子どもゆめ基金のイメージ 行政刷新会議が行っている来年度概算要求に関する事業仕分けに関する話題の第2弾は、「こどもの読書運動」と「子どもゆめ基金」に関する問題を取り上げます。
 11月11日行われた事業仕分け第3ワーキンググループでの結論は、「子ども読書活動の推進事業」(平成22年度概算要求額2億2000万円)は廃止、「子どもゆめ基金」(同21億4000万円)も廃止というものでした。
 子どもゆめ基金は、子どもの健全な育成の一層の推進を図ることを目的に、民間団体が実施する特色ある新たな取組や、体験活動等の裾野を広げるような活動を中心に、様々な体験活動や読書活動等への支援を行っています。
 助成の対象は、1.子どもの体験活動の振興を図る活動への助成、2.子どもの読書活動の振興を図る活動への助成、3.子ども向けソフト教材を開発・普及する活動への助成の3分野です。
 子ども会やNPO、ボランティア団体など、子育ての支援を行うグループにとって、大変使いよい交付金で、各地域で意欲的な企画が組まれています。
 例えば、茨城県では2009年度の交付内定事業には、以下のようなものがあります。
  • まくらが文庫(まくらが文庫読み聞かせ会)75,000円
  • 特定非営利活動法人子育て応援・ペンギンくらぶ(子どもの読書振興講座)701,000円
  • おはなしの会赤とんぼ(赤とんぼおはなしの部屋)82,000円
  • 筑波大学東照雄研究者グループ(土壌の観察会―生態系における土壌の働き―)1,805,000円
  • 青少年のための科学の祭典・日立大会実行委員会(第9回青少年のための科学の祭典・日立大会)804,000円
  • ボーイスカウト日立地区協議会(わんぱく・おてんばふれあいランド)376,000円
  • 社団法人ガールスカウト日本連盟茨城県支部(ガールスカウトフェスティバル90)855,000円
  • いばらき新鮮組(若者挑戦!2009)819,000円
  • 高萩市子ども会育成連合会(萩っ子歴史探険隊)298,000円
  • 特定非営利活動法人日本スポーツ振興協会(三世代触れ合いテニス交流体験2009)1,672,000円
  • つくば遊ぼう広場の会(ゴンタで夏休み2009)300,000円
  • 修養団いばらき支部(第11回東関東子ども冬季キャンプおよびそれにかかる指導者研修)920,000円
  • 茨城LD等発達障害親の会(星の子E・ぱかクラブ)1,252,000円
  • サイエンスクラブ(科学体験教室2008)105,000円
  • キッズトライアングル(ミュージカル体験活動)1,139,000円
  • つくば自然体験研究会「夢民舎」(悩みを抱える子どもの自然体験旅キャンプロード・トゥ・セルフつくばから富士山へ)571,000円
  • 特定非営利活動法人文化フォーラムうしく(どんなところでとれるの?「蓮の花からレンコン収穫調査隊」)955,000円
  • ジャマイカ!クラブ(玄蕎麦手づくりから蕎麦うちまで自分の蕎麦を作ってみよう!)305,000円
  • 特定非営利活動法人メロディハウス(メロディハウス交流サマーキャンプ)300,000円
  • 米米くらぶ(親子で米作り2009)235,000円
  • 筑西市子ども会育成連合会関城支部(まほろばクエスト2009)327,000円
  • ひたち観光探検少年団(ひたち観光探検少年団)65,000円
  • 青少年のための科学の祭典鹿行地区大会実行委員会(青少年のための科学の祭典鹿行地区大会)305,000円
  • ひたち建築デザイン探検少年団(ひたち建築デザイン探検少年団)71,000円
  • ひたち水産業探検少年団(ひたち水産業探検少年団)79,000円
  • 農村体験IN笠間会(常陸秋そばと竹炭作りを楽しもう)655,000円
  • 総合型地域スポーツクラブ滑川ファミリースポーツクラブ(なめかわ農業体験くらぶ)1,442,000円
  • 古河市舞祭運営委員会(踊りでつなぐ人の「和」活動:古河和舞祭)270,000円
  • 特定非営利活動法人宍塚の自然と歴史の会(自然観察会)305,000円
  • 牛久冒険遊び場をつくる会「やんちゃ会」(プレーパーク入門・牛久の巻)231,000円
  • ひたちの自然観察会(いばらき まるごと自然観察)980,000円
  • FCヴェレン大洗(キッズフェスティバル、サマーキャンプフェスティバル)482,000円
  • 特定非営利活動法人大洗海の大学(大洗少年海賊隊自然体験事業)1,117,000円
 事業の名称を聞いただけでもワクワクするような内容が並んでいます。
 こうした取り組みに費用対効果の論理を持ち込むべきはありません。地方に任せろという議論もあったようですが、逆に国という大きな予算がない限り、地方の予算ではこのようないい意味でのあそびのある事業はできません。
