8月6日、井手よしひろ県議は兵庫県淡路島を訪れ、潮の流れを利用した潮流発電を研究しているベンチャー企業「ノヴァエネルギー」社の鈴木清美社長から直接説明を聞くと供に、実証実験用発電機を実地調査しました。
 ノヴァエネルギー社は兵庫県三木市の本社を置き、現在、淡路島の岩屋港沖の明石海峡で、潮流による発電実験を断続的に行っています。
 海中に沈めた巨大なタービンを潮流によって回転させ、発電機を回す仕組みです。潮流を受けて回転するタービンは長さ6メートル、直径3メートル。螺旋状のプロペラ3枚を備え、海草やゴミなどの漂流物が絡まないよう流線型をした形状。その形から「マグロ形タービン」と名付けられています。このタービンは、船の舵のような清流装置で船の舷側に据え付けられています。実証実験は、無人実験船の両舷にタービン2基が据え付けられ、特殊なユニバーサルジョイントで回転が1台10キロワット発電装置に接続されています。
参考写真 明石海峡は潮の流れが速く、実験が行われている岩屋港沖50メートルの地点でも平均3ノットの潮流が見込め、20キロワットの発電が可能と鈴木社長は説明してくれました。
 環境省の環境省の地球温暖化対策技術開発の事業にも選ばれ、補助金を受けた実証実験も今後計画されています。
 日本での取り組みに先行して、2008年からは韓国海洋大学(釜山)の都徳煕(ト・トクヒ)教授と共同研究もスタートしています。2012年に韓国で開かれる「麗水(ヨス)万博」(テーマは「生きている海、息づく海岸」)に向けて、大規模な実証プラントを整備することも検討されています。
参考写真 ノヴァエネルギー社の鈴木清美社長は、茨城県の北茨城市の出身。もともと漁業を営む家庭に育った正真正銘の茨城出身者です。1952年生まれの57歳。徳丸海運で冷凍船の船長を務め、世界中の海を知り尽くした海の男。46歳で同社を退職し、2001年、ノヴァ研究所を設立。2007年にノヴァエネルギー社を創設しました。以下、鈴木社長と井手県議との一問一答です。
−−なぜ、安定した船長という職を捨てて、潮流発電の開発という前人未踏の分野に挑戦されたのですか
 大型船の船長をして60カ国以上の国を回りました。ペルシャ湾などで数十万トンの超大型タンカーと頻繁にすれ違います。また、様々な紛争が起こる地域に立ち寄ることもありました。その争いの原因は、ほとんどが食料とエネルギー。日本のような外国からの石油によって成り立っている国が、いかに脆弱な国なのか、実感する機会がたくさんありました。
反面、船を操っていると潮流の力の大きさを思い知らされます。地球が自転している限り、無尽蔵のこの潮流のエネルギーを利用して、発電が出来ればと考えたのです。
−−太陽光や風力など、様々な自然エネルギーを活用した発電が、現在日本では行われています。この潮流発電にはどんなメリットがありますか
 風力や太陽光による発電は天候に左右されますが、地球が自転している限り、潮の流れは止まりませんから、安定的に発電ができます。
 現在行っている実験では、直径3メートルのプロペラを使い、3ノットの潮流で10キロワットの発電を目指したいと思っています。もし、東シナ海に長さ25メートル、回転直径16メートルのプロペラを4つ付けたブイを800基設置すれば、黒潮の流れにより、160万キロワットの発電が可能と試算しています。
 柏崎の原子力発電所の7号機の発電能力が135万キロワット。茨城のひたちなか火力発電所は100万キロワットです。原子力発電所や最新鋭の火力発電所よりも大規模で地球に優しい発電所ができあがります。
−−韓国での取り組みはお聞きしましたが、この淡路の地域ではどのような取り組みを考えていますか?
 明石海峡大橋の橋脚部にマグロを取り付けて発電。その電力で、橋のライトアップを実現したい。明石海峡大橋には光の三原色のイルミネーションランプが1084個取り付けられており、季節や日時に応じて彩りを変えています。この電力を潮流発電でまかなえば、明石海峡大橋は、日本のエコ事業の象徴になると確信しています。
−−現在の一番の課題はなんですか?
 最大の課題は、なんと言っても資金調達です。現時点では、潮流発電で収入を得るっことはまったく出来ません。会社のスタッフも、ほとんどが私の夢に共鳴してくれたボランティアといっても過言ではありません。
現在の淡路島での「淡路島まぐろプロジェクト」が、環境省による地球温暖化対策技術開発の委託事業に選ばれ、助成を決定していただきました。しかし、そのれが実行されるのは研究成果が上がってからになってしまいます。
実証実験を繰り返している段階ですが、この事業の将来性を評価していただき、投資をしてくれるベンチャーキャピタルを是非、探したいと思います。
−−最後に潮流発電への思いを一言
 地球が自転している限り、潮の流れも止まらない。これほど安定したエネルギーはない。潮流発電をできるだけ早く実用化したいと思います。