茨城空港は東京駅まで直線距離で77キロ、静岡空港は180キロ。後背地に茨城、栃木、群馬の関東各県を有する茨城空港、かたや静岡空港は東海道の交通の要所に位置する好立地。茨城空港のオープンは2010年春、静岡空港は2009年3月。1年の時間差で開港するこの二つの空港は、お互いに良きライバルかもしれません。
 しかし、その成り立ちや目指すものは、ここに来て大きく差別化されてきました。
 茨城空港は、自衛隊百里基地を民間共用化することで建設されている国が管理する空港です。百里基地の歴史は、地元との摩擦の歴史とも言っても過言ではありません。その意味では、いわば迷惑施設であった自衛隊の空港に対して、地域活性化のために、民間の空港を併設すべきであるという声は、地元の悲願でした。この声を受けて、国が主体となって進めてきた空港が茨城空港です。
 反対に、静岡空港は地元自治体、地元企業の熱い思いが結実して実現した空港といえます。1900億円にも及ぶ建設費の大半を、地元自治体と企業が負担しました。航空会社の誘致などにも地元がたいへんな熱意を込めて実現させました。その意味では、地元主導の空港が静岡空港です。
 茨城空港は、その地の利を活かし、首都圏の成田空港や羽田空港の代替空港として、その存在をアピールしようとしています。それが、「国内初のローコスト空港」という方向性です。静岡空港は、あくまで価格に頼らず、大手航空会社の便を中心に運営する「正攻法」でいく方針です。静岡県は「茨城は東京頼み。静岡は世界的な観光資源と、東西両方の大空港に近いことが強みになる」と強気です。
 今後の地方空港のありかたをも左右する、茨城空港と静岡空港。その答えは、後2年後に明らかになります。
参考:富士山静岡空港のホームページ
静岡空港大作戦:ライバル空港に競り勝て
◇外国人へアピール強化−−頼みの観光資源に弱点も

毎日新聞(2008/3/16)
参考写真 ライバルは静岡空港−−。自衛隊百里飛行場を官民共用化して09年度に開港する茨城空港(茨城県小美玉市)は、東京との位置関係や温泉などの観光資源が似ている静岡空港をライバル視し、独自色を出そうと必死だ。
 「静岡や茨城は東京から中途半端な位置。価格が大空港と同じミニ成田、ミニ羽田を造っても生き残れない」。茨城県はそう言い切り、大胆に「国内初のローコスト空港」にかじを切っている。
 普通の空港にあるターミナルの搭乗ブリッジをなくし、1階から航空機に直接乗り込む形にすることで人員や機器を節約して、航空会社が払う空港使用料を安くする。狙いは海外の格安航空会社を誘致することで、「成田の発着枠はいっぱい。そこからあふれた国際線を受け入れる首都圏のセカンダリー(2次的)空港になる」と意気込む。
 一方の静岡空港は、あくまで価格に頼らず、大手航空会社の便を中心に運営する「正攻法」でいく構えだ。県は「茨城は東京頼み。静岡は世界的な観光資源と、東西両方の大空港に近いことが強みになる」と説明する。
 県の戦略はこうだ。外国人観光客は成田や関西から入国し、東西の観光名所をめぐるパターンが多い。これでは移動距離が長く、ゆっくりと日本らしさを堪能できない。そこで、国際的に知名度がある富士山や伊豆の温泉がある静岡から入国してゆっくり楽しんでもらい、成田か中部から出国してもらう−−というイメージだ。
 外国人へのサービス強化のため、今年2月には全国に先駆けて「地域限定通訳案内士」に24人を任命。英語・中国語・ハングルで県内を観光案内してもらい、静岡の良さをアピールする構想だ。また、民宿などで使う外国語の文例や表示をまとめたデータCDも整備し、受け入れ態勢を強化している。
 ただ弱点はそもそもの観光資源にある。県観光コンベンション室は「富士山以外に国際的に知られているのは伊豆だけ。浜名湖など西部の集客力強化が不可欠」とする。また正式名称の「富士山静岡空港」に入る富士山でさえも、県空港建設事務所の観測(06〜07年)結果によると、空港予定地周辺から見えたのは年間72日(19・7%)しかなかった。厳しい空港間競争に勝ち残り、外国人観光客が「また使いたい」と思う空港になれるかどうかは未知数だ。