 この基金がいきなり廃止となることには、大きな疑問があります。それは、そもそもゆめ基金は官僚指導ではなく、国会議員が議論をリードして成立させた純粋に「政治指導」の事業であるからです。さらにいうと、平成13年に国会で議論されたときには、この第3WGの取りまとめをしている蓮舫議員自身が議連に参加して、基金の創設を推進した内容なのです。
 それを、たった7年で官僚が作った前時代の遺物のような議論を行った事業仕分けは、どんな意味があるのでしょうか。財団の担当者は、蓮舫議員にあのときは財団設立の旗を振って、今なぜ廃止の先頭に立つのか、その変身の理由を問いただすべきだったと思います。
 子どもゆめ基金の設立にかかわる経緯が、「子ども会Community Center」のブログに詳しく掲載されていますので、引用させていただきます。
「なぜ『子どもゆめ基金』ができたのか 経緯から見えてくる『矛盾』」
子ども会Community Center(2009/11/14)
 政府の事業仕分けで「廃止」とされてしまった「子どもゆめ基金」。
 無駄だとされていますが、それでは、なぜこの基金が生まれたのでしょうか。
その経緯を追ってみました。
 そもそも子どもゆめ基金は、「子どもの未来を考える議員連盟」が子どもの未来のために有意義な基金の設立を発意し、同議員連盟が中心となって検討を進められてきたのを受け、平成13年4月に創設されたものです。
 ホームページに構成している議員のリストがありますが、ここには当時与党だった自民党だけでなく、民主党や共産党の議員も名前を連ねています。
 この議員連盟の働きかけに応じ、国会で子どもゆめ基金を創設するための法案「独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センター法の一部を改正する法律案」が議論されました。
 まず衆議院で議論され、付帯決議がついて、可決されました。
 付帯決議の内容はこちらをご覧いただきたいですが、
 「青少年教育に関する団体の規模に関わらず地域に密着した草の根的な団体に対して格別の配慮をすること。」など、大事なことが盛り込まれています。(30万円以下なら簡単な書式でOKにしてるのは、この決議に由来するのでしょうかね。)
 続いて参議院で議論され、採決が行われました。
 採決の結果はこちらで見ることができます。
 自民党だけでなく、民主党なども賛成し、「賛成票187 反対票9」で可決。法律が成立しました。
 ところで、この法律の名前に注目してください。
 独立行政法人国立青少年教育振興機構の前身である、独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センターの法律の改正なのです。
 つまり、「事業仕分け」で「なぜこの団体(=独立行政法人)で行わなければならないのか!」などと厳しく追及されていましたが、実は、国会で「子どもゆめ基金は独立行政法人でやりなさい」と認められて、はじまったのです。
 今書いたことは、平成13年の国会での議論のこと。
 たった8年前のやり取りなのです。
 もともと超党派の政治の働きかけで始まった「子どもゆめ基金」。
 8年前に国会で議論され、独立行政法人で行うことを民主党も含む超党派で賛成、可決され、始まった経緯をまとめました。
 それが、政権交代したからといって、いきなり「費用対効果」を持ち出されて、「国でやるべき意義が見られない」なんて意見まで出ながら「廃止」の結論。
 こんなんで本当にいいのでしょうか。
 子どもゆめ基金を利用していない人たちからは、「助成されていた人たちが騒いでいる」「今の時代にあわない」...というように映っているかもしれませんが、決してそうではないのです。
 この経緯を読んで、あまりに筋が通ってないと思いませんか?
 子ども会など地域に密着した草の根的な団体が財政的に厳しい中、これらを応援することを大真面目に議論し、始まったのは、一体なんだったのでしょう。
 その違和感が根底にあることを、ぜひご理解いただきたいです。
 結局振り回されているのは、「地域に密着した草の根的な団体」なのではないでしょうか。
 PS というか、記事を書いてて気づきました。
 「子どもの未来を考える議員連盟」に、事業仕分けであれだけ天下りうんぬん叫んでた蓮舫議員が名前を連ねているではないですか...

 確かに国会での議論を議事録で精査すると、民主党議員はこの基金を「独立行政法人国立青少年教育振興機構」で運用させることや基金自体への民間の拠出が少ないことには、かなり抵抗しているようですが、結果的に議案に賛成したという事実は非常に重いといわざるを得ません。
 子育て支援を大看板とする民主党。事業仕分けで廃止とするならば、この読書への支援や子どもゆめ基金にかわる新たな枠組みをどのように作るのか、対案を明示していただけなくれば、国民は納得しません。