北関“海通”1年 本県観光効果に「?」 PR不足、茨城は活気
下野新聞(2009/12/20)
 北関東自動車道(北関)の栃木−茨城県間開通から1年。産業や観光の分野で積極活用の動きが出始める一方、実感できるメリットがなく、課題を挙げる業者もいる。
■観 光
参考写真 「一けた違うのではないか」。壬生町の清水英世町長は、10月に壬生パーキングエリア隣地に開設されたハイウエーオアシスの実績報告に驚いた。11月までの入場者数は19万人(推計)にも上る。
 農産物直売所の休日来店客も一般道の倍以上。「高速道路の集客力はすごい」と担当者は舌を巻く。
 夏には、本県民が格段に身近になった海を目指した。茨城県大洗町が8月に行った調査によると、海水浴場駐車場を利用した本県からの車は、前年比で2割増加した。
 しかし、効果が見えないとの声も多い。
 本県の観光団体は茨城県内でのPRを強化してきたが、日光市の観光関係者は「茨城方面からの客が増えたという感覚はない」。商業施設の担当者らは「不況による消費冷え込みの影響が何より大きい」と口をそろえており、商圏拡大効果を実感にしくいようだ。
 観光客などの利用を見込み、北関経由で宇都宮と水戸を結んで9月に運行開始した高速路線バス「北関東ライナー」。乗客数は「平日1便平均で1けた台」と伸び悩む。
 茨城県内2社と共同運行する関東自動車(宇都宮市)は「知名度不足」とする一方で「誘客PRは単独では限界。行政も積極的な情報発信が必要」と課題を挙げている。
■産 業
 日産自動車は先月、茨城港日立港区を使って、来年5月から栃木工場産の北米向けの一部を輸出すると表明した。北関が物流を変えた象徴的な出来事だ。
 下野新聞社の取材に、高岡洋海工場長は「北関東エリアの活性化を考えた判断。移動距離短縮によるCO2(二酸化炭素)削減や危険リスクの回避を考え、コストのバランスが取れたので決めた。ビジネスが成立するなら拡大したい」と、今後の可能性も示した。
 「日産の動きを起爆剤にしたい」。開通効果を最大限に生かそうと、茨城県側は積極的だ。常陽銀行(水戸市)が今月15日に宇都宮市内で開いた産業立地セミナー。参加した45社に対し、同県の担当者は、北関沿線の工業団地や茨城港の交通利便性をアピールした。
 常陽銀の宮永芳行専務は「北関東3県がこれからどうなるか楽しみでもあり、(栃木、群馬の成長が)水戸や日立近辺からみると脅威でもある」と複雑な思いをにじませた。

参考写真 12月20日、北関東自動車道の茨城〜栃木間が開通して1年を迎えました。
 ネクスコ東日本によると、両県をまたぐ真岡インターチェンジ(IC)〜桜川筑西IC(茨城県桜川市)間の毎月の1日当たり平均通行量は、目標の7000台を大きく上回り、8月には倍以上の1万4500台を記録しました。
 11月の平均通行量は見てみると、真岡・桜川西間が1万1317に達しており、栃木県側が3割以上の伸び、茨城県側が2割以上の伸びとなっています。さらに、常磐道とのジャンクションを越え、太平洋側のひたちなか方面の交通量も2割近く伸張しています。
 これは、北関東を環状に結ぶ大動脈の完成で、物流が活性しているとともに、ETC利用の休日割引制度(1000円高速)が大きく貢献している結果と分析されています。
 茨城県県内の観光施設への入り込み状況では、水戸市の偕楽園などが前年度8%増、笠間の県立陶芸美術館が21.6%増、国営ひたち海浜公園が30.3%増、那珂湊おさかな市場18.8%増などとなっています。海に面する大洗・ひたちなか地区の集客力の増加が目立っています。
参考写真
