参考写真 6月14日、県議会出資団体等調査特別委員会が開かれ、上月良祐副知事は、債務超過に陥った茨城県住宅供給公社を清算するために、「第三セクター等改革推進債」(三セク債)を約380億円発行する方向性を示しました。
 その清算の手法については、破産を含めて検討していることを明らかにしました。もし、破産処理されると、全国に51ある地方住宅供給公社では初めての事例となります。
 茨城県住宅供給公社は、造成しても売れ残っている土地の値下がりなどから、平成22年3月末時点で約395億円の債務超過に陥っています。上月副知事は「これほどの債務超過の中で、仮に法的手続きとなれば破産という道を選ばざるを得ないのではないか」と発言しました。
 県住宅供給公社は、民間の金融機関や県、さらに国の住宅金融支援機構などからの496億円を超える借入金を抱えています。破産手続きに入った場合、民間金融機関からの借入金111億円については、県が損失補償契約を交わしており、県が公社に代わって返済の義務を負うことになります。県の損失補償がない住宅金融支援機構や国からの借入金計106億円の取り扱いについては、今後の検討課題となります。
 すでに、県は住宅供給公社について、2006年度から10年間をかけて、毎年46億円の補助金支出で債務超過を解消し、保有土地の売却なども完了させ、解散させる方針でした。しかし、地価下落が続き損失が拡大する可能性が高くなってきました。国が新たに発行を認めた三セク債を活用して、清算するスキムを検討しています。
 公社の借入額496億円のうち県が損失補償している民間金融機関からの借入金111億円、国からの借入金1億円、県の短期貸付金268億円の計380億円を、三セク債の発行して10年で償還すると、県民負担額は401億円、15年で償還する場合は411億円になると試算されています。
 橋本知事は今議会の一般質問で、第3回定例会(9月議会)に三セク債の起債許可申請や三セク債による歳入などの関連議案を提出すると答弁しています。議決を受け、国が三セク債の発行を認めれば、速やかに法的な解散の手続きに着手することになります。
 一方、公社解散へ向けた保有地の処分は一向に進んでおらず、3月末時点で既に造成が終わっている「水戸ニュータウン」などの分譲団地118区画の他、造成工事が始まっていない「北条団地」など6つの大規模団地計215.7ヘクタールが売れ残っているいます。
 また、現在、住宅供給公社の本社機能がある「大町ビル」の売却先を公募していますが、一回目の公募期間には買い手が現れず、価格を下げて6月4日から再公募を行っています。
 さらに、特優賃(特定優良賃貸住宅事業)と呼ばれる民間賃貸アパートの清算問題も難航しています。特優賃は、民間事業者が建築した賃貸アパートに関して、住宅金融支援機構からの借入金に公社が連帯債務者となっています。この特優賃は、入居当初は公的な家賃補助を受けかれるため人気がありましたが、入居後10年で補助がなくなってしまい、結果的に割高な家賃となってしまいます。そのために、入居率が下がり、建設資金の返済が滞ることになります。すでに、県住宅供給公社が連帯債務を有する16のビルの中で、11の特優賃の返済を立替払いしています。また、立替払いをしていない5つのビルに関しても、県住宅供給公社解散された場合、建て主は住宅金融支援機構から一括返済を迫られます。県は、他の金融機関への借り換えで連帯債務を外す取り組みのほか、公社が解散してもオーナーへの一括返済請求を行わないことや金利の引き下げ、償還期間の延長などを、住宅金融支援機構に要請していますが、解決のめどは立っていません。
 いずれにせよ、一刻も早い清算完了を目指して、一層の取り組み強化が求められています。