茨城県内では飼料用のコメを363.3ヘクタールで栽培
 穀物の国際価格の高騰が続き、コメの国際価格は昨年(2007年)10月にくらべて2.7倍に跳ね上がるなど、世界の食料事情は激変しています。
 反面、日本人の主食であるコメの需要は毎年減少し、その価格は下落の一途をたどっています。水田の約4割で生産調整が実施され、耕作放棄地の増大と共に、日本農業の行く末が心配されています。
 かたや畜産農家は、トウモロコシなどの飼料価格の高騰に音を上げ、転廃業に追い込まれています。国策ともいえる食料自給率の向上のためにも、生産調整に変わってコメを飼料用に生産しようという取り組みが進んでいます。
参考写真 昨年10月に設置された国の「販売を軸とした米システムのあり方に関する検討会」(座長:八木宏典東京農大教授)では、非主食用米の生産について、主食用米の農機・技術が活用できることから主食用米の生産コストの低減にもつながり、積極的に日本農業の柱として拡大していくべきだとの考えが出されています。非主食用米が軌道に乗れば、水田機能の最大限の活用が実現し、それは消費者にとっても利益になると指摘されています。
 米粉や飼料用米はこれまで輸入小麦やトウモロコシにくらべて価格差が大きくありましたが、最近の取引価格で比較すると価格差が縮まっており、米粉については食品業界の関心も高まってきました。検討会では米粉と飼料用米がそれぞれ小麦、トウモロコシ並みで供給されるための、生産・流通の仕組みや支援策が必要だと議論されています。
 非主食用米の内、飼料用米については20年産で10万ヘクタールの生産調整拡大を契機に各地で取り組みが進められています。
 主食用米の生産に比べて、単価の安い飼料用米の生産にあたっては、産地づくり交付金、新需要定着システム交付金、耕畜連係水田活用対策(ホールクロップサイレージの場合)、緊急一時金(生産調整面積拡大分)、飼料用米導入定着緊急対策などの名目で、補充金が加算されます。さらに、市町村も単独で助成を上乗せする事例もあります。
 茨城県内では、稲敷市や水戸市、大洗町など18市町でホールクロップサイレージを中心に363.3ヘクタールの面積で栽培が行われています。
 水稲を畜産飼料に利用する方法は、大別して二つあります。その一つが飼料米です。トウモロコシなどの代わりに、米を主原料として配合飼料を調製し、家畜に与えるものです。
 飼料米品種の条件は単位当たりの収穫量が多いことです。東南アジア原産の多収種に日本種を交配し、冷害やいもち病への耐性を持たせた品種が作られています。穂が長いため1本の穂に多くのもみが着生し、その数はコシヒカリの80〜100粒に対して、200〜300粒にも及びます。茨城県内でも栽培されている「モミロマン」は、水田10アール当たりの玄米収量で800キロ程度にもなります。さらに多肥栽培で生産性を高めることができ、最適な栽培をすれば1トン以上の収量も期待できるとされています。
 もう一つの利用の仕方が、ホールクロップサイレージ(WCS)です。飼料用イネをもみと一緒に茎や葉などもまるごと収穫し、牛の発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ:WCS)として出荷します。茨城県では、クサホナミなどが生産されています。WCS用の飼料用イネは、外国種に日本の多収種、耐倒伏種などを交配しさせ、品種改良されました。稲株全体が大きく育ち、もみだけでなく茎葉の量も多いのが特徴です。乾物全重で10アール当たり2トン以上の収穫量があります。ただし、WCSの栽培には、機械化への投資が必要という課題もあります。飼料イネは株全体を収穫してWCSにするため、コンバインベーラーやラッピングマシンという専用の機械が必要となります。収穫物の保管や搬送もコストが嵩みます。
 飼料用品種への転換は様々な利点があります。生産調整の制約を受けず、水稲栽培の施設や技術、経験が生かせる。先にも述べましたが、転作の奨励補助も受けられます。
 水田は連作障害が出ず、何百年でも耕作できる素晴らしいシステムです。地球環境にとっても重要で、雨水を保持し、川などへ大量に流れ込むのを抑える機能があります。地球温暖化防止にも、水田は大きな働きをしているといわれています。
 しかし、一度耕作放棄された土地を、水田へ戻すには多大な労力が必要です。飼料用に限らず、米粉やコメを使ったバイオエタノールなど、コメの新たな可能性を広げていくことが必要です。
(写真はホールクロップサイレージ)
参考写真