民主党の小沢代表が9月21日の党大会で発表した重点政策について、その財源論のいい加減さを、公明党茨城県本部代表の石井啓一衆議院議員に語ってもらいました。以下、その内容をご紹介します。

参考写真 9月21日、小沢民主党代表は、党大会で政権構想を示し重点政策を打ち出しました。その財源を、民主党は、基礎年金・国民年金の全額税投入で6.3兆円、月26000円の子供手当て創設で4.8兆円、農家への戸別所得補償で1兆円、高速道路の無料化で1.5兆円、ガソリン税などの暫定税率廃止で2.6兆円など総額22兆円と試算した結果を公表しています。
 実際に22兆円で済むのか検証が別途必要ですが、仮に22兆円としても、一度きりではなく毎年毎年、巨額の財源が必要になります。しかし、民主党は、財源について一向に明確な説明をしようとしません。
 小沢代表は、「一般会計と特別会計を合わせた純支出212兆円のうち、約1割にあたる22兆円を政策実行財源に組み替える」と説明しています。212兆円という額を聞くと、その1割程度の削減は可能ではないかと思われます。しかし、その内容を精査してみると、財源の捻出はほとんど不可能なことがわかります。数字のマジックといわざるを得ません。
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総額212.6兆円のうち180.8兆円は義務的経費、残り31.8兆円からどのように22兆円を捻出するのか
 具体的に平成20年度の予算で検証してみます。一般会計と特別会計とを合わせた純支出は、確かに212.6兆円です。
 その内訳は、まず今までの国の借金の返済に充てる国債費が87.8兆円になります。これは、国債の償還費や利払い費の他、他の特別会計の借り入れの返済や借り換えの額であり、政策的に増減できる性質のものではありません。
 社会保障関係費が66.8兆円になります。年金、医療、介護、生活保護などの社会保障関係費は、高齢化の進捗により、毎年自然に増えこそすれ、減ることはここ当分考えられません。
 また、地方交付税交付金が15.4兆円になります。所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税の国税5税のうち法律で定められた一定割合は地方交付税に充当されます。また、各自治体は経費削減に努めているものの、地方の財政需要も高まっており、地方交付税を削ることは地方自治体にとって死活問題です。地方を重視すればとても削減できるものではありません。
 さらに、財政投融資10.8兆円も削減は難しい金額です。これは、地方自治体や中小企業関連の貴重な財源です。
 これらの3つの経費で合計は180.8兆円に及ぶことになります。
 残りの31.8兆円が、小沢代表のいう削減対象になるわけです。
 その内訳を列記すると、地方特例交付金(0.5兆円)、地方譲与税譲与金(0.7兆円)、文教及び科学振興費(5.3兆円)、防衛関係費(4.8兆円)、公共事業関係費(8.9兆円)、食料安定供給関係費(1.6兆円)、エネルギー対策費(1.1兆円)、恩給関係費(0.9兆円)、経済協力費(0.7兆円)、中小企業対策費(0.2兆円)、人件費などのその他経費(5.8兆円)、予備費(1.3兆円)となっています。
 この31.8兆円から、その3分の2以上に当たる22兆円を、どのように捻出するのでしょうか?
 誰がみても不可能です。もし、可能というならば、具体的にどの経費をいくら削減して捻出するかが明確に示されなければ、とても納得できません。民主党内でも前原副代表が「もう少し詰めないと納得していただける説明にならない」と党大会後に記者団に語っている姿が印象的でした。
 当面は特別会計の剰余金を活用したらどうかという意見もあるようですが、民主党の政策は期限を区切ったものではなく、毎年実施する政策であり、特別会計の剰余金の活用には限界があります。
 民主党の政策は、明確な財源が示されない限り、「幻の政策」、「まやかしの政策」と言わざるを得ません。