2月21日、公明党社会保障制度調査会の医療制度委員会(福島豊委員長=衆院議員)は、診療や投薬の公定価格である「診療報酬」の2008年度改定について厚生労働省から説明を受け、意見交換を行いました。福島委員長は、産科や小児科など病院勤務医の負担軽減策や、救急医療、がん対策などへの重点評価などが盛り込まれた点について「公明党が折々に主張してきた内容が反映され、評価したい」と述べました。
参考写真 今回の改定案では公明党の主張を踏まえ、産科では、流産などのリスクが高い妊産婦を診察した際に支払われる診療報酬を原則2倍に引き上げるほか、救急搬送された妊産婦を受け入れた場合は、新たに5万円の報酬を支払うこととしました。
 小児科では、医師や看護師を手厚く配置して高度な小児医療を提供する医療機関や子ども専門病院、障害児で特に状態が安定しない乳幼児の入院を受け入れている病院の報酬を拡充しました。
 病院勤務医の負担軽減策では、地域の急性期医療を担う中核病院で勤務医の負担軽減策が具体的に計画されている場合や医師が行っている事務作業を補助する職員を配置した場合、さらに、時間外急患の診療を開業医に分担してもらうため、診療所が早朝や夜間、休日に診療した場合を、新たに報酬の対象に加えました。
 救急医療対策については、効率的な急性期医療を提供するため、当初7日間が一律だった救命救急入院料を、3日以内について評価を高めました。
 また、がん医療の推進については、(1)がん医療で重要な役割が期待される副作用が少ない放射線治療や、医療機器安全管理料、外来放射線治療加算の新設、(2)高度な外来化学療法に対する加算の新設、(3)がん診療連携拠点病院加算の引き上げ、(4)緩和ケアの普及充実へ、モルヒネを処方して痛みを緩和する疼痛緩和管理指導料の新設――などが盛り込まれ、さらに、リンパ浮腫(むくみ)の重症化予防に必要な医療用サポーター(弾性着衣)の購入費も保険対象となりました。
 このほか、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の利用促進のため、後発薬処方率30%以上の際の加算を新設。子どもの“心の診療”の充実も盛り込まれました。
リンパ浮腫患者の医療用サポーターに保険適用へ
 公明党が強力にバックアップしてきた腕や脚がむくむリンパ浮腫の治療用装具となる医療用サポーター(弾性着衣)の購入費用が、今年4月から保険適用されることになりました。
 リンパ浮腫は、体内の老廃物を運ぶリンパ液の流れが滞り、皮下組織にたまって手足が腫れる症状。患者は全国で推定10万人以上。多くは、乳がんや子宮がん、前立腺がんなどの手術で転移を防ぐためにリンパ節を切除したことで発症し、重症化すると服や靴が入らなくなるほど腫れたり、炎症を起こしやすくなります。
 特別な治療薬がないこの病気は、リンパ液の流れを促して老廃物を押し流すマッサージや、サポーターによる圧迫療法、圧迫したまま筋肉や関節を動かす運動療法などで治療します。現在、いずれも保険対象外のため、医療機関を利用すると患者の自己負担は大きいものとなっています。特にケアに欠かせない医療用サポーターは1枚1万〜3万円と高額な上、年間に2〜3回買い替える消耗品のため、全額自己負担を余儀なくされる患者から保険適用を求める声が上がっていました。
 公明党はこれまで医療用サポーターへの保険適用を求めて、2000年に浜四津敏子代表代行が患者団体とともに厚生省に要望書を提出し、その後も国会の委員会質疑で渡辺孝男参院議員、高木美智代衆院議員がそれぞれ保険適用を要請していました。
 また、専門医と患者らでつくる「リンパ浮腫に対する弾性着衣の保険適応を実現する会『鬨の会』」(代表世話人=北村薫・九州中央病院副院長)が発足した05年には、公明党の渡辺裕江・福岡市議が街頭署名活動で共に協力を呼び掛けたほか、木庭健太郎参院幹事長も同年から3年連続で厚生労働省への「鬨の会」の要請に同席。特に昨年11月の要請では、舛添要一厚労相が、「(10月の参院予算委員会での浜四津代表代行の指摘を受けて)中医協に検討させている。努力して、うまくいけば来年(08年)4月から保険適用できるようにと思っている」と述べ、善処を約束していました。
診療報酬改定 中途半端に終わった勤務医対策
(2008/2/15日付・読売社説)
 これで勤務医不足に歯止めをかけられるだろうか。
 中央社会保険医療協議会(中医協)が、2年に1度改定される診療報酬の配分を決めた。
 政府は昨年末、診療報酬の総枠については、医師の技術料など「本体部分」を0.38%引き上げることを決めている。引き上げ幅は小さいが、苦しい財政下での8年ぶりの総枠拡大だ。
 過酷な状況にある救急医療や産科、小児科、外科といった分野の病院勤務医に報酬面で手厚く配慮すべきだ、との声に応えた措置である。
 中医協は、手術料や産科救急の報酬を引き上げるなどして、約1500億円を病院勤務医向けに重点配分した。限られた財源の中で、最低限のメリハリをつけたとは言えよう。
 だが、本気で勤務医対策に手を打つのならば、開業医の既得権に大胆に切り込むことで、もっと多くの財源を確保できたはずだ。今回の改定は、中途半端に終わったと見られても仕方あるまい。
 最大の焦点は、開業医の「再診料」の見直しだった。現在、病院と開業医の初診料は2700円で同額だが、2度目以降の診察料は病院570円に対して開業医は710円と、140円も高い。
 この差は、開業医が地域医療を包括的に担っていることへの評価分というが、納得する人は少ないだろう。むしろ再診料の低い病院へ患者を向かわせ、多忙な病院勤務医をさらに疲弊させる。
 厚生労働省は当初、開業医の再診料を引き下げ、その分を勤務医対策の重点配分にあてる方針だった。しかし、日本医師会が強硬に反対し、見送られた。
 結局、再診料は病院分を30円引き上げることでわずかに差を縮めたものの、依然として110円の開きを残した。
 開業医を一律に優遇する報酬体系は、抜本的に見直すべきだ。
 例えば、ビルの一室に構えた診療所に昼間だけ通勤する開業医の報酬は、大幅に削る。地域の中核病院と連携し、休日・夜間や救急医療を支えようと粉骨砕身している開業医には、もっと思い切った報酬で報いる――。こうした改革で、勤務医の負担軽減を図る必要がある。
 超高齢時代に必要な医療費は、野放図な膨張を抑制しながらも、きちんと財源を確保していかねばならない。報酬の総枠が拡大されたのは、そうした認識を国民が共有しつつあるからだ。
 しかし、再診料の引き下げを見送ったことは、この流れに逆行しよう。
 開業医全体の既得権に固執し続ける日本医師会の体質が、改めて浮き彫りになったのではないか。