スーパー業界最大手のイオンは、2月19日、大型ショッピングセンターの出店計画を大幅に変更し、7つの施設の出店を取りやめる方針を明らかにしました。
イオンの出店予定地だった茨城中央工業団地 2011年に出店予定だった茨城県笠間市のSCは出店取りやめ、今年春に千葉県野田市に開業予定だったSCの計画も凍結します。
 千葉県木更津市、愛知県常滑市、奈良県大和郡山市、兵庫県伊丹市、福岡県大牟田市の5施設はSCのコンセプト見直しや工事の遅れなどにより、いずれも今年中のオープン予定を来年以降に延期すると発表しました。
 消費不振が深刻化する中、多額の開発費が必要なSCへの投資を抑制し財務基盤強化を図ることが目的。安売り小型店を軸にモデル事業を展開するものとみられています。
 イオンは平成21年2月期の連結決算が7年ぶりの赤字になる可能性があります。本業である物品販売部門の販売体制の強化が喫緊の課題となっています。
 一方、茨城県内で計画されていたイオンの出店計画は、笠間以外も大きく見直されると予想され、実質的には計画は白紙に戻ったと見るほうが適切かもしれません。
計画が新聞報道等で明らかになっているイオンの大型商業施設計画
イオン那珂新店計画
●計 画 地:那珂市菅谷寄居地区(国道349号と国道6号を結ぶ市道沿い)
●延床面積:約67,000m2
●敷地面積:約16ha
●土地利用計画(用途地域)の変更が必要で開発計画は不透明
イオン稲敷市出店計画
●計画地:稲敷市西代(国道51号と国道125号に画した地区)
●店舗面積:約43,000m2
●開店予定:不明
●敷地面積:約15.2ha
●予定地は優良農地であるため地目の変更は困難
龍ヶ崎市大型商業施設計画
●計 画 地:龍ヶ崎市馴柴町
●店舗面積:約31,000m2(イオン23,000m2,専門店8,000m2)
●開店予定:不明
●敷地面積:約15ha
●土地利用計画(用途地域)の変更が必要で開発計画は不透明
イオン常総市出店計画
●計画地:常総市水海道山田町,水海道高野町地区(国道294号沿い)
●売場面積:約43,000m2(2階建て)
●店舗構成:スーパーのジャスコを中心に,大型専門店,レストランなど
●開店予定:不明
●敷地面積:約14ha
●土地利用計画の変更が必要
(写真は、イオンの出店予定地だった茨城中央工業団地)
イオン出店断念 笠間の工業団地
読売新聞茨城版(2009/1/22)
県に2億7000万円支払いへ
 大型商業施設を全国展開するイオン(本社・千葉市)が、昨年から計画を進めていた茨城中央工業団地笠間地区(笠間市)への進出を断念したことが21日、わかった。急速な景気悪化の影響などを受け、工業団地を所有する県に進出辞退を伝えた。県に対し、約2億7000万円を支払う意向を示しているが、土地譲渡契約の締結や経済効果などを期待していた県や地元の笠間市にとっては大きな痛手で、大幅な軌道修正を求められることになった。
 進出が計画されていた工業団地の土地は約18ヘクタール。県が2007年11月から12月にかけ、土地最低単価を3万円(1平方メートル当たり)に設定して進出企業を公募し、翌年1月、4万5400円(同)を提示したイオンが進出予定事業者に決まった。
 工業団地は常磐道友部サービスエリアのスマートインターチェンジ(IC)に隣接しているうえ、北関東道の茨城町西ICからも近く、立地の良さが高く評価されていた。計画では、「イオンモール水戸内原」(水戸市)を上回る店舗面積約5万7000平方メートルの広域型複合商業施設が建設される予定だった。
 県の公募要領によると、進出予定事業者は優先交渉権を得るだけで、1年後を期限とする詳細な事業計画の提出を経て、譲渡契約を結ぶことになっていた。
 事業計画の提出期限は今月29日に迫っていたが、建築資材の高騰や世界的な景気低迷の影響で、イオンは採算が取れる計画策定ができないと判断。岡田元也社長が14日県庁を訪れ、橋本知事に辞退することを伝えた。契約に違約金の支払い条項は盛り込まれていなかったが、イオン側は、昨年4月から今年1月まで土地を賃借していたという想定で金額をはじき出し、県側に提示したという。
 イオンの担当者は読売新聞の取材に「経済状況があまりにも大きく変化し、テナントの出店などが見込めなくなった。進出辞退は例がないが、使用料相当の金額を支払うことで、誠意を示させてもらった」と経緯を説明した。
 県事業推進課は「非常に残念だが、今の経済情勢では致し方ない部分もある」と話しているが、純粋な土地の売却額だけで約81億円が見込まれていただけに、県にとっては大きな損失だ。県は今後、公募段階で進出希望を示していた別の企業と再度交渉する方針だが、景気が悪化する中、土地の売買契約を新たに結ぶまでには、相当な時間がかかる見込みで、難しい交渉を迫られる。用地取得に要した借入金の利子も膨らみ、県の厳しい財政をさらに圧迫することになる。

