'09衆院選・各党県代表に聞く<3>
庶民の生活を守り抜く

茨城新聞(2009/08/21)
■公明党・井手義弘県本部幹事長
*今回の選挙の位置付けは。
 庶民の生活を守る、生活を守り抜く。「政権交代」という言葉に踊らされずその先を考えてほしい。政権担当能力があるのはどこか見極めてもらう選挙。財源があいまいな民主党のマニフェストが実行されたら日本は沈没、破綻(はたん)する。大変厳しい風が吹くが、信頼と実績の公明党または連立与党を選択してもらいたい。政治不信を一掃するのは公明。政治資金規正法の制裁を強化し、秘書など会計責任者が不正を行った場合でも議員が監督責任を取る形にする。
*具体的目標は。
 比例北関東の3議席目奪還と連立与党過半数。前回は北関東で過去最高の93万票ながら2議席に甘んじた。県内基礎票は16〜18万票だが、獲得票は20万票を超えてきた。保守層からの比例票が上積みされているのも事実。今回は県内23万票に挑戦する。
*自公の選挙協力は。
 1、2、3、4、6区の自民候補を推薦した。推薦が出なくても実質的な連携は進んでいる。連立が始まったころは「形」にこだわり、自民に街宣で「比例は公明」とか、ポスターの「比例は自民を小さく」とかある意味無謀なお願いをしたと冷や汗が出る思い。今回は形にとらわれては話にならない。背水の陣、赤壁の戦いだ。
*同日選となる知事選の対応は。
 衆院選優先。多選問題の考えに開きがあり、選挙区内の保守系も割れている。衆院選への悪影響を考えると議論自体ファジーにせざるを得ない。選挙区ごとの判断となる。小幡氏側は自民県連から推薦依頼が来たが、推薦団体が推薦を頼むのは本筋ではない。現職も政党支持は依頼しないと発言した。こちらが結論を迫られる相手は誰もいない。

参考写真 この記事は、井手よしひろ県議(公明党県本部幹事長)が7月7日に行った県政記者クラブでの記者会見をもとに構成されています。この時点では、茨城1区の赤城徳彦氏の推薦は決定していませんでした。20日に推薦が決定されましたので、21日付の記事には「1、2、3、4、6区の自民候補を推薦した」との標記となりました。
 一方、知事選に関しては、「小幡氏側は自民県連から推薦依頼が来たが、推薦団体が推薦を頼むのは本筋ではない」との記述がありますが、8月8日付で小幡政人候補から公明党県本部に推薦依頼が届けられています。21日付の記事としては正確な表現ではありません。記事の掲載に当たっては、選挙報道という微妙な内容でもあり、事前に本人に確認があるべきだと思っています。
 この総選挙で、公明党は茨城1区(赤城徳彦候補)、2区(額賀福志郎候補)、3区(葉梨康弘候補)、4区(梶山弘志候補)、6区(丹羽雄哉候補)の自民候補を党本部推薦しています。5区の岡部英明候補については、日立市、高萩市、北茨城市の県議、市議12名の議員団推薦を決定しています。また、7区の永岡桂子候補については、結城支部が支部推薦を決めています。
 自民・公明の連立政権は10年目。今回の衆院選においては、与党統一マニフェストが取りまとめられ、より質の高い選挙協力の体制が敷かれたと考えています。(「自民・公明の与党が共通マニフェストを発表」を参照)
 茨城県本部は、1区から7区の自民党候補を推薦する方向で調整を進めています。
(写真は公明党の街頭演説会で必勝の決意を述べる赤城徳彦候補)
公明党、1区の赤城氏推薦/茨城
毎日新聞(2009/8/21)
 ◇日米FTA促進、民主公約に反発 農協のテコ入れで
 衆院選で県内の2、3、4、6区の自民党候補を推薦した公明党は20日、新たに1区の自民前職、赤城徳彦氏(50)に推薦を出した。当初、同党県本部は赤城氏への推薦について、07年に発覚した事務所費問題などを理由に「支持者の理解を得るのは厳しい」と慎重な姿勢を示していたが、一転して推薦が決まった。直前の18日に、県農協政治連盟(農政連)が「1区では、比例代表は公明党を」とする初の推薦を出しており、農協によるテコ入れが公明の推薦を引き出した格好だ。
 公明党は05年の前回衆院選では、5区を除くすべて自民候補者に推薦を出した。今回は、7月末に推薦が発表されたのは、2、3、4、6区の候補者だけ。推薦が出なかった3選挙区について、県本部の井手義弘幹事長は「地域の意見集約が遅れている」と説明した。1区については「支持者の中に『清潔政治』という党是を曲げてまで自民党候補を応援する必要があるのか、という声がある」ため、「(推薦は)正直厳しい」と話していた。
 風向きが変わったのは、民主党のマニフェストにある米国との自由貿易協定(FTA)を巡る方針が問題化した今月初めごろ。農協内で「農政に詳しく実績がある赤城氏を落としてはならない」という機運が高まり、公明党に対する選挙協力要請が強まったという。同じころ、赤城氏自身も「比例代表は公明党」と積極的に訴え始めた。
 農協幹部は、初めて比例で公明推薦を決めた意図について「逆風にさらされる自民党候補にとって、公明の集票能力は魅力がある」と小選挙区での公明票に期待した決定であることを示唆した。
 一方、1区の民主新人、福島伸享氏(39)の陣営関係者は、日米FTA交渉促進の民主党公約に対する農協の反発について「農業が破壊されるという危機感は筋違い。農家を歩いていて、そんなに反発は感じていない」と話し、公明と農協の連携を静観している。
 自民党候補への正式推薦が出ていない残る2選挙区について公明党県本部は、5区では14日に地元議員団による推薦を、7区は12日に結城支部が推薦を表明しており、「各地区の実情に応じて支援している」と与党協力を強調している。

