このブログでは、太陽光発電の普及について、「太陽光発電、15年でイニシャルコストが回収できる買電制度に」(2009年03月22日登録)「太陽光発電10年で設置コストを回収」(2009年04月26日登録)の2回にわたって、助成金の充実や売電価格の引き上げの必要性について述べてきました。
 いよいよ、太陽光発電などの余剰電力を電力会社がこれまでよりも高値で買い取る新制度が11月から始まることになります。
家庭用余剰電力を1キロワット48円で買い取り
参考写真 新制度のスタートで、電力買い取り価格は、家庭用で1キロワット48円、病院や学校など住宅以外の施設だと1キロワット24円になります。これはこれまで電力会社が買い取っていた自主買い取り価格の約2倍の価格です。
 買い取り期間は10年間の契約で、買い取り価格はその間、固定されます。価格は毎年見直されますから、いつ売買契約を結んだかによって、それぞれで電力を売る際の値段が異なるということになります。
家庭で増加する太陽光発電
 太陽光発電を導入する住宅・施設などは2005年度まで増え続けてきましたが、2006年に補助金が打ち切られたのに伴い、急激に減少しました。2008年に補助金制度が再開されるとまた上向きになり、2009年も導入件数は伸びています。余剰電力の買い取り価格が2倍になったことで、太陽光発電の伸びはさらに後押しされるものと期待されています。
太陽光発電、設置のコストは?
 新築住宅の場合、出力4キロワット程度のシステムで280〜300万円ぐらいかかります。国の補助金対象経費の基準は1キロワットあたり70万円以下なので、多くの設備がその範囲で販売されています。太陽光発電導入のための国の補助は最大発電能力1キロワットあたり7万円ですから、4キロワットの設備に対しては28万円の補助が出る計算です。
 また、地方自治体も太陽光発電に対して設置補助を行っているところはたくさんあります。たとえば茨城県では、平成21年11月16日(月)〜平成22年1月29日(金)の期間、1キロワットあたり3万円(上限10万円)の補助金を支給します(茨城県の助成制度)。さたに、日立市でも、1キロワットあたり3万円、上限は10万円の補助金が出ます(日立市太陽光発電システム普及促進事業)。
 つまり、4キロワットの太陽光発電設備に対して国28万円、茨城県10万円、日立市10万円の合計48万円の助成が受けられることになります。
売ることのできるのは余剰電力だけ
 ここでひとつ注意が必要なのは「電力会社が買い取るのは余った電力だけ」ということです。
 売電(電力を売る)には電力会社と契約をしなければなりませんが、その内容では「自分の家で発電した電力は、まず自家消費分に回され、余ったものが電力会社に売られる」という仕組みになっているのです。今回、電力買い取り価格が2倍になったことで、本当は自家消費用の電気はすべて電力会社から買って、家で発電した分はすべて売った方が有利なのですが、そのようにはできない仕組みになっています。
グリーン電力証書も発行
 環境に負荷をかけないエネルギーへの助成として、グリーン電力証書というものがあります。これは太陽光や風力発電などによって得られた電力の環境付加価値を取り引き可能な証書にしたものです。
 家庭で太陽光発電で作られた電力も、この環境付加価値を持つものですが、電力会社に売られた時点で、電力に付随している環境付加価値も一緒に売ったことになります。つまり電力を買い取る価格の中には環境付加価値の値段も含まれているのです。
 では太陽光発電で得られた電力の環境付加価値とはいくらぐらい値打ちのあるものなのでしょうか。電力会社に売らずに自家消費した電力の分もグリーン電力として証書化し、法人や自治体などに売ることができるのですが、その取引価格は現在は1キロワット当たり10円程度となっています。
訪問販売ではトラブルも増加
 太陽光発電が普及するにつれて、訪問販売などでのトラブルも増えています。
 たとえば、国の補助金が受けられるという言葉を信じて契約したのに、後になって補助金が受けられなかったケース。これは補助金の受けられる設備は発電能力1キロワットあたり70万円以下のものなのに、販売されたものはそれ以上の値段だったので対象外になったということのようです。また、「補助金の枠に限りがある」と強引に契約を迫ったり、月々の費用は売電で相殺できるなどとでまかせを言って契約させられたという苦情もあります。
 太陽光発電は環境にも良く、社会に貢献するものですが、すぐに設置費用が回収できるというものではありません。導入するときはコストと償却のことを良く検討して、納得の上で決断されることをお勧めします。
参考:資源エネルギー庁太陽光発電買取制度室