 産業面では、下野新聞が指摘するように日産栃木工場の輸出車積み出しを日立港で行うことなどが、大きな変化といえます。北関東道の全通を見越して、ひたちなか港には日立建機やコマツが建設機械の大規模工場を移転させるなど、物流面での優位性を活かした企業誘致策も進んでいます。
 来春3月11日開港予定の「茨城空港」の成否も、この北関東道を利用する栃木・群馬の旅行者を如何に獲得できるかにかかっていると言っても過言ではありません。
 北関東道は、群馬県高崎市と茨城県ひたちなか市を結ぶ総延長約159キロの高速道路。現在の整備率は全体の77%です。未開通の岩舟ジャンクション(JCT)〜太田桐生IC間約24キロのうち、岩舟JCT〜佐野田沼IC間は、来年(平成22年)のゴールデンウイーク前に開通予定です。全線開通は平成23年秋の見通しとなっています。

「北関」で交流加速 茨城−栃木開通1年
茨城新聞(2010/01/04)
目標を5割上回る通行量
 北関東自動車道(北関)の茨城−栃木両県間が開通して1年が経過した。東日本高速道路(ネクスコ東日本)によると、両県をまたぐ1日平均交通量は当初目標を5割上回る。茨城港を輸出入拠点として、物流網を見直す企業も。沿線の観光地はおおむね恩恵を受けるなど、北関東3県の交流が加速している。
■笑顔の観光地
 「開通後、売り上げが3割近く伸びた」。正月用の買い物客でにぎわう那珂湊おさかな市場(ひたちなか市)。カクダイ水産の桜井貞伸専務は笑顔を見せる。
 不況の影響で客単価が下がる中「高速道割引もあって北関効果は大きい」(同専務)。
 県観光物産課のまとめ(4〜11月)によると、同市場の観光客数は前年同期から16・8%増えた。
 同様に、国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)は25・9%、陶芸美術館(笠間市)は16・4%、マリンタワー(大洗町)は13・1%、アクアワールド大洗水族館(同)は1・6%と、沿線施設の観光客は軒並み増加。
 大洗サンビーチの大洗町営駐車場の車両ナンバー調査(昨夏3日間)では、前年までトップだった茨城が埼玉に代わり、5位の群馬が4位に上がった。
■割引が後押し
 群馬県高崎市とひたちなか市を結ぶ北関は総延長約150キロ。2008年12月20日に茨城−栃木間が開通し、整備率は77%となった。
 ネクスコ東日本によると、両県をまたぐ真岡インターチェンジ(IC)−桜川筑西IC間の昨年11月までの1日平均交通量は1万400台(速報値)。同社が当初想定した7千台を49%上回った。
 笠間西IC−友部IC間は、前年比で2・5倍。栃木側も増えており、佐野プレミアム・アウトレット(佐野市)などに向かう客も目立っている。
 長引く不況だが「ETC(自動料金収受システム)利用の休日割引制度が後押しした」(同社)こともあり、利用状況は堅調だ。
 ただ、北関経由で高速路線バスを運営するバス会社にとって割引は「逆風」。乗客数が伸び悩む中、PRを強化する。
■変わる物流網
 開通効果は物流にも表れている。
 日産自動車は栃木工場(栃木県上三川町)の北米向け一部生産品を茨城港日立港区から輸出することにした。従来利用していた横浜港に比べ、移動距離や時間が短縮されるなど、二酸化炭素(CO2)排出量削減やコスト面から判断した。
 常陽銀行(水戸市)が先月、宇都宮市で開いた産業立地セミナーには、栃木の企業45社が参加。県の担当者が沿線の工業団地や茨城港の利便性を説明すると、参加者は熱心に耳を傾けた。同行の宮永芳行専務は「北関開通で茨城と栃木が一体的地域となり、経済活動や観光の交流が進んでいる」と話す。
 宇都宮市内の運送業者は「茨城港を使った仕事ができれば、東京や横浜に行くよりも効率的」と話し、物流網の見直しを示唆している。