後期高齢者医療制度:10道県、重度障害者に「強制」3418人が加入拒否
毎日新聞(2008/5/7)
 後期高齢者医療制度への加入が任意となっている65〜74歳の重度障害者に対し、10道県が制度加入を医療費助成継続の条件にしたため、計3418人が拒否していることが分かった。加入した場合に保険料負担が増えるためとみられる。自治体にとっては同制度加入者の方が財政負担が軽くてすむが、一部の障害者は負担増か医療費助成打ち切りかの選択を迫られている。
 毎日新聞の調べでは、10道県と加入拒否者数は▽福岡1423人▽北海道666人▽愛知318人▽青森280人▽茨城275人▽栃木180人▽山口86人▽富山70人▽山形、徳島各60人。
 障害者への医療費助成は全都道府県が実施し、一定の障害があれば、都道府県と市町村が折半するなどし本人負担をなくしたり軽減したりしている。その際の自治体の負担は、後期高齢者医療制度の加入者は1割だが、国民健康保険や企業の健康保険なら65〜69歳で3割、70〜74歳で2割(08年度は1割)。10道県は、市町村も含めた自治体の持ち出しを減らそうと、同制度加入を助成の条件とした。
 制度加入を拒否した人の多くは、障害を抱えながら職を持ち家族を扶養しているとみられる。会社の健康保険に入って家族を養っている人などは、同制度に移れば、自分以外の家族全員が個別の国民健康保険などに加入し、それぞれの保険料を支払わなければならなくなるため、負担が増えることがある。
 10道県の多くは「医療費負担と新制度の保険料負担を比べた本人の判断」として、特別な対応をしていない。厚生労働省は指導などはしていないが、実態の把握を進めている。

 5月7日付の毎日新聞を読んで、早速、県の国民健康保険室から現状を聴取するとともに、意見交換を行いました。また、実際に長寿医療制度への移行を希望しなかった障害を持ったお年寄りからも事情を伺ってみました。
 乳幼児(未就学児)・妊産婦・ひとり親家庭(母子家庭・父子家庭)・重度心身障害者などの医療福祉受給対象者の方が、必要とする医療を容易に受けられるよう、医療保険で病院などにかかった場合の一部負担金相当額を公費で助成し、医療費の負担を軽減する制度=マル福制度(医療福祉費支給制度)が茨城県では設けられています。重度心身障害者の場合、*身体障害者手帳1・2級の交付を受けた方、*身体障害者手帳3級の内部障害の交付を受けた方、*知能指数が35以下と判定された方、*身体障害者手帳3級かつ知能指数50以下の交付を受けた方、*障害年金1級に該当された方、*特別児童扶養手当1級の対象となった方などが補助の対象者で、外来・入院の医療費負担を無料にしています。
 65歳から75歳未満の一定の障害を持つ高齢者は、任意加入で長寿医療制度に移行できるとされており、茨城県では長寿医療制度に加入していることがマル福適用の条件となっています。したがって、医療費が無料になるマル福に移行するためには、長寿医療制度への加入が半ば強制的であると報道するマスコミが存在します。毎日新聞もその例です。
 こうした半強制状態にもかかわらず、茨城県をはじめとする10道県で、3418人が長寿医療制度への移行を拒否しているという報道です。
茨城県のマル福の基準と長寿医療制度の移行条件には違いがある
 しかし、この報道には大きな盲点があります。長寿医療制度に任意加入できる条件は、/搬両祿下埃蠶■欝蕁Γ乙蕁Γ概蕕鬚持ちの方、⊃搬両祿下埃蠶■患蕕鬚持ちの方で、次のいずれかに該当される方(・両耳の聴力レベル90デジベル以上のもの、・音声機能、言語能力またはそしゃく機能の著しい障害、・両下肢すべての指を欠くもの、・1下肢を下腿の2分の1以上欠くもの、・1下肢の著しい障害、N徹藜蠶■腺院Γ腺欧鬚持ちの方、だ鎖西祿下塋欸鯤〇禺蠶■欝・2級をお持ちの方、ス駝映金証書1級・2級をお持ちの方とあり、茨城県のマル福の条件より広範囲の方が対象となっています。
 つまり、長寿医療制度に移行しても、マル福制度がそもそも適用されない方は、あえて任意加入である長寿医療制度に移行するメリットがないということになります。したがって、そのような方は、面倒な移行の手続きをしていない実態があるのです。
 確かに、社会保険に加入していて長寿医療制度に移行すると、家族が国保などに加入する必要があるため、積極的に移行を控えている方も存在します。しかし、茨城県の場合は、積極的に移行を「拒否」している方が275人存在しているとはどうしても考えられません。実際、障害者3級で長寿医療制度に移行しなかった方は、「マル福制度が適用されるわけではないので、面倒なので移行の手続きをしなかっただけ」と、語ってくださいました。
 重度障害者の長寿医療制度への加入を「強制」と表現し、加入を申し出なかった人を「加入拒否」と、いたずらに混乱を煽るようなマスコミ報道には、憤りを感じます。