現場を知らぬ民主党政権の医療行政に混乱広がるおそれ
参考写真 10月13日付のブログ「HTLV−1白血病ウイルス対策が前進」で紹介したように、9月8日に患者会の代表が菅総理に面談してから特命チームが作られ、約1カ月という短期間で、HTLV−1 対策が大きく進みました。長年の患者家族会の地道な活動、その活動を陰に陽に支えた公明党の戦い、そして浅野前宮城県知事の存在も大きかったと思われます。
 しかし、現場の実情を知らない菅総理が進めた政策内容のため各自治体が困惑していることも事実です。
 各自治体に事前準備の通達もなく、患者の相談体制や医師や看護師の研修体制もない状態で、検査だけ始めてください。しかも、財源は今年度までの妊婦健康診査臨時特例交付金を充てるという急場ごしらえ。現在14回行われている妊婦健康診査の財源である妊婦健康診査臨時特例交付金は、来年の3月で期限切れとなります。
 各自治体では、せっかく検査体制を整備しても、すぐに国からの交付金が来なくなるのではないかと、疑心暗鬼が広がっています。
 10月6日付けで厚労省から各自治体にHTLV−1抗体検査の実施と10月6日分から公費負担を適用にする旨の通知が出されました。この通知の内容は、過去の通達から言って異例のもので、通常は来年1月1日からや4月1日から適用になりますから、準備をしてください。となるところが、いきなり今日から始めてください。との通知です。
 先進的な施策を積み重ねてきた長崎のような自治体は、お金を負担するのが県から国に代わるだけなので混乱は少ないはずですが、茨城県のように、今まで十分な準備を行ってこなかった自治体は、大いに困惑しています。
 相談体制も医師や看護師、保健従事者の研修体制も整っていない中で、いきなり今日から検査をやってくださいは、あまりにも乱暴すぎる決定のような気もします。
 検査を受けた妊婦さんが、医師から検査結果の結果“陽性”でしたといきなり言われ、「あなたは白血病になる可能性があります。現在のところ、治療方法はありません。赤ちゃんには母乳を与えないでください」と、告げられたら、それこそパニックに陥るでしょう。
 20年前に先行して抗体検査を始めた長崎県では、医師会などと準備をして抗体検査を始めたにもかかわらず、そういった例で妊婦が精神的に不安定になり流産の可能性が高まったり、感染経路をめぐって家庭不和になり離婚をしてしまったなどの事例が発生したそうです。
 また、陽性だった妊婦さんに看護師がみんなの前で「この人はATLなんだから、乳首の手入れなんかしなくてもいいのよ」と言われつらい思いをした妊婦さんがいたなど様々な事例が報告されています。
 現在、長崎県では安定期に入って早産しても大丈夫な35週に検査結果を伝えたり、検査結果をまずは本人だけに伝えた後、同意があれば家族にも説明するなど様々な配慮を行っているとことです。
 大至急、一日も早い相談体制や研修体制を整える必要があります。週明けにも、茨城県の検査態勢について、実態調査を行う予定です。