クラスター爆弾禁止条約案を採択 日本も同意
産経新聞(2008/5/30)
 5月30日、アイルランドの首都ダブリンで、クラスター弾禁止条約を採択した各国代表(共同) クラスター(集束)爆弾禁止条約締結を目指す「オスロ・プロセス」の国際会議は30日、電子式自爆装置などを備える「最新型」を除き同爆弾を全面禁止する議長案を採択して閉幕した。12月にノルウェー(オスロ)で署名式が行われる。態度を保留していた日本政府は同日になって受け入れを表明。条約発効後8年以内に保有する同爆弾を全面廃棄することになった。
 日本の交渉筋によると、12日間に及んだ会議の争点は(1)例外を不発弾率が極めて低い「最新型」にとどめるか「改良型」まで広げるか(2)廃棄までの移行期間を設けるか(3)同プロセスに参加していない米国との共同作戦が可能か−の3点。
 日本は保有する4種の同爆弾のうち、機械式の自己破壊機能などを備えた榴(りゆう)弾砲を残したかったが、例外は電子式の「最新型」に限られたため廃棄対象になった。現有爆弾の全廃課程で生じる「防衛上の空白」を埋める移行期間も認められなかった。
 北大西洋条約機構(NATO)に加盟する英仏独と日米同盟を結ぶ日本が足並みをそろえた共同作戦条項については、「非締約国との軍事協力・作戦に関与できる」との規定が盛り込まれた。日本政府の交渉筋は「米国の理解は得られる内容」と成果を強調した。
 日本政府が一転して条約案に同意したのは、福田康夫首相の決断があった。オスロ・プロセスに参加した以上、日本として、人道上の観点から国際的に孤立するのは望ましくないとの判断が背景にあった。首相は23日、首相官邸を訪れた公明党の浜四津敏子代表代行らに「踏み込んだ対応が必要だ」と明言していた。
 首相は議長案を採択した後の30日夕、首相官邸で記者団に対し、「関係者が話し合った結果そうなったから、よかったと思う」と述べた。オスロ・プロセスに参加していなかった日本の同盟国・米国に対して日本は、「専守防衛」の原則から、日本のクラスター爆弾の使用は「国内の問題になる」(外務省筋)という形で理解を得た。

公明党の強い働きかけ、福田首相の決断を促す
This image or file is a work of a U.S. Air Force Airman or employee, taken or made during the course of the person's official duties. As a work of the U.S. federal government, the image or file is in the public domain. クラスター爆弾は米軍が開発した兵器で、1発の親爆弾から複数の子爆弾がサッカー場2〜3面の広さで飛び散り、人々を無差別に殺傷する。かつて日本の本土空襲に使われた焼夷弾もその一種といわれています。
 この兵器の残虐性は、投下された時だけにとどまらない。子爆弾が不発弾として地上に残り、「悪魔の兵器」と呼ばれる対人地雷と同じように、半永久的に人々の命を狙う。国際非政府組織(NGO)の調査によると、死傷者の98%が民間人、30%近くが何の罪もない子どもたちです。
 2001年のアフガン戦争や2003年のイラク戦争は言うに及ばず、1990年の湾岸戦争や99年のコソボ空爆、さらには59年から75年まで続いたベトナム戦争でも大量に使われ、残った不発弾による犠牲者は今も絶えません。
 有志国の決断によって始動したオスロ・プロセスの特徴は、クラスター爆弾が持つ、この非人道的な側面を重視している点にあります。事実、条約案にはクラスター爆弾の生産・使用の禁止だけでなく、除去や被害者支援にかかわる条文も盛り込まれています。米ロなどの抵抗で暗礁に乗り上げている「特定通常兵器使用禁止制限条約」(CCW)交渉を軍縮のみに焦点を絞ったプロセスとするなら、オスロ・プロセスは軍縮と人道の両面から迫る条約制定交渉と位置付けられます。
 日本は当初からこのオスロ・プロセスに消極的な態度を続けてきました。その背景には「米国への配慮」があるとされ、事実、外務省は「全面禁止や即時禁止は主要な生産国・保有国の支持を得られず、実効的でない」との姿勢を崩してきませんでした。
 また、「クラスター爆弾は専守防衛の最後の切り札」との防衛省の頑なな態度も、大きな壁となっていました。(この辺の主張は、産経新聞の記事「専守防衛に空白 クラスター爆弾全面禁止合意」(2008/5/29)に詳しく述べられています。ご参照下さい)
 「日本政府が一転して条約案に同意したのは、福田康夫首相の決断があった」との産経新聞の記述があるように、こうした閉塞した状況を一転させた福田総理に決断は賞賛に値します。さらに、そのきっかけを作ったのは、間違いなく「平和の党・公明党」であったことも事実です。
 慶應義塾大学の小林良彰教授は、クラスター弾禁止条約を採択への流れについて「公明党は太田代表をはじめ、浜四津代表代行、山口安全保障調査会長らを中心に、政府に対して、単に全面禁止に同意するのみならず、日本が世界をリードする役割を担うべきであると強く主張してきたが、それがようやく実現した格好である。 これまでにもクラスター爆弾による多くの犠牲者を出しているアフリカ諸国による第4回アフリカ開発会議(TICAD?)が横浜で開かれ、また今夏には日本で洞爺湖サミットが開催されることを考えると、これからの世界の中で日本が平和や人道支援、環境などの分野におけるイニシアチブを確保するに相応しい決断であったと考える。公明党が連立与党に参加したことによる明確な成果の一つとして記憶にとどめたい」たいとのコメントを公明新聞に寄せました。
 日本は今後、陸上、航空両自衛隊が保有する4種類のクラスター爆弾を8年以内に廃棄することが義務づけられます。防衛省によると、これまでの調達総額は約276億円にのぼります。専守防衛体制の再構築を図ると共に、国際協調を中心とした平和外交路線の強化が益々重い課題となります。
<クラスター>公明・浜四津氏ら、首相に禁止条約要請
毎日新聞(5月23日12時10分配信)
 公明党の浜四津敏子党代表代行と山口那津男党外交安保調査会長らが23日午前、首相官邸を訪れ、福田康夫首相にクラスター爆弾の禁止条約策定に向けて積極的に取り組むよう要請した。アイルランド・ダブリンで開会中の「オスロ・プロセス」の会議で、条約案作りが進められており、首相の「政治決断」を求めた。首相は全面禁止に向けて前向きな姿勢を見せた。
 19日に開会した会議では、子爆弾が目標を識別して爆破する「最新型」の取り扱いが焦点。独仏などが最新型だけを禁止除外とし、全面禁止に近い内容を主張する一方で、日本は不発率がより高い「改良型」も除外に含めるよう求めている。
 浜四津氏らは福田首相に対し、除外対象を可能な限り狭め、国際社会の流れをふまえて「全面禁止に向けてリーダーシップを」と要請。これに対し首相は「今一歩踏み込んだ対応が必要だ。軟着陸させるのでまかせていただきたい」と答えた。