太陽光発電「10年で回収」 経産省試算、電力価格30円上昇も
日本経済新聞(2009/4/24)
 経済産業省は4月24日の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)新エネルギー部会で、来年から始める太陽光発電の固定価格買い取り制度を導入した際、国民負担がどの程度になるかについての試算を示した。初年度は電力会社の買い取り総額が年800億〜900億円になり、その分を転嫁すると、標準家庭の電力価格は月当たり約30円上昇する。5〜10年後には太陽光の電力が増え、50〜100円程度値上がりする見込みだ。
 一般家庭が太陽光発電システムを導入した場合に、どのくらいの期間で導入費用を回収できるかの試算も提示。新築住宅に3.5キロワットのシステムを185万円で設置した場合、買い取り制度や国や自治体の補助金などを使うと、10年程度で回収できるという。
 買い取る電力を余剰分だけでなく、全量にすべきだとの声があることについては、一般家庭の電力価格への転嫁額が増えるなどの理由で否定的な考えを示した。

 先のブログ「太陽光発電、15年でイニシャルコストが回収できる買電制度に」で指摘した太陽光発電の買い取り制度の見直しが、具体化してきました。
 経済産業省は、家庭の太陽電池などで発電した電力を電力会社が買い入れることを義務化し、同時に買い入れ価格を現在の約2倍にする新制度を、来年からスタートさせる方針です。東京電力などの電力会社が、家庭から買い上げる電気の単価を倍増し、その負担増分は、広く需用者の電気料を引き上げて対応することになります。
 この制度と、今年1月から復活した国による補助金制度があいまって、太陽光発電が大きく普及していくことが期待されています。
 現在、家庭で太陽光などにより発電された電気が余った場合、電力各社は各家庭に売る場合と同額の1kWh当たり23〜25円程度で自主的に買い取っています。新制度では買い上げ価格を当面、現行の2倍に引き上げるとともに、10年間にわたって買い取りを義務付けします。
 自家用の太陽光発電システムは1kWあたり約70万円掛かるといわれています。平均的な家庭では、3.5kWの機器を乗せていますので、設備の整備に250万円程度かかることになります。今年1月から国の設置補助が復活し、1kWあたり7万円の補助が受けられるようになりました。3.5kWならば24万5000円の補助金が出ることになります。その上に、都道府県や市町村の上乗せ助成もあるところもあります。ちなみに日立市では、1kWあたり3万円上限は10万円の助成金を創設しますので、助成金の合計は34万5000円となります。
 この装置で、現在は年間約8万円程度の電気代相当の発電量があります。20年程度の耐用年数があるとされており、約160万円の電気代を節約できることになります。今回の補助金は1kWあたり7万円ですので、3.5kWならば24万5000円の補助金が出ることになります。
 電力会社の買取価格が倍増されることによって、10年程度で当初の設備費が回収できることになります。
 反面、この太陽光発電の普及策には一般の需要家(一般家庭や事業者)の負担が増えることも事実です。
 産業経済省の試算では、「標準家庭の電力価格は月当たり約30円上昇する。5〜10年後には太陽光の電力が増え50〜100円程度値上がりする見込み」とされています。こうした負担増を国民に説明し、納得していただくことも行政や政治の重要な責任です。