参考写真 2月15日、NECシステムテクノロジー主催の「自治体GISセミナー2008」(後援:地理情報システム学会・NPO法人GIS総合研究所いばらき)が、水戸市民会館の大会議室で行われました
 昨年(2007年)、国においては「地理空間情報活用推進基本法」が制定され、国土交通省からは「GISアクションプログラム2010」が発表されました。その中で全国の自治体では、統合型GISの構築に取り組んでいます。 茨城県においても、昨年12月、茨城県域統合型GIS設計及び構築業務について、プロポーザル方式による業者選択が行われ、08年度には具体的なシステム構築が開始されることになっています。
 今回のセミナーでは、統合型GIS構築の先進自治体におけるその構築プロセスと現状、展望などについて興味深い報告がなされました。
 基調講演では、元茨城県情報政策課IT推進室長で、井手よしひろ県議らと共にIBBNの構築に携わった須田裕之氏(NPO・GIS総合研究所いばらき理事、国立大学法人筑波技術大学産業技術学部産業情報学科副学科長)が、「地域情報プラットフォームと統合型GIS」−様々な形での地域連携−と題して、発表を行いました。特に、「統合型GISは、地理空間情報の共通基盤として位置づけられるだけではなく、ユビキタス社会にあって、様々なシステムに共通して使われるシステムであり、いわば縁の下の力持ち」であるとのことばは、説得力がある内容でした。まさに、GISは、『地域情報プラットフォーム』として大きな役割を担い、その実現には、1.広域連携、2.サービス・業務連携、3.市民・事業者・行政連携等の様々な視点による連携が不可欠であるとしました。
 続いて、三重県政策部情報政策室地域情報化グループの山口成大主査が、「空間情報共有利活用に向けた三重県の取組事例」と題して事例報告を行いました。特に、三重県が県民に無償提供している簡易GISソフト「M−GIS」を通して、自治体が提供するGIS情報がいかに県民に活用されていくかを考える上で有益な情報をご提供いただきました。
参考:三重県の簡易GISソフト「M−GIS」
 2番目の事例報告は、大阪府富田林市の市長公室政策推進室浅野和仁企画調整係長の「統合型GISの臨界点をめざして」との講演でした。昨年、「全国の自治体で導入が進むGISシステム」(2007/10/14掲載)で紹介した事例で、今回の講演の中でも一番興味を持っていた報告でもありました。富田林市では、ガス会社や大阪府が持っていた既存の様々なデータを活用したり、毎年更新していた航空写真を効率的に活用することによって、最先端のGISシステムを構築しました。その基本的な考え方の底流に「行政(市)がもつ情報は、市民に提供することによって初めて効果を発揮する」という、市民中心の考え方があることに、大いに感心しました。最新の測量成果をいち早く市民に提供するウェブサイト「e絵図@とんだばやし」は、こうした市民中心の発想の上に実現できているということを再確認しました。
参考:「e絵図@とんだばやし」のホームページ
 時間の関係で、「府中市における統合型GISの取組み」(府中市総務部情報システム課IT推進担当主査市ノ川恵一氏)、「航空写真活用事例について」(NECシステムテクノロジー)については、講演を拝聴することができませんでした。後日、内容を録画したDVDをお送りいただけるということで、楽しみにしています。
 こうした先進事例を、茨城県並びに県内市町村の統合型GIS構築に活かしてまいりたいと思います。