負担金の明細が示されず、橋本知事「法解釈上も問題」
参考写真 4月6日、茨城県の橋本昌県知事は定例の記者会見で、国土交通省の「常陸河川国道事務所」などの出先機関の庁舎改修費が、国直轄事業の地元負担金に含まれていたことから、平成20年度分の負担金の一部を支払い留保していることを明らかにしました。
 常陸河川国道事務所は老朽化と道路・河川部門の統合に伴い、県庁近くの水戸庁舎隣に地上3階建ての新庁舎建設を2006年度から進めています。既に、旧庁舎の裏側に鉄骨の組み上げが始まっており、完成は今年12月の予定です。
 井手よしひろ県議が、県土木部に確認した事実関係は、水戸庁舎の改修の要する費用は総額21億6000万円。この内、茨城県の負担分は、約3分の1の7億2000万円となっています。平成20年度分9億7000万円の内、3億2000万円が、他の直轄事業負担金と一緒に、県に請求がされています。
 また、この水戸庁舎分以外にも、利根川水系砂防事業及びダム統括管理における茨城県の負担分として、長野原出張所改修工事(群馬県長野原町)、片品出張所改修工事(群馬県片品村)、薗原ダム管理支所改修工事(群馬県沼田市)の3庁舎の改修にも茨城県分の負担が含まれていたことも判明しました。(金額は明らかになっていません)
参考写真 通常、国が直接行う大規模工事(国の直轄事業)には、地元の都道府県の負担が発生します。道路やトンネル、橋梁、河川、ダム、海岸、港湾などの建設工事は、工事金額の3分の1、維持・整備などに使い経費は全体費用の45%が地元負担額です。平成20年度の茨城県の地元負担額は、総額で221億1747万円となっており、今回、茨城県が留保している金額は、47億6438万円余りです。
 新庁舎建設予算は、常陸河川国道事務所管轄の国道、河川の整備費の中に組み込まれ、今まで県には説明が一切ありませんでした。橋本知事は6日の記者会見で「そういった庁舎改修費用まで直轄事業負担金で一部負担しているということについては、3月18日に知ったところ」と説明、直轄事業負担金について強い不信感を露わにしました。
 国交省によると、国道や河川工事の現場事務所の改修については、道路法と河川法で自治体に負担を求めることができ、河川国道事務所は事業実施に必要な現場の事務所であり、自治体の負担は法的に何ら問題がないとしています。これに対し橋本知事は、「工事現場の事務所ならともかく、河川国道事務所は普通の庁舎ではないか。県の土木事務所庁舎(の営繕費)は国の補助金対象外なのに、河川国道事務所を負担金の対象にするのはおかしい」と述べ、国交省の見解に反発しています。
知事定例記者会見における発言要旨
(2009/4/6)
茨城放送(幹事社):国土交通省は、出先機関の建て替えなどで、地元に説明しないまま費用の一部を負担させたというのが話題になっていましたが、県内でも1、2カ所あると聞いていますが、この問題について知事の考えをお聞かせください。
知事:これは我々も実は全く知りませんでした。この負担金は、道路直轄事業負担金と治水直轄事業負担金の一部に含まれていたところでございまして、私どもとしてもそういった庁舎改修費用まで直轄事業負担金で一部負担しているということについては、3月18日に知ったところでございます。
 そこで、この中身がどういうものかということについて詳細な説明を求めたところでございますが、まだはっきりした説明はいただけておりません。私どもとして一番問題だと思っておりますのは、現在、国が整備しております河川国道事務所でございますが、これは県の土木事務所と性格的にどう違うのかということであります。現場事務所の場合には直轄事業負担金の対象にすることについてはこれを考慮する余地はあるのだろうと思いますし、また、県の方でもそういうものについては補助事業とされております。そういった点からいいますと、現場事務所はともかくといたしまして、県の土木事務所の庁舎については全く補助対象外でありますので、国の河川国道事務所を直轄事業負担金の対象にするのは極めておかしいと考えております。
 先ほど申し上げましたように、現在、詳細説明を求めているところでございますので、3月31日を期限とする直轄事業負担金の請求が約48億円来ているところでございますが、当面、この請求については支払いを保留しているところでございます。今後、国がどういうふうに説明をされるのか、法律上の文言だけで見ますと、直轄事業負担金の対象と補助事業の対象は、本来同じものでなければいけないわけでございますので、国の河川国道事務所と県の土木事務所、我々が見ると性格的にはだいぶ似ているのではないかと思っております。
 4月8日に国土交通大臣との協議が予定されているところでございますので、そういった場におきましてもいろいろな意見の交換を行っていきたいと考えております。
茨城放送(幹事社):現時点では、概算でも、どれぐらい負担させられているのかはわかっていないというところでよろしいのでしょうか。
