参考写真 12月1日、政府の行政刷新会議が、事業仕分けの中で、医師が処方する漢方薬などを保険の対象から外すよう求めたことを受けて、漢方医学の医師や患者らが、27万3636人分の署名を厚労省に提出し、保険対象から外さないよう訴えました。
 署名を提出したのは、漢方医学の医師などで作る日本東洋医学会や漢方薬を処方されている患者などです。先月11日に行われた事業仕分けでは、行政刷新会議の作業チームが、医師が処方するOTC類似薬(市販の薬と似た成分が含まれた漢方薬や湿布など)を保険の対象から外すよう求めました。これについて医師や患者らは、現在では医師の7割以上が漢方薬を使用しているというデータもあり、こうした漢方薬が保険の対象から外されれば、患者の経済的な負担が増えて治療に大きな影響が出ると訴えています。
 保険の適用から外さないよう求める署名はおよそ27万人分集まったということで、厚生労働省に署名を提出したあと、記者会見を開いた日本東洋医学会の寺澤捷年会長は「漢方薬を補助的に使うことで、入院期間を短縮したり合併症を減らしたりすることができる。漢方薬を併用できるメリットは大きいので保険の適用は必要だ」と訴えました。医師が処方する漢方薬については、厚生労働省でも患者の負担が大きくなるとして保険対象から外すことに慎重な姿勢を示しています。
 一方、11月30日、公明党厚生労働部会(渡辺孝男部会長=参院議員)で慶應義塾大学医学部漢方医学センターの渡辺賢治センター長は、「反対署名は既に15万を超えた。このままだと100万を超える。異例の数であり国民は怒っている」と発言しました。
 さらに、渡辺センター長は、「医師の約8割が漢方薬を処方しているが保険外になれば病院で処方できなくなる」とし、「特に怒っているのはがん患者や女性だ」と指摘。抗がん剤の副作用を減らす、再発防止に有用といった漢方の利点を挙げた上で「抗がん剤との併用は医師が適切に判断しないと危険」と力説。また「婦人科では100%近くの医師が使っている」と指摘しました。
 公明党の坂口副代表は、「民主党はマニフェストで『漢方を推進する』としているが、全然違うことをやっている。現実として漢方を除外することは不可能であり、われわれも主張すべきは主張していく」と述べました。
 そもそも、漢方の保険給付はずしは、永年の財務省の悲願であったようです。
 すでに、平成9年7月に与党協議長の丹羽雄哉氏が、都内の講演会でOTC類似薬の保険給付除外について触れています。
 平成19年1月、財務省理財局の向井治紀国有財産企画課長が日本漢方生薬製剤協会の講演会で、「財政からみた薬剤を中心とした医療」をテーマに講演し、保険医療費が伸びている以上、抑制するための動きは必須で、保険給付の制限論議では「ターゲットになりやすいのは薬」であり、OTC類似薬が給付除外対象となる可能性について述べています。
 財務省の財政制度等審議会は、平成20年度予算編成に関する建議をまとめた際にも、後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)やOTC類似薬の保険給付の見直しを検討することも求め、OTC類似医療用医薬品の保険給付除外は、その例として挙げられていました。
 今回の行政刷新会議の事業仕分けは、こうした財務省の案を反映させたものです。民主党政権は「財務省政権」といえるのかもしれません。