参考写真 井手よしひろ県議は、6月10日開かれた県議会総務企画委員会で、財政課長に茨城県における「日本版レベニュー債」の導入検討の状況を質しました。
 そもそも、レベニュー債とは、レベニューボンド(以下、RBと記載します)ともいわれ、事業目的別歳入債券と訳されます。地方自治体において、事業の目的別に発行される債券を意味します。具体的には、水道事業における浄水場、下水道事業における下水処理場、市立病院や市民ホールなど公共施設と資金が直接的に対応する。浄水場債券、下水処理場債券、市立病院債券や市民ホール債券というような事例が想定されます。
 このRBはアメリカの自治体では全体の6割程度を占めていると言われていますが、現在、日本の自治体では発行されていません。
 通常発行されている地方債との違いは、償還の原資が一般的な税金によるものか、発行の目的の事業からあがる収益によるものかの違いです。
 水道事業のために浄水場を計画し、その建設コストが50億円かかると仮定すると、従来の県債は50億円の県債を発行し、水道利用者からの収入や自治体の一般会計からの繰入金をもとに、金利分をプラスして一定期間で返済(償還)していくことになります。一方、RBは水道利用者からの収益の中から、金利と元金を返済する仕組みです。
 したがってRBを発行しようとすると、情報開示の重要性が増し、経営の実態を広く投資家に開示しなくてはならなくなります。償還が事業収益から行われるので、公益性とのバランスを保ちつつ、収益をどれだけ上げられるかが、投資家の関心事となり、行政を監視する意識(ガバナンス)の向上も期待できます。
 言葉を換えれば、オーナーシップの向上が見込まれます。
 反対に、収益が見込めない、いわゆる悪しきハコモノ行政から脱却することができます。RBによって財政規律が、確実に向上します。
 投資家の立場から見てみると、RBは長期に渡って安定的に収益を享受できる商品です。公共施設は一定の需要があり、ある意味で独占的な立場も保証されます。RBは信用度の高い金融商品の一つになります。
 このRBに性格が似ているもに、市場公募型地方債がありまする。この債権は、例えば空港整備のために100億円の県債を発行しますという、目的を明確にして地方債を発行することはRBと同様ですが、RBは資金の使い道だけでなく、その返済財源も特定さることが大きな特徴です。
 では、こうしたRBがなぜ今まで日本で発行されなかったか、その理由をまとめておきたいと思います。
 その第一は、地方自治体が全く単独で行う大規模公共事業は、皆無に等しいと言うことです。先ほどの事例で言えば、浄水場でも、下水処理場でも地方自治体が整備しようとすると、国が3分の1から2分の1の補助金が支出されます。さらに、地方自治体の負担分に関しても、その一定割合を地方交付税で補填される場合があります。したがって、実際の県の負担分が非常に見えにくくなっています。
 第二に、こうした個別の事業に関しても、採算性が悪化し償還資金がショートする事態になっても、上部団体である地方自治体が補填する仕組みになっています。赤字に転落しても、結果的に一般会計からの税金が投入され、子会社の事業について親会社が全面的に保証しているような格好になっています。このように自治体と公営事業が財政的に未分化の状態では、RBの信用力が読み取れないことになります。
 こうした地方自治体の構造的な欠陥を是正する上でも、RBの積極的な活用を検討すべきだち、井手県議は委員会で主張しました。
 6月9日付けのロイター通信の記事によると、現在、RBの発行を計画している青森県は、青森県道路公社が管理するみちのく有料道路事業にこの債券を発行しようとしています。
 みちのく有料道路は、今年11月に30年間の料金徴収期間が終了します。しかし、通行量が当初計画を下回ったことで、金融機関などへの債務残高は約130億円に達しています。青森県では料金徴収期間を19年間延長すると同時にRBの発行によって債務の借り換えを行うとしています。
 RBの発行計画は青森県有料道路経営改革推進会議が青森県に対して行った提言に沿って進められています。青森県が主体となって特別目的会社(SPC)を設立し、そのSPCが発行体となり、投資家に向けてRBを発行します。
 このRBの幹事社として、青森県はゴールドマン・サックス証券を選定しました。発行額はまだ明確になっていません。RBの期間は10年以上の固定金利型の長期債を想定しています。早ければ11月ごろまでに、計画を具体化させたいとしています。
「事業目的別歳入債券の有効活用に関する研究?」(国土交通省・国土交通政策研究 第73号)