財政4指標県内44市町村調査
読売新聞(2008/9/28)
将来負担比率高萩市205%
参考写真 北海道夕張市のような財政破たんを防ぐため、地方自治体財政健全化法に基づき、今年度から各自治体に公表が義務付けられた四つの財政指標で、読売新聞社が県内44市町村を調査したところ、一般会計が負担する借金全体の規模を示す「将来負担比率」は高萩市が205.9%でワースト1だった。2位は境町の196.2%で、共に経営難の公社が財政悪化に拍車をかけている。
 財政健全化法は昨年6月に成立。07年度決算から「健全化判断比率」と呼ばれる4指標の算定と公表が義務付けられた。そのうち一つでも早期健全化基準を超えると、「財政再生団体」の一歩手前で、自主的な財政再建策が求められる「早期健全化団体」となる。ただ、県内44市町村で、国が定めた「早期健全化基準」に達した自治体はなかった。
■将来負担比率
 4指標のうち、公社や第3セクターなども含め、一般会計が負担する借金全体の規模を示す「将来負担比率」(早期健全化基準350%)の数値が最も悪かった高萩市は、市土地開発公社と市住宅公社が抱える債務計77億円の負担が大きい。77億円は金融機関からの借り入れで、債務保証や損失補償契約に基づき、最終的に市が返済しなければならない。市は公社清算に向けた作業を今年度からスタートさせているが、職員の基本給カットなど根本的な財源確保対策に追われている。境町も、経営が悪化している町開発公社と町土地開発公社を抱えている。
 逆に東海村は、県内で唯一、将来負担比率が「なし」と回答。低い順では、日立市(10.8%)、牛久市(12.6%)が続いた。東海村は、今年度財政力指数は1.853と県内トップで、改めて「超優良財政」が浮き彫りになった。同村は原子力関連施設などからの税収が多く、各種基金の積み立てが計約130億円ある。また、債務保証や損失補償している債務がある公社や3セクもないのが大きい。
■実質公債費比率
 自治体の収入に対する借金返済額の割合を示す「実質公債費比率」(早期健全化基準25%)は、五霞町が最も高く19.7%。次いで下妻市の19.3%、行方、筑西市が17.6%と続いた。18%を超えると、地方債発行に県の許可が必要になる。
 五霞町は、上下水道整備と小中学校の耐震化など大規模事業を起債で賄い、普通会計で約52億円の借金が残っている状態。町は「三位一体改革で地方交付税が減らされたことも大きい」としている。下妻市は、ゴミ、し尿処理などを行っている「下妻地方広域事務組合」の借金負担額が大きいという。主に施設建設費の借金で、今年度末、組合では約67億円の借金を抱え、下妻市だけで今年度7億1000万円を負担した。行方市は2005年9月の3町合併時に、一部事務組合だった環境美化センターの起債残高(当時41億円)を引き継いだのが影響しているという。
 一般会計の赤字状況を示す「実質赤字比率」、公営企業会計も合わせた「連結実質赤字比率」は、44市町村とも黒字で算定されなかった。

 地方財政健全化法は、全自治体に公営企業や第三セクターまで含めた四つの財政指標の公表を義務付け、深刻な財政状態に陥る前の早い段階で健全化を図る同法によって、自治体の財政改革が進められることを目的としたものです。
 財政健全化法は、これまでの再建法が(1)自治体の財政状況を定期的に公表する仕組みがない(2)基準が一般会計の単年度の赤字だけを対象にしている(3)破たんに至る前段階での健全化策が用意されていない――ことへの反省から生まれたものです。
 この制度では、すべての自治体に毎年、9月までに前年度の決算における四つの財政指標を公表するよう義務付けられます。公表される指標は、単年度の一般会計の赤字比率を示す「実質赤字比率」、国民健康保険や介護保険、公営企業も含めた「連結実質赤字比率」、一般会計が負担すべき公債(借金)の返済額の3年間の平均である「実質公債費比率」に加え、土地開発、道路、住宅供給の地方3公社や自治体が出資している第三セクターも含めた自治体が負担すべき額の合計である「将来負担比率」の四つです。これによって、自治体の負担はほぼカバーすることができます。
 この指標が一定基準より悪化した場合に自主的な「財政健全化計画」を策定し、議会の議決を経て公表、公認会計士の外部監査を受けながら健全化に取り組むのが第一段階。さらに悪化している場合には、国の同意が必要な「財政再生計画」を策定し再建に取り組む、という仕組みです。この枠組みが、自治体に財政状況を公表することを義務付けることによって、指定を受ける以前の段階での自主的な健全化努力を促すことに重点を置いています。
さらに住民と情報の共有を図る必要
 最初の公表となった2007年度決算の数値では、県内では「実質赤字比率」、「連結実質赤字比率」がマイナスとなった=赤字となった市町村はありませんでした。
 地方財政健全化法では、指標を算出した資料を閲覧できるように備え付けるよう求めているが、各自治体においてはさらに積極的に財政状況を住民に知らせる努力が必要です。少なくてもホームページ上で、4つの指標をわかりやすく説明することを望みます。
 また、2006年9月から、総務省は企業と同様に収支、資産、負債、さらに行政コストの状況を示す財務諸表四つを3年内に整備・公表するよう、地方自治体に要請しています。公営企業や第三セクターまで含めてバランスシートを公表している自治体は少数派であり、早急の改善が必要です。