農相、スーパーの産直批判 外相関係深いイオンも矛先
共同通信(2009/10/17)
 「強いものがバンと現金持って何でも現地で買えばいいというのは消費者にとっていいことなのか」。赤松広隆農相は17日早朝、視察のために訪れた名古屋市中央卸売市場北部市場(愛知県豊山町)などで、農産物の流通について大手スーパーのイオンなどを例にして産地直送販売に批判的な考えを示した。
 赤松農相は、スーパーによる産直が進んで、中央卸売市場の地位が低下することに懸念を示したが、イオンは岡田克也外相の父が名誉会長で、兄が社長。同じ閣内にいるだけに、発言が話題となりそうだ。
 農相はイオンの産直事業について「うまくいっていない。広がりも出ていない」と指摘。
 農相は「産直もあってもいいけど中央卸売市場法で位置付けられた市場の役割について、もう一度しっかり考えるいい機会だ」と付け加えた。
 同行した河村たかし名古屋市長も「(市場を通さなければ)安いすしは食えるけど、それでは漁師もトラック運転手も大変。商売人あってこその世の中だ」と過度な価格競争を懸念した。

参考写真 民主党の農業政策は、「農業も市場経済の中で動いている」という大原則をご存じではないようです。農家への戸別所得補償にしても、大規模小売店の産直販売批判にしても、「農家の生産意欲をどのようにして高めるか」という視点が欠落しているから出る発言だと思います。
 赤松農相の発言の裏には、統制的な農業流通形態があるのでしょうか?どのような農業のあり方がしかるべきなのかという、民主党の農政の未来像が見えてきません。
 このままでは、やる気のある本当の意味での中核農家は死んでしまいそうです。
 さらに、イオンなどの小売業が直接農業に算入しようとしている姿を、赤松農相はどのように認識しているのでしょうか。
 今年7月22日、イオンは新たに設立した関連会社イオンアグリ創造を主体として、牛久市で農業プロジェクトをスタートさせました。牛久市と特定法人貸付事業制度に関する協定と、土地の賃貸借契約を締結し、牛久市から農地を借り受け農場を経営します。
 イオンはこれまでにも農産物分野でもプライベートブランド「トップバリュ グリーンアイ」を展開してきました。生産者との契約生産に取り組み、国際基準を満たした独自の「農業生産工程管理」を構築。より高品質で、安全・安心な農産物を生産し、既存の流通ルートを通さず、自らの店舗で販売するノウハウを蓄積してきました。今回はさらに、生産から店頭まで、小売業の視点ならではの一貫した農業に取り組む方針です。
 牛久市の取り組みでは、農地面積2.6haの「牛久農場」で小松菜・水菜・とうもろこしのハウス栽培と、キャベツ・枝豆の露地栽培を行います。9月中旬から作付を開始し、11月中旬から順次収穫、販売します。初年度収穫量は約300t。農産物はイオンリテールが運営する茨城県と千葉県を中心とした関東地方のジャスコ約15店舗で販売します。農場は3年後に15haに拡大する計画です。
 イオンアグリ創造は、イオン100%出資の子会社。安全・安心で新鮮なおいしいPB農産物を生産するほか、遊休地の活用や農業の近代産業化など、日本の農業が抱える課題に挑戦するとしています。
 特定法人貸付事業制度は、耕作放棄地の解消や担い手の育成などを目的として定められた制度で、農業生産法人以外の法人に対する農地の貸付けを可能とする農地法の特例措置です。この制度により企業がリース方式によって農地の権利を取得できることになりました。