小沢一郎前代表の突然の辞任に伴う民主党代表選が5月16日に行われ、鳩山由紀夫新代表が選出されました。そもそも、鳩山新代表は「一蓮托生(いちれんたくしょう)」という言葉をご存じなのだろうか?鳩山氏は西松建設巨額献金事件の発覚以降「一蓮托生」と言って小沢氏を支えてきた。辞書(大辞泉)によると一蓮托生とは、「結果はどうなろうと、行動や運命をともにすること」とある。
参考写真 そもそも、小沢前代表と行動や運命をともにすべき人が、ぬけぬけと代表選に立候補し、当選してしまうところに、民主党の限界があるように思います。
 さて、小沢前代表をめぐる政治資金問題について、国民の多くが「体制が変わっても、その説明責任を免れるものではない」と見ています。小沢氏がなぜ西松建設から過去十数年の長きにわたって総額約3億円もの巨額献金を受け取らなければならなかったのか、との疑問は、全く解明されていません。建設業界からの巨額献金という古い自民党の金権体質を思わせる問題は、「やましいことはない」と強弁することで、すまされる問題ではありません。
 党首選に至る過程の中で、民主党として「政治とカネ」に明確なケジメをつけられなかったことも踏まえて、17日付の各紙の社説では、一斉に厳しい指摘が並びました。産経新聞は、「鳩山氏は小沢氏を要職に起用する考えを示しているが、代表選前には『小沢氏とは一蓮托生』と語っていた。小沢氏が西松建設からの巨額献金の使途などを説明しない限り、国民は不信感を持ち続けよう。鳩山氏は違法献金事件を受けて設けた『政治資金問題をめぐる政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会』で小沢氏に説明を求める考えは示しているが、この問題を総括しない限り、小沢氏の『傀儡(かいらい)』という見方は消えないだろう」と述べています。
 「政治とカネ」の問題で国民の理解を得られる説明責任を尽くすことができるか、新民主党としての自浄能力が問われていると自覚すべきです。
 政権担当能力という点に関して、国民が最も不安視しているのは民主党の政策だ。代表選の過程で、鳩山新代表は農家への戸別所得補償や子ども手当など、従来の民主党の公約を大筋踏襲する考えを示しましたが、これらの政策に対しては、各方面からすでに財源問題などで多くの疑問が呈されています。
 また、海上自衛隊によるインド洋での給油活動や日米同盟の重要性をめぐる考え方など、民主党は、安全保障政策でも一枚岩とはとても言えません。
 次期衆院選は「政権交代」がテーマではなく、「政権担当能力」が問われる選挙に他なりません。
 厳しい経済情勢の下、鳩山新体制の政権担当能力に関して、まずは、今年度補正予算案の審議が試金石となります。今週には、13日に衆院を通過した補正予算案の参院審議が始まります。
 政局優先の政治が経済の混乱を深める事態はあってはなりません。その意味から、最優先課題の経済危機を乗り越えるための補正予算案の早期成立こそ、国会の責務であり、社会の要請です。新民主党が補正予算案とその関連法案に責任ある対応をとれるかどうかを注目していきたいと思います。
 新体制の民主党には、鳩山新代表が党首討論の開催にも前向きの姿勢を示していることからも、野党第1党として、「政権交代」を声高に叫ぶだけでなく、日本の苦境打開に向け、政策を戦わせる建設的な国会論戦こそが強く期待されているのです。