定額給付金支給日に税滞納者の預金差し押さえ 対馬市など
朝日新聞(2009年4月1日)
 長崎県対馬市が、定額給付金の支給開始と同時に、税金滞納者の預金の一斉差し押さえを始めたことがわかった。市税務課は「通常の差し押さえ業務だが、支給のタイミングも考えた」としている。市には「給付金が入ったのに、なぜだ」といった抗議電話が殺到したという。
 市によると、定額給付金対策本部が3月30日、約2200件分を金融機関に振り込んだ。一方、税務課は同日から全島一斉の預金差し押さえに着手した。全島一斉は今年が初めて。担当者は給付金支給先を知らないまま、滞納者をランダムに抽出して差し押さえているという。
 税務課によると、市税や国保税の滞納額は年々増え、2月末現在で19億円に上る。担当者は「児童扶養手当などと違い、定額給付金は差し押さえ禁止の対象にはなっていない」と話す。
 総務省は市町村に対し、「家計への緊急支援が第一の趣旨で、給付金そのものを差し押さえるのは趣旨に合致しない」と指導してきた。ただ、今回のケースについては「法的には禁止されておらず、市町村がどう判断するかだ」ともしている。
 同県江迎町も30日、連絡が取れなかった滞納者の口座から、少なくとも1件、同じ日に振り込まれた定額給付金を含む預金を差し押さえた。町税務課は「定期調査をして口座にあった預金を差し押さえたところ、給付金が含まれていた」と説明している。

参考写真 定額給付金を含む預金を対馬市が差し押さえしたことに、マスコミ各社が批判的な記事を掲載しています。3月1日には、鳩山邦夫総務相も「正直言って困る。生活に困っている方の生活支援や景気刺激というのが、給付金の趣旨だから、やってほしくなかった」と述べたと報道されています。さらに、「対馬市は市税の徴収率が長崎県内でワースト1の可能性がある。一生懸命やらないといけないという思いがあり、口座を差し押さえたのだろう」と指摘。その上で「全世帯で喜んで受け取ってもらい、使ってもらうという趣旨には合わない。残念だ」などと語ったと伝えられています。
 しかし、ここで明確にしなくてはいけないことは、定額給付金自体を対馬市は差し押さえしたのではないということです。定額給付金が振り込まれた口座を差し押さえたということを厳密に区別して考えるべきです。その意味では、朝日新聞の記事は、正確さに欠くと言わざるを得ません。「担当者は『児童扶養手当などと違い、定額給付金は差し押さえ禁止の対象にはなっていない』と話す」との担当者のことばは、定額給付金自体を差し押さえたことと預金口座を差し押さえたこととの区別を、読者にわかりづらくしています。
 現在、どの市町村でも徴税体制の強化を行っています。プロジェクトチームを作って、徹底的に滞納処理を行っています。茨城県では、徴税専門の第三セクター(茨城県租税債権管理機構)を立ち上げて、市町村から債権を買い上げて、徴税を専門に行っています。市町村には、税の自力執行権が与えられています。この自力執行権には怖いくらいの権限があります。
参考写真 差し押さえをする場合、給与そのものを差し押さえをすると、禁止額が設定され、最低条件でも12万円以上の金額を本人分として残し、その残額にしか差し押えの効力は及びません。まして、定額給付金自体は、差し押さえの対象としないように総務省は指導しています。
 しかし、預貯金にはこのような制限がないため、差し押えを行った時点で残っている金額については、全額差し押えることが可能です。したがって、給与を口座振込みにしている場合は、給与そのものを差し押えるよりも、給与支払日にあわせその口座の残高を差し押えるほうが有効です。反面、口座そのものは差押えが出来ないので、差し押えが成立して1分後にその口座に入金があったとしても、その金額には差し押えの効力は及びません。
 こうした点を整理して考えると、定額給付金の支給日と差し押さえの執行日がたまたま同日に重なってしまったと、考えるのが妥当なのかもしれません。定額給付金の支給は、1週間に一度程度、随時行っていくはずですので、その初回が重なってしまったのでしょう。徴税部門と定額給付金の支給部門との摺り合わせが欠けたのかもしてません。やはり、定額給付金の意義を重視して、差し押さえをするにしても、給付日をはずして執行すべきでした。
 その上、対馬市は、生活保護世帯の預金口座も差し押さえるという不手際をしています。徴税の専門家に聞いてみると、「差し押さえをする際には、最低でも3ヶ月程度の預金口座の動きを事前に調査するものです。その準備には、多大な労力をかけます。件数が不明ですが、全島一斉の差し押さえ執行というのは、あまりにも乱暴のような気がします。
ミスで生活保護者も差し押さえ 定額給付金で対馬市
長崎新聞(2009/4/3)
 対馬市が三月三十日の定額給付金支給開始日に市税滞納者を対象に一斉差し押さえを始めた問題で、同市が除外対象としていた生活保護者の預金口座を誤って差し押さえていたことが二日、分かった。本人が市に申し出た。事務処理ミスが原因。市は差し押さえを解除して定額給付金が含まれた預金全額を返還する予定。
 税務課によると、差し押さえられたのは厳原町内の五十歳の男性。二〇〇七年度以前の繰り越し滞納があったため差し押さえの対象になったが、昨年七月から生活保護を受けていたことを見落としていたという。口座には預金のほか、一人分の定額給付金一万二千円が振り込まれていた。
 地方税法第一五条では、滞納処分で生活を著しく窮迫させる恐れがあるとき、地方団体の長は滞納処分の執行を停止することができると規定。これに基づき、市は生活保護者を差し押さえ対象から除外していた。
 男性は交通事故で足が悪くなって働けず、生活保護を受けていた。「滞納している自分が悪いが、働けないので払いたくても払えない。市は事務をしっかりしてほしい」と話している。
 税務課は「チェック不足で市民に迷惑を掛けてしまった。申し訳ない」とコメントした。
(写真は、対馬市の観光スポット)