逆風下 深まる蜜月
朝日新聞(2009/8/21)
 連立を組む自民、公明両党が県内で「蜜月関係」を深めている。20日は公明が1区の自民・赤城徳彦氏(50)に推薦を出すと決め、これで自民公認候補への推薦は5人になった。小選挙区での当選には公明票が欠かせないとの見方を強める自民と、高投票率が予想される中、比例票を何とか上積みしたい公明。政権与党への逆風を浴びながら、両党の距離は日ごとに近づいている。
■ギブ&テーク
 「小選挙区で勝ち上がらなければ私の勝ちはない。その分お願いです。比例代表は全部公明党と書いてください」
 18日にあった赤城氏の出陣式。公明からの推薦がまだ決まっていなかった赤城氏はこう述べ、「自公協力」の重要性を訴えた。
 赤城氏がマイクを握る前、公明の高崎進県議は「現在、党本部で推薦の手続きを進めている」と朗報を伝えていた。赤城氏の選対本部長を務める石川多聞県議は「公明票はキャスチングボートを握る票になるかもしれない。のどから手が出るほどほしい」と話していた。
 20日、高崎氏の予告通り、赤城氏は公明推薦を得た。記者会見した公明県本部幹事長の井手義弘県議によると、決定の理由として、農林水産行政に明るい赤城氏への期待に加え、本来は自民党支持者の多い県農協政治連盟が「1区比例」に限り18日付で公明に推薦を出したことがあったという。小選挙区と比例区とで「ギブ・アンド・テーク」の関係が築けて、推薦を取り交わした格好だった。
■黙認
 一方、推薦が出ていない7区の自民前職の永岡桂子氏(55)。ポスターには「比例も自民へ」の文字が躍る。公示日の第一声で永岡氏は「もっともっと(公明に)協力していただいて私を大きく広げていただきたい。小選挙区は永岡。比例区は自民、公明とよろしくお願いします」と述べた。
 自民県連幹部は「比例でも自民票を積み上げたいのが本音だが、各候補者は背に腹は代えられない状況なので、仕方ない」と黙認する。
 3区の自民前職の葉梨康弘氏(49)は今回初めて、ポスターに「公明党推薦」の文字を入れた。陣営のスタッフらは「自公協力」の重みを改めてかみ締めているという。
■無党派層の行方
 自民が小選挙区で公明票の取り込みに懸命になる中、公明も比例票の上積みに力を入れる。
 公明党の茨城第2総支部議員団は14日、5区の自民前職の岡部英明氏(50)に、全国でも異例といえる、県議・市議12人による「議員団推薦」を出した。岡部氏の出陣式のあいさつで、井手氏は「自分の後ろには2万5千(人の支持者)がいる。我々の目標は比例区での3議席奪還だ。公明党は自民党との信義を守る」と、比例区での自民の協力に強い期待をにじませた。
 公明は前回総選挙の比例北関東ブロックで00年以降最高の93万7千票を獲得したが、議席は1減の2議席だった。今回は「3議席の奪還」を掲げる。ただ、支持母体の創価学会の強固な組織がある半面、無党派層の支持は集まりにくいとされている。投票率の上昇が予想される今回、3議席を取るには前回以上の票が必要だ。
 ある創価学会幹部は「自民候補者は選挙区で当選しなければ、比例復活は厳しい。公明としても、投票率が上がれば、さらに比例票の積み上げが必要になる。『小選挙区は自民、比例は公明』を徹底することは、互いにプラスになる」と話す。
 一方、「自公協力」の足固めに民主は危機感を強める。民主前職の大畠章宏氏(61)の陣営幹部によると、「前回の選挙でも5区の公明票はかなりの部分が岡部氏に入った」という。「今回が前回以上の協力になるようだと、(約4600票差に追い上げられた)前回以上の厳しい戦いになることは必至だ」(同幹部)と引き締める。