茨城空港ビル 年1億円赤字も
朝日新聞(2009/10/24)
 開港まで5カ月を切ったにもかかわらず、韓国のアシアナ航空しか定期便の就航が決まっていない茨城空港について、県は23日、空港のターミナルビル運営が「赤字スタート」になると初めて認めた。複数の航空会社が就航を決めるまで黒字の見通しは立たず、現状では年間1億円近い県税が空港ビルの赤字に消えていく。しかもビルの管理・運営母体は多額の債務を抱える県開発公社。経営のノウハウがあるとは言いにくく、茨城空港は二重の批判にさらされそうだ。
 赤字の見通しは23日の県議会・出資団体等調査特別委員会で、常井洋治県議と県空港対策課とのやり取りで明かされた。同課は「職員数や水や電気代を削減したとしても、数千万円〜1億円の収入減になる」と回答。これまでの県議会総務企画委員会などで「光熱費や人件費の削減など全体の収支圧縮によって、収支の均衡は保てる」としてきた答弁を覆した。
 従来の試算(08年3月時点)では、ビルは年約4億1700万円の収入を得て、200万円の黒字になる予定だった。その前提は、3社以上の航空会社にカウンターなどを貸し出すことにより、1億7400万円の賃料収入が計上できるという算段だった。現状では1社しか就航が見込めない。
 特別委では、すでに1331億円の負債を抱えながら、空港ビルを運営する県開発公社の経営能力も問われた。同公社は「県から財政支援を頂けるものと思っている」と、収支の試算を県に任せきっている姿勢が露呈。県はビルの事業者の公募が始まる前の07年5月、同公社理事長に文書で応募を打診した上で、「(ビルの)確実な建設と安定的な経営に向け、一方的な財政的負担が生じることのないよう支援と協力を行ってまいります」と、赤字が生じた場合の肩代わり支援を約束していた。
 空港対策課の藪中克一課長は特別委で「就航対策は県の責務と考えている。赤字については県が責任を持って対応する」と明言。県はすでに開発公社に対し、ターミナルビル建設費として34億円を無利子で融資。開港後、ターミナルビルの収益から返済させる予定だったという。
 同課は赤字を減らすため、就航対策以外に今年4月、「ターミナルビル活性化検討チーム」を結成。地元商工会や農協とも連携し、本来航空会社が入るはずの空きスペースを、催し物や会議室などに利用してもらうことで、賃料収入の確保を狙っている。

 10月23日、県議会県出資団体等調査特別委員会で、県開発公社の改革問題が議論されました。
 特に、来春3月11日に開港が予定されている茨城空港のターミナルビルを開発公社が運営することから、経営状態の悪化に拍車が掛かるのではないかとの懸念が強く指摘されました。薮中克一県空港対策課長は、ターミナルビルの収支見込みについて、「ビルに入居予定の航空会社がアシアナ航空1社にとどまっているため、使用料収入の減少により、年間1億円の赤字が見込まれる」との見解を示しました。
 県が昨年3月に示した旅客ターミナルビルの収支計画では、開港から30年間について毎年約4億1千万円台の年間収入を見込み、営業損益は毎年若干の黒字と予測していました。このうち航空会社や入管、税関、検疫(CIQ)専用施設の使用料は年間約2億5000万円を見込んでいました。この収支計画は、航空会社の使用スペースのうち国内線2社分と国際線1社分以上の入居を想定。しかし、これまでに就航路線はアシアナ航空の2路線が見込めるだけで、国内線の誘致については見通しが立たない状況が続いています。
 県は、新たな航空会社の就航に全力を挙げています。また、関係自治体や地元の業界団体などと、航空機の利用者以外の観光客などがターミナルビルを訪れる機会を増やすため、ビルの活用策を検討しています。
県土地開発公社:保有土地の含み損46億円に
参考写真 また、特別委員会では県土地開発公社の保有土地の評価法を時価評価に変更するため、平成21年度末の含み損が46億円に達することが報告されました。県は、土地開発公社の財務状況を正確に把握するため、保有資産を簿価でなく時価評価する低価法の導入を検討しています。この低価法が適用されると、地価動向が好転しない限り、保有土地の評価損が毎年度決算で発生することになり、税金の追加投入による損失穴埋めが46億円を超えることも十分予想されます。
 茨城県土地開発公社は2005年度決算で、約97億円の債務超過に陥りました。県は補助金などを通じて、債務超過分を10年分割で処理する支援策を進めています。また、土地開発公社が保有する土地の時価評価分226億円(2005年度末)を長期貸付金の形で投入し、金融機関からの借金を帳消しにしました。開発公社は土地を処分して、貸付金を返済する計画ですが、売価客は進まず償還はまだ約7億円しかありません。
 特に問題の土地は、ひたちなか市などに保有する土地約57ヘクタール。土地の下落により2008年度末にあらためて時価評価すると、約36億円の含み損が出ています。過去3年間の地価の平均下落率である5.5%で計算すると、既に2009年度末には含み損は約46億円に膨らむ見通しであることが分かりました。
 土地開発公社に評価損を穴埋めする資金力はなく、いずれ県費による追加処理が必要となります。
 低価法の適用は早ければ2009年度決算から行う計画で、来年度には新たな税金投入が迫られます。