衆院選の大きな論点の一つである子育て支援策。公明党と自民党が主張する「児童手当」と民主党の「子ども手当」は、どこがどう違って、どちらが良いのか論点を整理してみたいと思います。
児童手当を作り、拡充してきた公明党
参考写真  今、「児童手当と言えば公明党」との認識が広く定着しています。その淵源は40年前にさかのぼります。
  1967(昭和42)年12月の千葉県市川市議会定例会。「子どもたちの健全な育成のため、早急に実施すべきだ!」。公明党議員の凜たる声が響き渡りました。公明党が、自治体独自の制度として児童手当導入の口火を切った瞬間です。同じ頃、新潟県三条市でも市議会公明党の主張が市当局を動かしていました。
  翌年4月、国に先駆けて両市は、第4子以降に月額1000円を支給する児童手当をいち早くスタートさせました。
 これを機に児童手当の実現を求める公明党の取り組みは全国に波及。国会では68年、公明党が他党に先駆けて児童手当法案を提出。ついに72年1月、国の制度としての児童手当が実現しました。
  その後も政府は何度となく児童手当の縮小、廃止を画策しました。だが、その度、公明党は児童手当の存続と拡充を訴え、制度を守り育ててきました。
 99年2月、「欧州の制度を参考に新児童手当制度を検討する」ことを自民との間で合意。そして同年10月、公明党は連立政権に参画。政権合意書とともに交わされた政治・政策課題合意書に、政権与党の子育て支援策の柱として「児童手当の拡充」が明記されました。
 その後、4度にわたる拡充を経て、児童手当の支給対象は5.4倍の1310万人にも広がっています。
 現在は、第1子と第2子には毎月5000円、第3子移行は10,000円が小学校卒業まで支給されています。乳幼児加算として3歳未満は、第1子から10,000円となっています。
公明党「児童手当」拡充のポイント
・対象年齢を中学校卒業までに拡大する
・将来的には支給金額を第1子、第2子1万円、第3子移行2万円に倍増する
・必要な財政規模は、中学3年生の拡大でプラス2,240億円、額の倍増でプラス1兆1,560億円程度。児童手当の倍増は、税制の抜本改革時に導入を検討する。

民主党「子ども手当」創設のポイント
・0歳から中学卒業まで1人あたり月額2万6,000円、年額31万2,000円を支給
・「子ども手当」に必要な所要額は5兆3,000億円
・財源は所得税の扶養控除(0〜15歳)や配偶者控除を見直すなどで充当。それでも残りの3,9兆円はどのように捻出するのか財源不明
・2005年マニフェストで、民主党は1万6,000円の手当額といっていた。小沢代表の一声で2007年マニフェストには2万6,000円と2倍に引き上げられる。2009年マニフェストには、初めの1年間は半額の1万3,000円と掲載されている
【子ども手当の問題点−1】増税世帯=負担増の世帯が出てくる
 財源として、配偶者控除、扶養控除(一般)を廃止するので、子どものいない専業主婦世帯などは増税となります。
 子どものいない平均的年収の専業主婦世帯や一番お金のかかる高校生・大学生等の子どもを持つ世帯は単純増税(適用税率10%)配偶者控除の廃止で年額3万8,000円の増税となります。
 初めの1年間は0〜2歳の子どもの世帯は実質増税(適用税率10%)配偶者控除+扶養控除(一般)で年額7万6,000円増税。児童手当の廃止により、年額12万円ももらえなくなります。つまり負担増の合計は19万6,000円。それに対して、子ども手当は年額15万6,000円となるので、差額で4万円の負担増となってしまいます。
【子ども手当の問題点−2】5.3兆円の財源が不明
 子ども手当の明確所要額は年間5.3兆円。配偶者控除(0.6兆円)・扶養控除(0.8兆円)を全廃しても増収分は1.4兆円。児童手当からの転換分約1兆円。差し引き2.9兆円はどのように捻出するのでしょうか。
【子ども手当の問題点−3】企業負担が無明確
 社会で子どもを支えるといいながら、企業の負担については責任逃れに終始しています。
 現在の児童手当は、社会全体で子どもを支えるとの観点から、企業にも一定の負担をお願いしています。民主党も子ども手当は社会全体で支援するといいながら、企業の負担は免除しています。
【子ども手当の問題点−4】児童手当の拡充に反対したのは民主党だけ
 公明党の主張で進めてきた「児童手当」拡充のための法改正(4回)に、一貫して反対し続けたのは民主党。「児童手当」では反対。名前を変えて「子ども手当」ならば賛成。現場の子育て世帯の負担感がある中で、筋が通らない。結局は政策よりも政局なのでしょう。そんな民主党が提案する「子ども手当」です。本気で実現する気があるのかは疑わしいものです。