毎日新聞世論調査:高速無料化6割反対 公約目玉政策、分かれる評価
毎日新聞(2009/9/18)
 民主党が衆院選マニフェストに掲げた目玉政策について毎日新聞の全国世論調査で賛否を聞いたところ、子育て支援や高校教育の無償化、温室効果ガスの削減目標には賛成が多く、高速道路の無料化には反対が6割を超えた。政権交代への期待の一方、個別政策への評価は分かれた。
 中学生以下に1人当たり月額2万6000円を支給する「子ども手当」については賛成が58%で、反対の39%を上回った。子育て世代の20〜40代の支持が高く、特に30代では賛成が70%に達した。
 また、公立高校の授業料を無料にし、私立高校生には1人当たり年12万〜24万円を助成する「高校教育の無償化」も賛成が61%に上った。
 20〜40代の70%前後が支持したのに対し、70代以上では賛否が拮抗(きっこう)し、世代間で温度差が表れた。
 2020年までに温室効果ガスの排出量を90年比で25%削減する目標に対しては賛成が69%を占めた。麻生太郎前首相が打ち出した「90年比8%削減」に関する6月の世論調査では「妥当」が49%だった。より厳しい取り組みが必要となる民主党の目標の方が支持された形だ。
 一方、高速道路の原則無料化については賛成が33%にとどまり、反対は2倍近い63%に上った。民主党支持層でも反対が53%で賛成を8ポイント上回った。

参考写真 9月18日の新聞各紙には、鳩山内閣の支持率が70割を超え、歴代2位の高率であることが一斉に報道されました。
 しかし、その政策ごとの評価みると、「高速道路無料化」については、反対が賛成の倍近くに上っていることが明確になりました。
 読売新聞は「高速道路の無料化には反対が61%と多く、賛成は30%にとどまった」、毎日新聞も「高速道路の原則無料化については賛成が33%にとどまり、反対は2倍近い63%に上った。民主党支持層でも反対が53%で賛成を8ポイント上回った」としています。
 子ども手当の実現と並ぶ鳩山政権の看板政策が高速道路の無料化です。
 確かに、日本の高速道路料金は、100キロ走って2610円と、世界的にもずば抜けて高額。米国の「フリーウェイ」やドイツの「アウトバーン」はほとんどが無料で、フランスやイタリアも日本の半分以下の料金です。しかし、最近は財政負担の大きさや排ガスへの配慮もあって、有料化の動きも広がっています。アメリカでも州によって通行料の徴収を検討していますし、ドイツでも大型トラックに有料の支払い証明書購入を義務づけています。
 高速道路無料化は、そんな流れに逆行する動きですが、民主党は無料化によってヒトやモノの流れが増え、地域経済が活性化すると主張しています。国土交通省も経済効果が2兆7000億円と試算しています。
 問題は2つ。鳩山内閣が強調した温室効果ガスの排出削減に悪影響を及ぼすこと。自治体の環境政策に携わるシンクタンク「環境自治体会議・環境政策研究所」によると、高速道路の無料化と自動車関連の暫定税率の廃止が実施された場合、二酸化炭素(CO2)の排出量が年980万トン増えると試算。一般家庭の年間排出量に換算すると約180万世帯分に相当し、麻生政権が導入した休日の高速道路「千円乗り放題」で増加が見込まれる年245万トンと比べても4倍となります。自動車の輸送量が21%増えるのに対し、鉄道は36%減、バスは43%減、航空機は11%減と公共交通機関は軒並み減るという結果が出ました。鉄道離れが特に進むのは、東京圏からは東北や近畿方面などに向かう路線と、大阪圏からは東海や四国方面などへの路線とみられると結論づけています。国内の運輸部門のCO2排出量は2億4900万トン(07年度)で、これを約4%押し上げる計算になります。
 第2の問題は、無料化の財源と税金で負担することの妥当性です。無料化にして料金収入がなくなると、年1兆3000億円に上る建設費などの借金返済や、年6000億円の維持管理費を税金で賄う必要が出てきます。
 本当に必要な高速道路建設にまわる費用が無くなります。さらに、高速道路を使わない多くの国民も、税金から高速道路の建設費や維持費を支払わなくてはならなくなります。受益者負担の大原則を踏み外すことになってしまいます。
 国民の過半数が反対する高速道路の無料化。民主党は、国民の声に耳を貸し、早期にこのマニフェストを撤回すべきです。