2011年7月の地上デジタル放送完全移行まで、間もなく600日を切ります。
 こうした中、政府による「事業仕分け」で、総務省が進める「地上デジタル放送への円滑な移行のための環境整備・支援」に関連する来年度予算の概算要求額は半減が決まりました。
 予算額半減で円滑な完全移行ができるのか、関係者から不安の声が高まっています。日本民間放送連盟の広瀬道貞会長は会見で、「情報格差を生じさせないために、ある程度政府が支援しなくてはいけない」と指摘しました。
 移行支援事業には、地デジ受信の相談体制強化をはじめ、受信機器の購入支援、過疎や離島地域などでの支援などが盛り込まれています。
 高齢者などからは「地デジを見るためには、どうしたらよいのか」などの声が、良く寄せられます。デジタル化との言葉さえ理解していない方の方が、圧倒的多数と言っても過言ではありません。移行までに残された期間を考えると、利用者の問い合わせにきめ細かく応じる相談体制の強化は、今後さらに求められる支援策です。
参考写真 テレビの視聴は多彩な番組を楽しむとともに、災害情報など基礎的な情報源でもあり、生活上重要なインフラだ。情報格差を生まないためにも、地デジ移行に対する支援は当然の取り組みであり、国の義務に他なりません。
 地デジ移行の背景には、電波の有効利用が挙げられます。山間部の多いわが国は数多くの中継局が設けられ、電波は過密に使われています。デジタル化によって、こうした混信の影響を受けにくくなり、周波数に余裕が生まれます。その結果、これまで使われていた電波を新たな通信などに転用することができ、高度情報化の進展には、電波の有効活用が欠かせないのです。
 また、地デジ移行で放送サービスの高度化も実現できます。高品質の映像や音声が提供されるほか、ニュースや天気予報などの情報も直ちに得られるようになります。
 さらに、字幕放送やドラマなどの解説放送、音声速度の変更も可能になります。これらは高齢者や障がい者にとって意義あるサービスです。
公明党が推進した家電品のエコポイント制度も地デジかを後押し
 公明党は地デジへの円滑な完全移行をめざし、国民への一層の普及促進や難視対策の拡充を強く主張しています。具体的には、低所得者に対するチューナーの配布や受信障害地域の解消を求めるなどの取り組みを重ねています。
 総務省が今年9月、全国1万2000人を対象にして行った地デジ浸透度調査によると、地デジ対応受信機の世帯普及率は今年3月の調査より8.8%増加し69.5%となりました。チューナー内蔵テレビは8.6%増の59.0%です。
 いずれも普及率が増加した要因として、公明党が推進したエコポイントによる効果が指摘されています。しかし、普及率はまだ高いとはいえません。まだ、3割以上の世帯で地デジ受信環境が整っていません。一人暮らしの高齢者や低所得者での普及率は、非常に低いといわざるを得ません。そして、このような家庭こそ、地デジの情報が不可欠な家庭であることを認識する必要があります。
 政府は、地デジ移行の意義を踏まえ、支援策の拡充を進めるべきです。概算要求半減という、「事業仕分け」結果はどうしても理解できません。
事業仕分WGの評価結果
(地上デジタル放送への円滑な移行のための環境整備・支援)
予算要求の縮減(半額の縮減)
【仕分け人の主な意見】
テレビがユニバーサルサービスなのか? 数あるメディアの中で何故テレビ受信機/チューナーだけが国費で支援しなければならないのかわからない。
自己負担があくまでも原則であるので、公費助成は極めて限定的であるべきであろう。
地上デジタル放送への移行説明会には、マスコミ(TV)の活用でかなりカバーできるはず。
相談体制強化事業については、説明会等では効果がみられない。
明らかに広報のやり方にムダがあるなど、対象事業へのアプローチにスリム化の余地がある。
普及対策はより効果的で効率的な方法に改善努力を。共聴施設、デジタル中継局への支援はより慎重に。
高齢者に対する対策として説明会を実施しながら、高齢者の来場者数をチェックしていないなど実施方法に合理性を欠き、コスト意識が著しく低い。
受信機の購入についても「NHK 受信料全額免除世帯」への全額補助は疑問。
電波の届かない過疎等への支援については大幅に減額すべき。
「国民に地上デジタル放送についてご理解をいただくための取組」と「受信者側の取組」はゼロにして、「送信者側の取組」を継続。