最高裁大法廷が「国籍法」の規定を違憲と判断
参考写真 6月4日、結婚していない日本人男性とフィリピン人女性の間に生まれた子どもたちが日本国籍を求めていた裁判で、最高裁大法廷は、国籍法の規定を違憲と判断し、子どもたちの日本国籍を認める判決を言い渡しました。
 現状では国籍法の既定で、結婚していない日本人の父親と外国人の母親の間に生まれた子どもは、出生前に認知されれば、日本国籍を得ることができますが、出生後に認知された場合は日本国籍は得られないことになっています。国籍を取得するには、父母の結婚が前提となっていました。
 国籍制度には、親と同じ国籍を得る「血統主義」と、生まれた場所の国籍を得る「生地主義」があります。日本は血統主義を採用しており、単純な「血統」だけでなく婚姻関係という家族の結びつきを重視してきました。
 国籍法は、1980年の女性差別撤廃条約への署名を契機として、親のいづれかが日本国籍を有していれば、子どもの日本国政が認められるようになりました。
 この改正時に設けられたのが国政法3条1項で、両親の婚姻が子どもの出生の後でも、認知すれば国籍が認められるようになりました。しかし、婚姻関係が成立していない場合、認知されても日本国籍が認められない規定となっていました。
 主要国のうち、日本と同様に「血統主義」を採用しているのはフランス、ドイツ、イタリア、ベルギーなどですが、いずれも婚姻を要件とはしていません。
 今回の大法廷判決の中では、「家族生活や親子関係に関する意識の変化やその実態の多様化を考慮すれば、日本人父と外国人母の子が、両親の婚姻で日本との密接な結びつきを認められるというのは、現在の実態に合わない」と指摘しました。その上で、1.諸外国は婚外子への差別を解消したり、認知による父子関係成立で国籍を認めている、2.同じ婚外子でも、出生前に認知されていれば国籍が認められる、ことも違憲判断の理由として上げました。
次期臨時国会での「国籍法」改正を視野に検討
 5日、政府はこの最高裁の違憲判決を重く受け止めて、国籍法の改正を表明しました。鳩山邦夫法相は、この日の委員会で「親の事情で、子どもが不利益を被ることのないようにということ」と答弁しました。
 法務省は、問題となった結婚の要件をはずす一方、国内で出生し、国内で一定期間居住していることなど最高裁判決で触れられていた例示を含めて、国籍要件の検討を具体的に進める方針です。
 また、自民・公明の与党も含めて、次期臨時国会での法改正を目指した検討もスタートしました。