県の負担五百数十億円
住宅公社解散 3セク債活用を想定
読売新聞(2009/12/5)
 県は4日の県議会県出資団体等調査特別委員会で、住宅供給公社解散に向けた想定案を提示し、第3セクター等改革推進債を活用した場合に10年償還で536億〜554億円、15年償還で561億〜568億円が県の負担となることを明かした。当初計画では今年度から2015年度までに必要な支援額は323億円とされていただけに、県民負担が大幅に拡大している現状が浮き彫りとなった。
 県は昨年度までに、既に158億円を住宅供給公社への支援として支出しており、対策総額は最終的に700億円前後になる公算だ。
 県は住宅供給公社に対し、15年度までの10年間で461億円を支援し、公社を解散させる計画だったが、地価下落を考慮に入れないなど、当初から疑問の声が上がっていた。県が新たに示した想定案は、地価の将来的な下落や販売不振、会計方法の変更による含み損の拡大分などを折り込んで算出され、負担額が膨らんだ。3セク債を発行せずに今年度内に解散する場合は単年度で509億円が必要となる。
 対照的に、3セク債活用には負担を平準化できる利点がある。負担額の総額は10年償還の場合、今年度か来年度に解散すると536億円、13年度だと554億円。毎年の負担額は今年度解散だと、初年度は37億円で済み、償還が始まる来年度以降は毎年47億〜52億円。来年度解散だと、今年度に84億円と巨額の財源が必要となるが、来年度は12億円で済み、償還開始の再来年度からは42億〜46億円。
 15年償還だと、負担額の総額は今年度解散で564億円、来年度で561億円、13年度が568億円となる。
 特別委では、県の須藤修一土木部長が3セク債を活用しない年度内解散のケースについて「500億円を超える一般財源負担が生じるため、県行政運営に重大な影響、困難が生じる」と説明。県は、今年度か来年度に住宅供給公社を解散し、3セク債を活用する方向で調整するとみられる。
 一方、県議からは「あとは破産、3セク債の活用をいつやるかどうか。議会にも県民にも納得してもらうように」(高橋靖県議)と一定の理解を示す発言もある中、「トップの責任を明確にすべきだ」(常井洋治県議)と橋本知事の責任を問う意見も挙がった。

参考写真 12月4日、県議会出資団体等調査特別委員会が行われ、県住宅供給公社の巨額債務問題が改めて審議されました。この日の特別委員会には、公社解散に向けての具体的なシミュレーションが3案公表されました。解散に伴う県の負担見込み額は、509〜554億円に達することが明らかにされました。
 県は2006年度、向こう10年間で計461億円の公社支援策を立て、既に補助金と追加支援で158億円を投入しています。しかし、参考人の坂本和重公認会計士は「この支援策には無理があった。公社は県の支援で存続しているだけ」と厳しく指摘し、「実態は破産状態。前倒しで破産させるべき」と意見を述べました。
 仮に破産法に基づき公社を解散しても、最終的な県民負担は投入分158億円を加えた667〜712億円が見込まれ、当初想定の461億円を大幅に上回る見通しです。解散で県民負担が増えるのは、県が損失補償している公社の金融機関借入金127億円(08年度末残高)の相当額が、県の借金として加算されるためです。当初の支援策は「保有地の売却益で借入金を返済する」としていましたが、景気低迷の影響で計画通りに保有土地の処分が進んでいません。
 県が公表した3つのシミュレーションは、
1.今年度中に一括処理し解散
2.第三セクター等改革推進債(いわゆる三セク債)を活用し解散、なるべく早く解散
3.現行の支援策に沿って2015年度に解散
 第一案の場合、県の負担見込み額は509億円と最少になりますが、今年度の補正予算で460億円もの財源を確保する必要があります。上月良祐総務部長は「県の各種基金を全部つぎ込んでも足りない。現在の県政がクラッシュする」(茨城新聞の報道)と、現実的ではないことを指摘しました。
 一方、2案や3案は、最終的に三セク債の活用を前提としています。三セク債は、国が新設した原則償還10年の起債制度。これを活用し、今年度に住宅供給公社を解散した場合は536億円の県負担額が見込まれます。
 3案の場合は、県負担見込み額は547億円と、結果的に負担がふくらむおそれがあります。
 県議会特別委員会としては、議会最終日の9日に、中間報告の中で早期の三セク再活用による精算を提言する見込みです。