参考写真 9月に行われた民主党の代表選挙。その中で、菅直人総理は、国家公務員の給与削減を主張し、人事院勧告以上の給与引き下げを公約しました。
 しかし、11月1日政府は、今年度の国家公務員の給与について、人事院の勧告通り前年度比で9万4000円(1.5%)下げることを決定しました。「人事院勧告を超えた削減」は早くも掛け声倒れだったことが証明されました。「菅総理はわずか2カ月足らずで公約破り」、こうマスコミが論評するのは当然の結果です。
 人事院勧告の算定基準は、民間の給与を参考にすることになっていますが、従業員50人以上の企業が対象です。そもそも、それが民間給与の実態を示しているとは言い難い現状があります。ちなみに、総務省がとりまとめている民間給与実態調査では、平均給与は406万円で、対前年比5.5%減となっています。人事院勧告の約4倍の減少幅となっています。
 公約違反となった理由を政府は、公務員がスト権などの労働基本権を制約され、その代わりにある人事院勧告を無視するのは難しいなどとしています。
 こんなことは、日本人の常識であり、菅総理も「壁の高さ」を分かって公約したはずです。
 結局、「準備も覚悟もないまま公約に掲げ」(11月3日付「朝日新聞」)た首相の認識が甘かったと言わざるを得ません。加えて、「公務員労組が反発することへの警戒などから与党内には慎重論が強かった」(11月3日付「毎日新聞」)と、支持団体である公務員の労働組合への配慮が働いたとも指摘されています。
 しかも、民主党は昨年の衆院選マニフェストで「国家公務員の総人件費2割削減」を看板に掲げ、1.1兆円の財源を生み出すとしていました。今回の勧告を完全実施しても、歳出の削減効果は790億円程度と見られ、マニフェスト実行の意志は国民に伝わってきません。
 国民に約束したはずの、子ども手当や高速道路料金の無料化といった目玉政策の迷走に加え、公務員制度改革まで停滞。これでは、菅政権の掲げる「有言実行」の看板は「有言不実行」の間違いであったと言われても仕方ありません。
 一方、茨城県をはじめとする地方自治体は、この国の人事院勧告や地元民間給与の水準を元に職員の給与を決定します。今年度の茨城県人事委員会勧告は、1.56%の減額となっています。国の減額幅を超えているとはいえ、県民からは高すぎるのではないかとの声が寄せられています。
 国、地方を問わず「公務員改革」を喫緊の課題です。