イオン木更津出店を延期
読売新聞千葉県版(2009/2/19)
 木更津市が推進する「みなと木更津再生構想」で、同市築地地区に大型ショッピングモールの建設を計画しているスーパー大手「イオン」は19日、2009年度内に予定していた出店時期を延期することを明らかにした。イオンは「時期については未定」としている。この構想を巡っては、同地区に大型娯楽施設の建設を計画していた不動産会社「ロジコム」(東京都東大和市)が既に撤退を表明している。
 この計画は、JR木更津駅西口の南西約3キロの一角で鉄鋼大手「新日本製鉄」の遊休地約40ヘクタールを商業地区に転用し、中心市街地と連携して集客を目指す大規模開発事業。その目玉となっているのが、「商業ゾーン」28・3ヘクタールに建設する「イオン」のショッピングモールだ。
 イオンによると、今年1月に明らかになったロジコムの撤退により、出店・集客に向けての基本構想の見直しが必要と判断し、延期を決定した。「撤退によって空いた場所に何が入るのか決まっていない段階で、出店はできない」(広報)としているが、撤退については否定している。

イオンモール:「一日も早く開業を」 経済情勢悪化で遅延−−大牟田市 /福岡
毎日新聞筑後版(2009/2/20)
 イオンモール(千葉市)が大牟田市に建設している大型ショッピングセンター(SC)の開業延期を受け、古賀道雄市長は19日、「撤退ではないので安堵(あんど)しているが、一日も早く開業してほしい」と話した。今秋の開業予定だったが、10年3月以降に延期される。
 同市岬町に建設中のSCは昨年夏、造成工事が始まった。市によると、今月初め、同社の担当者が市を訪れ「出店をやめることはない。工事は順調だが、経済情勢の悪化でテナントの出店調整に時間がかかり、工事の遅延はやむを得ない状況になっている。今後については改めて報告したい」と伝えていたという。
 古賀市長は「経済の悪化が製造業だけでなく、第3次産業まで波及してきたのを実感し、一日も早い景気回復を願っている。(イオンには)地元での雇用も期待しており、早く開業してほしい」と話していた。

イオン、伊丹西・大和郡山SC開業を10年春に延期
NIKKEI-NET Kansai(2009/02/20)
 イオングループが全国7カ所で、大型ショッピングセンター(SC)の開業を延期・凍結する方針が明らかになった。このうち近畿では、2009年秋に開業予定だった奈良県大和郡山市の大和郡山SCと兵庫県伊丹市の伊丹西SCについて、それぞれ「10年春ごろに開業を延期する」と自治体関係者に伝えていることが分かった。
 大和郡山SCについて、奈良県商業振興課は「09年11月の開業予定だったが、10年にずれ込むと伝えてきており、10年春ごろの開業と受け止めている」という。同SCは規模を縮小する計画だが、大規模な縮小にはならないと県はみている。
 兵庫県都市計画課は「伊丹西SCの開業は10年春ごろに遅れると伝えてきた」と話す。同店は大店立地法の届け出をしていない。開業は届け出から8カ月以降になるが、届け出がいつになるかは分からないという。伊丹市内にはJR伊丹駅前にイオングループの大型SCがあるが、伊丹西SCは宝塚市などからの集客ですみ分けするという。