農林水産省が、9月7日発表した「農林業センサス」速報値は、国内における農業離れの現状を改めて浮き彫りにしています。
 農林業センサスは5年に一度、農林業を営むすべての農家、林家、法人を対象に調べているもので、農林行政を企画・推進するための基礎資料に位置付けられています。これによると、5年前の2005年に335万人を数えた農業就業人口は今年2月では260万人と、75万人も減少。減少率は22.4%で過去最大でした。同じ値を2000年と05年とで比べると13.9%、1995年と00年では6%の減。回を追うごとに減り幅が拡大しているのは一目瞭然です。一方で、農業従事者の平均年齢はジワジワと上昇を続け、今回の調査では65.8歳に。10年間で4.7歳も上がった計算になります。
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 しかしその半面、今回の調査では、新たな兆しも見えてきています。耕地面積5ヘクタール未満の農業経営体が減る一方で、5ヘクタール以上では規模が大きくなるにつれ増加率が高まり、経営体の規模拡大が進んでいます。また、農産物の加工に取り組む経営体が5年前に比べて4割強も増えていることは、消費者の意向を捉え、付加価値のある農産物を売る「攻めの農業」が具体化してきた表れと見る必要があります。
 こうした攻めの農業の流れが強まれば、地域活性化にも必ず連動していくはずです。もう一つ注目したいのは耕作放棄地の動きです。前回に比べて放棄地が1万ヘクタール増加したのは事実ですが、この5年間でその増加幅には大きくブレーキがかかりました。賃借や売買を通して新たな担い手が農地を受け継ぎ、荒れ地の拡大を抑えているようです。農業の多面的機能を維持する観点から、やる気のある小規模兼業農家を守る政策は必要です。その意味で、今年度にモデル事業として始まったコメの戸別所得補償制度の定額部分は岩盤政策として理解できます。
 しかし、問題なのは上乗せ部分を全国一律価格とした点です。見直しを強く求めたいと思います。来年度から導入予定という畑作の戸別所得補償も制度設計は不十分です。しっかりと現場の声を聞くべきです。農林水産業の多くは自然を相手にしています。だから地域が異なれば、置かれている状況は全く違うはずです。国内農業の新たな未来を開くためには、今こそ地域の実情を踏まえたブレない農政が必要です。
「2010年世界農林業センサス結果の概要(暫定値)」(平成22年2月1日現在)
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統計表(EXCEL)(エクセル:282KB)
結果概要HTML