知事:金額につきましては、今申し上げた48億円というものは様々な事業の経費を含んでおりますが、庁舎の建設費につきましてはトータルで21億円余と聞いているところでございます。昨年度(20年度)分としては9億円余が入っておりまして、県に負担金として求められているのは3億円余でございます。
NHK:先ほどの負担金の話なのですが、保留している48億円というのは平成20年度分のことですよね。これは国からの説明がまだきちんとされていないので保留しているという意味合いですか。今後どう対応される予定ですか。
知事:皆さん方ご存知だと思いますが、我々の方に請求書という形で来るものは、詳細が全然わからない格好になっております。それで、その中身がどうなっているのかということなどにつきまして説明を求めておりますが、まだまだ我々として納得できる状況になっておりません。中身がある程度わかるにしましても、今度は法令上の条文との関係でどのように解釈していくのか。法令上は同じ規定にもかかわらず、国の庁舎は地方負担の対象、県の庁舎は補助対象外と取り扱いが異なっているのです。国の河川国道事務所を現場事務所的に捉えられるのかどうか。我々の土木事務所と同じではないか。国の方では地方整備局の庁舎建設まではそういう発想(地方負担の対象外)になっているのですが、それぞれの事務所については、現場事務所的な位置づけで事業に関連させて地方負担を求めてくるという形になっているのですが、これはちょっと行きすぎではないか。河川国道事務所などは普通の庁舎ではないかという疑問が非常に強いものですから、そのことについての国の考え方をきちんと整理してもらいたいという申し入れをしております。
 これについては全国的な課題でもありますから、8日の国土交通大臣との協議の場でも当然話題になってくると思いますので、そういう場を通じて全国的な解決策も模索していく必要があるのだろうと思っています。
NHK:もし国の説明に県側として納得できないと。
知事:今の段階では、先ほど申し上げたように、条文上同じになっているのに、何で県の土木事務所と河川国道事務所の取り扱いが違っているかということについては十分な説明をもらっているとは思っておりません。
NHK:従前の知事のお考えどおり、払わないということではないということなのですか。
知事:当面留保をしておりますが、法律的には払わなくてはいけない状況になっておりますから、これを止められるかどうかということはこれからの問題であります。私は、その結論を出す前に、今度の国土交通大臣との協議の場がせっかくあるわけですから、全国一律の対応をしていかないとこれもおかしなことになりますので、この場で早急な解決策を求めていくべきだろうと思っています。

「負担おかしい」 茨城県が国への48億円支払い拒否
産経新聞(2009/4/7)
 国の公共事業費を地元の自治体が一部負担する「国直轄事業負担金」制度で、茨城県が昨年度の負担金総額約221億円のうち、約48億円の支払いを保留していることが6日、分かった。橋本昌知事が同日の記者会見で明らかにした。負担金には国土交通省の出先機関「常陸河川国道事務所」(水戸市千波町)の建設費が含まれており、橋本知事は「現場事務所ならともかく、河川国道事務所を負担金の対象にするのはおかしい」と批判。8日に予定されている金子一義国土交通相との協議でこの問題に言及する考えを示した。
 橋本知事によると、負担金に同事務所の建設費が含まれていたことは、先月18日に知らされたという。知事は会見で「全く知らなかった」と説明した。
 道路法と河川法では、国が行う道路や河川整備などの公共事業に対し、工事費の3分の1、維持管理費の45%を地方自治体が負担する仕組みになっているが、国の出先機関の建設費や改修費なども含むことは、最近になって明らかになったばかり。橋本知事は「(国から)はっきりした説明をいただけていない」と不満を示した。
 県によると、同事務所は、常陸太田庁舎(河川)と水戸庁舎(道路)の老朽化と統合に伴って建設されており、今年度中に完成する予定。事業費は総額約21億6000万円。このうち7億2000万円が県の負担分とされ、18年度から4年間で支払うことになっていた。昨年度分は約3億2000万円。
 県はすでに、昨年度の負担金総額のうち、173億5092億円を納付済み。先月末が残り約48億円の支払期限だった。
 国交省によると、出先機関の建て替えなどで、地方から負担金を集めている庁舎は全国に44カ所あり、全体の事業費は約389億円に上る。このうち、118億円が地方の負担分で、昨年度分は29億円という。
 橋本知事は「土木事務所の庁舎については(国の)補助対象外。河川国道事務所について直轄負担金の対象とするのは極めておかしい」と批判。「全国的な解決策を模索していく必要がある」として、国に説明を求める方針を示した。