凍結した口座の残金を、被害者に返還するための手続きが簡単に
参考写真 振り込め詐欺の被害が今年に入ってからまた増えています。一時は「オレオレ詐欺」などがテレビで頻繁に取り上げられて世間に知られるようになり、被害も減ってきていたのですが、昨年の下期からまた増加していて、今年に入ってからは最悪のペースに転じています。今年の4月末までの被害件数は7836件。これは前年同期の1.6倍で、被害総額も1.7倍の111億8276万円に上っています。このような事態に対して、振り込め詐欺の被害に遭われた方を救済するための法律が昨年成立し、今年の6月21日に施行されます。
 金融庁によれば、全額が詐欺関連ではありませんが、昨年3月末時点で凍結口座は約17万件、金額は83億円あります。昨年1年間の被害総額251億円からすれば少額ですが、救済法の施行で少しでも被害が回復されることが望まれます。
振り込め詐欺被害者救済の手順
 これまでは、詐欺に使われた口座に残金があっても、被害者がそれを取り戻すには訴訟など面倒な手続きが必要でした。しかも詐欺に使われるのは犯人とは別名義の口座ですから、被害者は口座の名義人を特定し、裁判を起こさなければなりません。銀行としても、口座を凍結しても体裁上は違法な口座ではないということで、勝手に被害者にお金を返すことはできませんでした。そこで、新しい「振り込め詐欺救済法」では、被害者に負担をかけずにスムーズに返金ができる仕組みを作りました。
  • 振り込め詐欺にあった被害者は警察と銀行に通報し、口座を凍結してもらいます。
  • 銀行は凍結した口座の情報(口座名義人の氏名や口座番号など)を預金保険機構を通じてインターネット上で公告します。
  • 一定期間(60日以上)たっても名義人から申し出がなければ、名義人は口座の権利を失います。
  • 預金保険機構が、失権した預金から被害金の返還手続きが行われることをインターネット上で公告します。
  • 被害者は、公告後、一定期間(30日以上)のうちに銀行に申請し、被害者の認定を得れば、凍結口座から返金を受けられます。
  • 同じ口座に振り込んだ被害者が複数いる場合は、口座の残金を振り込んだ金額の比率に応じて分けることになります。
  • 返還を知らせる公告はインターネット限定のため、被害者が情報を見落とす恐れも十分にあります。このため、救済法では「被害を受けたと疑われる人」に適切な情報を伝えるよう銀行側に要請しています。
詐欺にあったら、すぐに通報を
 この法律は、訴訟不要で口座の残金を被害者に返金できるようにしたものですが、口座に残金が残っていることが条件です。犯人は詐欺が成功したらすぐに口座からお金を引き出してしまいますから、こちらも素早く行動しなければなりません。詐欺に気づいたらすぐに警察と銀行に連絡をして、振り込んだ口座番号を伝え、凍結してもらうようにしましょう。
 通報が遅れて、犯人が口座からお金を引き出してしまって残高がない場合は救済を受けることができませんが、それでもあきらめずに被害届けを出してください。犯人が捕まった場合に、刑を軽くしてもらうために、裁判で被害弁償を申し出る場合があるからです。これでお金が少しでも返ってくることもありますから、最後まであきらめてはいけません。
 最近の代表的な振り込め詐欺の手口をご紹介しておきますので、これに似た電話やメールなどがあった時は注意してください。
ATMを使った還付金詐欺
 税務署や社会保険事務所だと名乗り、「税金や社会保険を取り過ぎたので還付する」と電話をかけてきます。「ATMでお金を返します」といって無人のATMに誘導し、機械の操作に不慣れな被害者をだまして犯人の口座にお金を送金させてしまいます。「ATMをこちらが操作して、自分の口座にお金が振り込まれることはない」ということを憶えておいてください。また、今は金融機関に申し込めば、一日あたりの振込限度額を一定以下に抑えることができます。被害にあわれることが心配な方や高齢者のご家族は振込限度額を低く設定しておくことをお奨めします。
オレオレ詐欺はいろいろな役の人間が
 オレオレ詐欺とは、息子や夫を装い、交通事故を起こしたとか、電車で痴漢をして捕まったとか偽り、示談金などの名目で現金を振り込ませる手口ですが、これも最近は巧妙化しており、警察役や弁護士役など複数の人間が電話に出て、いかにも本当らしく演じて信じ込ませてしまいます。電話をかけてくるとき、まず「携帯の番号が変わった」などと言って、本物の家族と連絡を取らせないようにするので注意が必要です。
人の弱みにつけ込む融資保証金詐欺
 実在する金融機関名を使って「融資をします」と持ちかけてきます。偽のダイレクトメールや雑誌広告、折り込みチラシなどの場合もあります。「90日間無利息」「固定金利0.7%」「すぐに融資」など有利な内容に飛びついてしまうと、融資のための保証金を振り込むように言われます。もちろん融資の話は嘘。振り込んだら最後、連絡が取れなくなります。
若い人が被害に遭いやすい架空請求詐欺
 携帯にメールで架空のサイトの利用料金を支払うよう督促が来ます。「支払わない場合は裁判手続きをする。すぐに連絡をください」という内容に、驚いて問い合わせると犯人に個人情報を握られてしまい、恐喝や執拗な要求が繰り返されることになります。このようなメールが来ても、一切問い合わせをしてはいけません。ただし、少額訴訟制度を悪用して、本物の裁判所から書類が届く事例もあります。この場合は、裁判を無視していると支払いの義務が確定してしまいます。相手側には絶対連絡をしてはいけませんが、裁判所に問い合わせをして虚偽の申し立てであることを伝えてください。
(公明党ホームページ:2008/6/19掲載分を参照しました)
参考:預金保険機構「振り込め詐欺救済法」について