年金「4年で全件照合」断念、半分以下に後退
読売新聞(2009/12/13)
 長妻厚生労働相は12日、年金記録問題の対応策の一環であるコンピューター上の記録と過去の紙台帳記録約8億5000万件との照合について、2013年度までの全件照合完了という目標を見直す方針を固めた。
 10、11年度の照合目標を6億件から2億件程度に引き下げる。予算の確保が難しいことと費用対効果が低いことが要因で、最終的に照合できるのは全体の半分以下にとどまる見込みだ。民主党が「国家プロジェクト」と位置づけた「消えた年金問題の解決」が大幅に後退する格好だ。
 民主党の政権公約(マニフェスト)は、10、11年度を記録問題への「集中対応期間」に設定している。当初の計画ではこの2年で全体の7割(約6億件)の照合を集中的に行い、おおむね完了させる予定だった。
 厚労省は10年度予算の概算要求に照合のための人件費などの関連経費789億円を盛り込んだが、厳しい財政状況の下、費用の確保は難しい状況となっている。また、社会保険庁のサンプル調査の結果、自営業者らが加入する国民年金は照合により記録が訂正されることで、平均で年約10万4000円の年金が回復した。
 これに比べ、サラリーマンらが加入する厚生年金は同1万7000円にとどまった。
 こうした状況から長妻氏は、国民年金の70歳以上の受給者の台帳照合作業を中心に10年度は4000万件、11年度は1億数千万件程度の照合に絞らざるを得ないと判断した。残りの約6億件は12年度以降に必要性を検討するが、4年間での全件照合は事実上不可能な情勢だ。
 年金記録の全件照合については、自公政権が10年かかると見積もっていたことに対し、野党時代の長妻氏は2年間での全件照合完了を強く要求した経緯がある。今回の方針転換には野党だけでなく民主党内からも批判が起きそうだ。

参考写真 ミスター年金こと長妻昭厚労相の実力もこの程度だったのか、と嘆かざるを得ません。そもそも民主党のマニフェストにも、「『消えた年金』『消された年金』問題への対応を『国家プロジェクト』と位置づけ、2年間、集中的に取り組む」と記載されているだけであって、2年間で完了するとはどこにも書いているわけではありません。
 すでに、11月18日の参議院厚生労働委員会での答弁では、「私もマニフェストを常に胸ポケットに入れておりますけれども、正確に言いますと、私どもが二年と申し上げておりますのは、二年間、記録問題への集中対応期間というふうに考えておりまして、集中的に二年の間に人、物、金を投下していくということでございます。そして一期四年の中で一定程度の年金の信頼を回復していく、こういうことをかねてより申し上げているところであります」と、年金の全件照合などは既に“反故”になっているのです。
 さらに、議事録を読み進めてみると、「二年の間に我々が集中的に人、物、金を投下して、四年以内に一定程度の信頼を回復するということの中は大きく四つのカテゴリーに分かれます。一つは実態解明。いまだに実態解明が不十分であるということで、無年金の方が百十八万人というデータもございますけれども、つぶさにそれを分析してみましたところ、ひょっとすると、その中で受給年齢に達しておられる方の五十万人が、実は無年金ではなくて、空期間を算入したりあるいは任意加入という手法を使えば、二十五年ルールにのっとって年金の受給権が発生するかもしれないということがわかりまして、その五十万人の方に通知を出して、最終的にサンプル調査で訪問をするということも考えているところでありまして、等々含めて、解明もいまだ残っているものもある」云々、これでは前政権時代の答弁とほとんど変わっていないではありませんか。
 長妻厚労相は、今年5月11日の衆議院予算委員会の質疑で、舛添要一前厚労相に対して、「これはちょっと耳を疑う答弁ですね。これは自民党の方、いいんですか、七年かかるか十五年かかるかわからないと。こんなもの、我々は、来年一月から社保庁がなくなって日本年金機構になるから、それまでやれとずっと言い続けて、ずっとやらない、やらない。今度は何ですか、七年か十五年かわからぬと。そんなもの全部一年二年でやってくださいよ、人、物、金を集中投下して。本当にいいんですか、自民党、そんな七年、十五年と言っていて。何で、今仕事が足りないと言っているときに、これを集中的にやってしまわないんですか。これはどう考えても私は理解できない」と言い放っています。この発言から、わずか半年あまり、立場が変わると発言がこれまで変わる人物も珍しいのではないでしょうか?