国交相の河川管理の地方移譲表明、分権改革に突破口
読売新聞(2008/5/15)
 冬柴国土交通相が14日、一つの都道府県内で完結する一級河川(53水系)の管理権限について、「原則、都道府県に渡す」と表明したことは、政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)が28日にも福田首相に提出する第1次勧告の実現に向け、突破口を開いた形だ。
 一つの都道府県内で完結する一級河川の管理権限の地方への移譲は、1990年代後半の「第1次分権改革」で実現できなかった「超難関テーマ」の一つだ。冬柴国交相の今回の受け入れ方針は、画期的な節目となりうる。
 国交省の河川局内には「河川行政こそ国家の基本」とする考えがあり、多くの官僚が移譲には慎重だ。しかし、「分権に理解がある」(総務省幹部)とされる冬柴国交相が政治主導で移譲方針に転換した。
 今回の移譲が実現すれば、都道府県が上流から下流までを一体的に管理でき、治水、利水、河川環境の整備保全、水没地域の生活再建などを総合的に判断できるようになる。分権委は今後、流域が隣県に及んでいる12水系を加え、計65水系の移譲を1次勧告に盛り込む方針だ。
 国交相が示した権限移譲のポイントは、河川の管理を担う国土交通省の地方整備局(8局)と北海道開発局の職員と財源も共に都道府県に移管する点だ。「人とカネ」抜きの移譲では、地方の負担が増えるだけで、真の分権は進まない。
 国交相の方針は、14日の全国知事会・地方分権推進特別委員会でも報告され、山田啓二委員長(京都府知事)は「固い扉が少しずつ開き始めた。権限移譲を実のあるものにしたい」と評価。ただ、地方側には「財源の移譲が確約されなければ受けられない」との声もあり、今後は、各県の受け入れの足並みがそろうかどうかが焦点になる。
 また、官僚のほか、自民党族議員にも反発は強く、個別河川の移譲をめぐっては調整の難航も予想される。

 冬柴鉄三国土交通相(公明党)が5月14日に、一つの都道府県内で完結する一級河川の管理権限を、原則的に国から都道府県に移譲する方針を表明したことは、地方分権への権限委譲の大きな一歩であると、マスコミは注目しています。
上記の読売新聞は、「分権改革に突破口」との大見出しを立てて取り上げました。一級河川の管理権限の移譲について、「1990年代後半の『第1次分権改革』で実現できなかった『超難関テーマ』の一つだ」と解説した上で、「冬柴国交相の今回の受け入れ方針は、画期的な節目となりうる」と報じました。
また、5月15日付の建設通信新聞は、国交相の表明が全国知事会・地方分権推進特別委員会の会合で報告されたことを報じ、同委員会の山田啓二委員長(京都府知事)が「『固い扉が少しずつ開き始めた』と述べ、歓迎する意向を示した」ことを紹介しました。
 109水系ある一級河川のうち、該当するのは53水系。これまで国土交通省の8地方整備局や北海道開発局が管理してきましたが、関係する国交省の職員と財源も一体で都道府県に移すことになります。河川法は一級河川の管理費を原則として国が、二級河川の管理費を都道府県がそれぞれ負担すると定めていますが、移譲後はいずれも都道府県が負担することになります。
 なお、茨城県内の一級河川は、久慈川、那珂川、利根川の3河川ですが、いずれも複数の県をまたぐ河川のため委譲の対象にはなりません。