得に応じて1万円・3万円・5万円の3段階で構成されています。
 インターフェロン治療は現在、患者の自己負担額が月7万〜8万円かかり、B型10万人、C型50万人といわれる治療を必要とする患者のうち、実際に治療を受けている患者は5万人程度にとどまっています。
 政府の計画では、年間でインターフェロン治療を受ける人数の10万人への倍増を目指すとし、今後おおむね7年間、希望者すべてが治療を受けられる機会を確保。実現のための経済的負担の軽減策を来年度から創設します。
 具体的には、およそ年収485万円までの下位所得層(50%)の自己負担限度額を月1万円、年収458万円〜720万円の中位所得層(30%)を月3万円、それ以上の年収の上位所得層(20%)を月5万円の3段階に分けて公費助成を行います。
 これによって生じる年間の総事業費は単純計算で約256億円、7年間で約1,792億円と試算。国と地方で折半して対応するとしています。