2月25日、県の平成21年度包括外部監査の結果がまとまり、知事と議会に報告されました。今回のテーマは「県立学校に係る財務事務及び事務の執行について」です。
 茨城県には、109の全日制高校(内一校は中等教育学校:中高一貫教育校)、14の定時制高校(併置校11、独立校3)、特別支援学校20校、合計133校の県立学校があります。こうした県立学校の学校別コスト計算を公表するなど、大変意欲的な監査報告となりました。
 県立高校の学校別コスト計算に必要性について、外部監査人は以下の用のその意義を強調しています。
学校別コスト計算の重要性
 どのような組織であれ、それを運営管理するにはコストが掛かる。そしてそのコストをどのように管理し、無駄を省いて、効率よく低減させていくかが、組織存続のカギとなる。これは民間の組織であれ、公の組織であれ何ら変わることはない。
 県は第5次行財政改革大綱の県庁改革の項で「コスト意識の徹底」を謳っているのは、まさにこの点を指摘し改革を促していると理解する必要がある。
 民間企業であれば、県下の営業所や支店ごとの業績管理(部門別管理という)は当然のことであり、それぞれのコスト計算は不可欠である。県立学校でいえば、全体の予算管理だけでは不十分であり、学校ごとのコスト計算は次年度以降の予算策定(コスト管理)の上で欠くことができないものである。
 しかし、これまで県では学校別コスト計算書は作成されなかった。作成できる資料はありながら、作成する発想が存在しなかったと言える。これを機に、ぜひ第5次行財政改革大綱で言う「コスト意識の徹底」を図っていただきたい。このような県財政が逼迫し、教育予算も年々削減される中、各学校のコストを下げる努力は不可欠である。
参考写真
 こうした学校別コスト計算もとに、外部監査人は、いずれも「人にかかるコスト」が全体の9割近くを占めて硬直化が進行しているとして、教員の給与制度にメスを入れる必要性を強く指摘しています。
 また、特別支援学校については、「人にかかるコスト」が県立高校よりも高く約93%前後で推移しており、その人件費のしわ寄せが維持管理費の圧縮に来ているとしています。さらに、生徒1人当たりの行政コストが年500万円前後で推移しており、県として一定の見解をまとめるべきと強調しています。
特別支援学校の学校別コスト分析による意見
1.人件費による財政の硬直化は、県立高校よりも進行している。県立高校と同じように、改革なしでこのまま過ぎれば、やがて破綻するか、あるいはサービスの大幅な低下を余儀なくされるのではないだろうか。
今後、どうするのか、早急な対策(中・長期)を検討する必要がある。
2.生徒一人当たりコスト(県費)約500万円について、どのように解釈するのか、難しい課題である。予想されるいくつかの意見を挙げてみると、*弱者救済は社会全体の義務であり、コスト計算になじまない(つまり、いくらかかっても仕方ない)、*そうは言っても、財源には限りがあるので、何らかの歯止めは必要である。*金額の大きさの問題ではなく、提供しているサービスの質の問題であり、サービスに不足はないか、逆に行き過ぎたサービスの提供はないか、その内容を精査して、必要と判断される基準を明確にすべきである。
この点について、県として、一定の見解をまとめるべき時期にきていると思料する。
 学校教育と効率性の分析は、今まで余り行われてきませんでした。特に、特別支援学校のコスト分析は、ある意味でタブー視されてきた感もあります。外部監査人は、特別支援学校の「生徒一人当たりのコスト」の学校間の格差が広がり、結城養護学校の300万台から、盲学校の1400万円台まで4倍以上の開きがあると分析。その理由は生徒数の多寡であるとし、学校の統廃合を積極的に進めるべきとしています。特別支援学校に通う生徒の特徴(障がいの内容)を、どの辺まで汲み取った分析なのか、大いに疑問は残りますが、こうした議論を県民に投げかけた意義は大きいと評価します。